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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第一章
26/44

26・孤島の夜

 小屋を出て平屋へ戻る帰り道。

 転移でも良いのだが、のんびり月を眺めながら歩くのも一興だ。


 月が煌々と光り、夜道を照らす。

 綿帽子の様なふわふわとした、まだ実態の持たない色とりどりの精霊魂がそこかしこを漂っている。

 太陽の強い光に弱いため、日中は森の陰に潜み太陽が隠れてからその姿を現わし、夜の孤島を彩っている。

 自然が多く人気も少ない孤島だからこその光景だ。


 基本、カーリィが彼等を守っているためいつぞやの様な鋭い魔気で吹き飛ぶことはないが、余りにも近すぎるためにまだ自我のない精霊魂を消し飛ばしてしまわない様、魔気を抑えてその光景を楽しみながらゆっくりと夜道を歩く。


「おや? あれは?」


 バロフが不意に左側に聳え立つ木々の隙間を指差し、ゆっくりと近づいていく。

 小さな球体がぼんやりと淡く光っている。


 闇の精霊なのだろう。

 闇色と灰色の光を交互に光らせながら他の精霊魂動揺にふわふわと漂っているが、ただ確実にゆっくりと平屋の方へと向かっている様だ。


「実態を持ち掛けているのでしょうな」

「その様ですね。ただ平屋に向かっているようですが」


 ボーデンの呟きにリティウスも呟きで返しつつ、そっと手に取る。

 反発する様子も無く触れた個所から微かにだが確かに覚えのある魔気を感じ、じっと眺める。


「これは……」


 リティウスに続き、ドルトもためらいも無く精霊魂に触れ同じものを感じ取った。

 順番にそれぞれが手に触れ、皆が顔を見合わせた。


「同じ気配がするわね~ぇ」


 カーリィの言葉に、魔力が極端に少ないためそれを感じ取ることが出来ないミクリア以外の全員が頷く。

 リティウスは、


「私が預かっておきましょう」


 と、袋に結界を施し収めた。

 

「ミクリア、もしかすると少し進捗するもしれませんよ」

「進捗、でございますか?」

「ええ。ファルルの付けているアレです」

「!! 本当でございますか!?」

「期待させて駄目でしたでは申し訳ないですから、もしかしたら程度に内にしまっておいて下さい」

「えぇ、えぇ! ですが、例え駄目だったとしても……。少ないとはいえようやく現れた希望でございます……」


 思わず涙ぐむミクリアの頭にそっと手を置き、


「私達にとってもようやく現れた手掛かりかもしれませんからね。根本でなくとも何かの手がかりにはなるでしょう。無駄にならない様にしますよ」


 と、微笑んだ。


「しかし本当に気配が似ておるのぉ。他の闇精霊では感じなかったものだの」

「そうだなー。この様子からすると後一週間程もすれば実態を持つようになるだろうし。なんにしても話はその後だな。ミクリアもお前達も外では言わない様に気を付けろよ?」

「もちろんです」


 ミクリア始め、側近達も当然だとばかりに頷いた。


 平屋に入ってすぐのエントランス。

 その脇に置かれたシンプルだが上等な木材(孤島産)を使用した上品な長卓を挟む様に半円のソファーが二つ。

 肌触りの良い生地に、程よくふんわり感のある座り心地で寛げる。


 背もたれから、クリーム色の緩やかなカーブを描いた長い髪が、ほんの少し揺れている頭の動きに合わせてゆったりと動いている。


「ファルル殿? ここで何を……」


 バロフが気付いて、声を掛けようとして口を閉ざした。


 ファルルの隣や背もたれの上で寛いだり寝ていたりしていた精霊達が顔を上げて、シイーーッと口元に人差し指を当てる仕草をしている。

 精霊の一人が、起きない様に軽く睡眠魔法を掛けたのを見た他の精霊達が、次々に姿を現わしファルルの周りをくるくる飛びながら遊び始めた。


<ファルル、みんなの帰り待ってたの!>

<ファルル、待ってる内に寝ちゃったの!>

<お舟こいでスヤスヤなの~!>

<<<おっふねっおっふねっ♪>>>

<<<す~やすやっ♪>>>

<ふわふわの髪もゆ~らゆらっ♪>

<<<ゆ~らゆらっ♪>>>


 適当な言葉に適当なリズムにのせて適当に歌い適当に合わせる。

 精霊達は、基本こんな感じで適当だ。

 輪になって肩を組んで体を左右に揺らしながら、ついでにダンスも披露する。

 ちなみに歌とダンスは、ミスマッチだ。

 適当なので仕方ない。


<<<僕達>>>

<<<あたし達>>>

<<<ファルル見てたよ~っ!>>>

<<<きゃっきゃっ>>>


「ファルルに心配かけたかの?」

「その様ですね。皆さん、ご苦労様でした」


<<<どういたしましてなの~!>>>


 孤島のここにいる限り危険はないのだが。

 精霊達もファルル大好きなので、何も無くても苦とも思わない。


「風邪を引いたらいけませんから、部屋へ連れて行きましょう」


 ベッドに寝かせて、暫くその寝顔を眺めつつ、


「やっぱり同じね~ぇ」


 カーリィがつんつんと腕輪をつつきながら、んん~と唸る。


「カーリィ何やってんだよ?」

「んんんん~……。ね~ぇ? リト? さっきの精霊魂出してくれな~い?」


 リトから受け取り、それと腕輪を慎重に近付ける。

 すると、腕輪に溜まっていた魔力を吸いほんの少し大きくなった。


<この子、なんだかイヤな感じ~>

<感じ~>

<でもなんかヘン~?>


 精霊達は団子になる様に抱き合って、ブルブルっと体を震わせた。


<あのねー? ネボスケ闇精に似ているのー>

<ボクよりこれくらい偉い人ー!>


 小さい手を上に目いっぱい上げる動作をするが、どれくらい偉い人なのか分からない。

 精霊は基本大袈裟に物を言う。


<偉い人だけど起きないの~!>

<一月すやすや、一日起きてればスゴイ人~>

<一年ぐ~すか、十二日起きてればスゴイ人~>


「それはある意味、凄いヤツだなー……」

「闇精霊は基本寝るのが趣味ですからな。にしてもそんなに寝ている者がいるとは驚きましたな」

「いえ、話半分で丁度いいと思いますよ」


 そう。

 話半分で聞けば丁度いい。

 流石に1ヵ月寝っぱなしはないだろう。


「それにしても、腕輪の魔力を吸い成長するとなるといよいよ怪しいですな」


 後ろからその様子を見ていたバロフは、確信に近づいたかもしれないと少しばかり嬉しそうな声色で呟く。


「そぉねぇ。この腕輪ファルルの魔力を吸収して闇に変えるのよね~ぇ。基が良質なファルルの魔力だからさぞかし美味しいんでしょうね~ぇ」

「ほんの少し吸っただけで成長したしなー」

「しかし……。その分腕輪の効果が衰えた様でもありますな」

「まぁ、要経過観察って所かしらね~ぇ。駄目で元々。焦らず様子見ね~ぇ」

「そうですわね。わたくし達もそろそろお休みしませんとですわ」


 ジェルネの言葉を受け、部屋を出て行く。


「ファルル、良い夢を」


 最後に残ったリティウスは布団をそっと掛け直し、閉めかけたドアの隙間から見えた月幸花を少しだけ眺め、静かに部屋を後にした。

だらだらと書き始めたこの小説は、ここで一旦区切ります。

所謂、第一章(完)ですね;^_^A

次から過去編として第二章を始めます。

今後もご愛読よろしくお願いします~m(_ _)m

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