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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第一章
24/44

24・孤島の秘密会議-2

 招待状を受け取った二人は、仕方なく出席の意を記しそれぞれの側近に渡した。


「確かに。では、明日にでも帝国に届ける手配を致します。出立は二十日後に。祝いの品はどの様に致しましょうか」


 園遊会といいつつ建国千年の節目である事も綴られているため、手ぶらでは流石に行けない。

 かといって、不利益になる様な品を渡すわけにもいかない。


「そうですね。先日討伐された魔物獣の素材と核で作られた白金の剣・盾・腕輪・首飾りがありましたね。大海の底を住処にしていた魔物獣ですから希少なものには違いありませんね。魔石も付いていますし、魔力を流せば人間が持つには充分でしょう。私達にしてみれば脅威にもなりませんが、魔物や魔獣・魔物獣に対してなら有効になるはずですよ」

「珍品として人間にとっては深海の品は相当な価値になるでしょう。では、そちらの品と多少の祝金でよろしいですか」

「そうして下さい」

「後の準備はこちらで」

「頼みますよ。あぁ、ですが人数は増やさなくていいですからね。私とバロフ、後五・六名程度で選抜を。どうせ転移で行くのですし、間違っても私達に手を出そうなどと考える愚か者もいないでしょう」

「畏まりました」


 メモを取るバロフをわき目に、


「オレの所は親父が準備するのか?」

「そうですな。先程のとは見劣りしそうですが。サントヒュゲスの牙と核を使用した杖、鱗を使用した額冠・皮を使用したマントと肉ですな」

「巨大雷蛇か。人間が入り込めない地に生息しているからな。これも充分人間にとって珍品だろー。サンドヒュゲスの肉なんて病みつきになりそうで怖いけどな」

「そうですな。陛下ともに権威を示しておくには充分であり、仰る通り我々には脅威にもなりませんからな。問題ないかと。中でも取り分け大きなサントヒュゲス故、肉は大量ですぞ」


 と、ドルト達も確認を始める。


「見劣りするどころか充分張り合っているかと思いますが?(苦笑)」

「だよなー」

「こちらの出発はいつになされますかな?」

「んー。同じく二十日後でいい。こういうのは早すぎても遅すぎても駄目なんだろ?」

「そうですな。三日前なら充分かと。宿泊は帝国が手配するそうですから。ではこちらも明日帝国に封書を届ける手配をしておきますぞ」

「分かった。面倒臭いからオレもそんなに付添いらねー。どうせこっちも転移だしなぁ。一番近い町からなら馬車で良いだろ。普通に走らせても二時間程度だよな?」

「あぁ、私達もそうしますか。いきなり帝都に馬車で現れるというのも迷惑でしょうしね」

「「畏まりました」」

「貴族というのは面倒じゃのぉ」

「ほんとにね~ぇ。というか、デートの約束してるみたいに聞こえるわよ~ぉ?」

「「え……。勘弁して(くれよ)下さい」」


 と、他人事の様に言うのだが。

 二人の地位もそれなりである事を忘れているのは黙っておこう。


「で、ファルルには何て言うの~ぉ?」

「やはり予め伝えておいた方がいいのでしょうかね」


 悩むリティウスとドルト。


「その方が心構えというか、そういうのは必要なんじゃないかしら~ぁ?」

「まぁなるようにしかならんからの」

「あぁそれと……。出来ればあのファルルの腕輪。いつもの様に隠してあげないとね~ぇ。このアタシが解除出来ない呪いとかあり得ないんだけど~ぉ? 例え神だからって万能ってわけでもないし困ったものよね~ぇ。ちょっとこれ無理って言われちゃってるし~ぃ」

「しかも、父親の忘れ形見と思い込んで大事にしてるからなー」

「だからちょっと可哀そうなのよ~ぉ」

「儂の知識にもないからのぉ。古代魔術の遺物ではあるんじゃが。ちょっと弄っただけで呪いが暴走する仕組みだの。相変わらず下手に解読も出来んわい。解除方法があるんじゃないかとあちこち探してはおるんだがの」

「やはり無理そうですか」

「あれ作ったやつ、どんだけ恨みがあったんだよって感じだよな」


 優しい心の彼女だけに何とかしてやりたいと思いつつも何とも出来ない歯がゆさに、全員がため息をつき天井を仰ぐ。


「あぁもうせめて、今までの呪いをあの家族に百倍返ししてやりたいものだわ~ぁ」


 えげつない呟きにも関わらず、異を唱える事無く頷く面々であった。


 暫く雑談を交わしていると来客を告げるベルが鳴り、それぞれに顔を見合わせる。


「「「失礼致します」」」


 そこへ現れた三人の内二人の姿に嫌な予感が走るワーグとカーリィ。


「やはりこちらにいらっしゃいましたか、ワーグ様」

「ね? 言った通りですわ。皆様もいらっしゃいますわ」

「皆様、ご無沙汰致しております」


 一人目は、竜王の側近・ラプトン。

 二人目は、カーリィの側近・ジェルネ。

 三人目は、ファルル付きの侍女・ミクリア。


「ラプトン、儂はな日々楽しく過ごしたいんじゃが。面倒事はせんぞ」

「あ、アタシも面倒なのはや~よぉ……」

「皆様もいらっしゃるようですし、既に中身はご存知の様ですわ。ラプトン殿、ミクリア、話が早そうで助かりましたわね。カーリィ様、グランヴァルからの書状をお持ちしましたわ」

「その様ですね。ワーグ様も、竜王様よりの勅旨とこちらを」

「ぐぬぬ。いやじゃ! わっぱめ……自分が行きたくないだけじゃろう! 権力に任せおってからにっ。儂は引退したんじゃーっ! 自由にしたいのじゃーっ! 儂はファルルの付添人としていくんじゃーっ」

「アタシだってファルルの付添人で気軽に扮装していくのよ~ぉっ!」


 先程まで他人事の様にしていたというのに。

 ジタバタと暴れる二人を押さえつけ、にっこりと微笑みながら書状を目の前に突き出すラプトンとジェルネ。

 一体どこの駄々っ子か。

 側近二人が向ける視線は冷たいものである。


「二人とも諦めようぜ。仲間が増えてこっちは嬉しい限りだけどな」


 キヒヒッとザマーミロとばかりに笑うドルト。


「そうですね。道連れが増えて嬉しい限りです」


 と、リティウスもまた満足そうに道連れが増えた事を喜ぶのであった。

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