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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第二章
27/44

1・集落の雨宿り

今回より、過去編として第二章スタートです♪

 雨が降っていた。

 というより、急に降り始めた。

 作業していた集落の人々はみんなびしょ濡れである。


「うわああ! 撤収だ撤収!」


 集落に近い者は作業場から各々一番近くの家に、集落から離れて畑を挟んで向かいにある建物の近くにいる者はそこへ雪崩れ込む。


 ちなみにどの建物も他人の家だが、この辺りは一週間おき位に二~三時間程度の突発的な雨に見舞われる地域で、その度にこうやって一時凌ぎに避難する。

 慣れたもので、「早く早く!」と家人が戸を開け雪崩れ込むようにやってくる人々を迎え入れる。

 集落にとっては日常的な光景である。


「おーい! そこのあんちゃん! 旅人だか冒険者だか知らねぇが早くこっち来い!」


 と、一人の男が道脇に立つ大木で雨宿りしていた青年を見つけ手招きする。


「いや、ですが……」

「かまわねぇから、来なって!」


 見兼ねて、青年の手を引っ張り建物へ誘導する。


「ひゃー。毎度の事ながらここに家が建ってくれて助かるってもんだ」

「ミクリアさん、すまねぇな」

「ふふ。ささ、着替えて楽にしていて下さい。何もない家ですが、旅の方も遠慮なく寛いで行って下さいね」

「そういうこった。ここは持ちつ持たれつの集落だからな。大体一週間おきにこうやって短時間降るんだが、あんな木の下じゃ雨宿りにもならねぇよ」


 と、他人の家だが我が家の様に振舞う集落の人々だ。


「では、お言葉に甘えて」

「オレはサバトって言うだ。あんたは?」

「リトと申します」

「おう。リト、お前さん旅人かい。どこから来たんだ?」

「東の方からですよ。少し長い休暇を頂いたので、フラフラとして遊び惚けている所です」

「リファルト王国から歩いてか? 随分かかったろう?」

「兄さん! こっち来て座んなよ」

「そうだそうだ。あっちで座って旅の話でも聞かせてくれよ」


 と、滅多に聞かない外の話が珍しいのか、みんな目をキラキラさせて待ち構えている。

 リト……リティウスは、気さくな集落の男衆に混ざり、暫しの間談笑していた。


「では、皆さん元はこちらの方ではないのですか」

「おう。集落の始まりは三十年くらい前だったか」

「そうそう。東西の国を繋げるただの一本道だったんだよ。ここから馬でも両隣街まで二週間はかかるんだ。結構距離があるだろう? 冒険者を引退した奴等が、この辺りを通るお前さんみたいな人の休憩所として周辺を開いたのがきっかけだったんだ」

「では、歴史的にも若い土地なのですね」

「だなぁ。魔法やら駆使して整地してな。雨もこうやって定期的に降るもんだから水不足の心配もねぇ。思いの外土地が良かったのか、気候もいいし作物も育つ。だんだんと人が集まってきてな。小さいながらも生活の場になったんだよ」

「凄いですねぇ」


 リティウスは感心しながら聞いていた。

 この辺りには興味はあった。

 なかなか時間が取れずほぼ政務を押し付ける形で休暇と称してやって来たが、笑顔が絶えない人達が印象的で小さいながらも幸せな土地なのだなと思う。


(この小規模な集落だからこそ、でしょうね)

 

 これ以上の発展は望まないが、これ以下の生活もあり得ないといった感じだ。


「しかしなぁ……。未だに困っている事があるんだよなぁ」

「あぁ、それなぁ」

「皆さん楽しそうですが、困った事があるのです?」

「丁度ど真ん中に集落が出来ちまったもんだから、両隣の領主様がここの利権を平等にして下さってたんだがなぁ……」


 丁度中間で国境として分け、互いに管理をしてきた。

 してきたと言っても、ただの道。

 管理というよりは中間から土地の所有権がそれぞれあるだけの話で、実際の入国管理は領門で行われた。


 その中間地点に休憩所を作ると少し開拓すると報告は受けていた。

 集落に発展するとは三者とも思ってはいなかったのだが、念のために発展した場合の利権についても契約を交わしていた。


 税は、東西領地(以下、領)の平均の半分ずつを領に治める事。

 発展した場合においても、領は当地を中立区とし徴収方法の変更をしない事。

 当地は、中立区として負担にならない程度に領の求めに応じる事。

 また、当地の求めにも応じる事。

 集落以上に発展させない事。


 等、大雑把に言えばこの様な感じとなっている。


 そして、小規模ながらも豊かな土地、安定した作物栽培により生まれる安定した税の納付。

 領にとっては、思わぬ臨時収入となり、食料事情も改善された。


 十年前まではそれで良かったのだが。


「ところが十年程前から西の領主様が、な……」

「おいおい。それ以上は旅の人には関係ないだろ」


 そこへタイミング良く、ミクリアがワゴンにスープやこの土地で取れたであろう果物やパンといった軽食を乗せ戻って来た。

 ミクリアのエプロンの腰ひもを握り、後ろに隠れる様についてきた少女。


「おっ。嬢ちゃん、元気にしているかい。たまには家に来てガキと遊んでやってくれよ。かーちゃんもどうしてるか心配してるんだぞ」

「おじちゃんっ」


 と、駆け寄る小さな女の子がそこにいた。

第一章・8話、修正&追加編集しました。

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