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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第一章
21/44

21・孤島で解体ショー-3

「ぜぇぜぇ……」

「はぁはぁ……やりますね……」


 冷静沈着な(ファルルが絡むと冷静ではないが)リティウスが、珍しく肩で息をしている。

 ウルトラスーパー本気の鬼ごっこは五分程続いていたが、二人とも限界になっていた。

 本来、肩で息をするという事はないのだが、鬼ごっこをした面子を思えばあり得る話だ。


「埒があかんのぉ」

「ここはくじで決めたらどうかしら~ぁ……」


 カーリィの提案に一同頷く。


「ファルル様は参加しなくてもよいですからね」


 リティウスの言葉に一同頷く。

 そもそも、ファルルは魔法が使えないのだ。

 いや。

 使えるには使えるのだが、使うと色々と不都合があるので無理である。

 参加しても意味がない。


「というわけで。くじを作った」

「それでは一斉に引きますぞ」

「せーのっ!」


 そして。

 項垂れたのは、内臓を傷付けた張本人のワーグであった。


「自業自得ね~ぇ……」

「仕方ないのぉ……」


 気の重さ=足取りの重さ。


 ずさっと全員が後退り、リティウスが周囲に空気清浄魔法をかける。

 ファルルの側は念入りにするのは忘れない。


「ではいくぞい」


 念のためにワーグも自身に清浄魔法を掛けるが、


「ひぃっ」


 と声に出すぐらいに、中に充満した悪臭がワーグを襲った。

 鼻が良すぎるのも考え物である。


 一ミリだけ隙間を開け指先を入れ、魔法を発動する。

 数分間、徹底的に魔法を行使する。

 徐々にワーグ自身に掛けた魔法を解除し、少しずつ戸を開ける。


「うむ。これで大丈夫になったかの……」


 多少の不安が残るが、ワーグもドルトもボーデンも卒倒するほどでない事を確認し、ほっと胸をなでおろした。


「はぁ~。参った」

「これで続きが出来ますね(はぁ……)」


 ちょっとした一騒動の後、解体を再開した。

 内臓の中身が美味しい身に飛び散っていないのが救いである。


「ホントにもう……。ワーグ、気を付けてよね~ぇ?」

「すまんかったのぉ」


 鱗洗いも再開する。


 内臓を完全に取り出し、一旦台を綺麗にしてから再びブラッカーを置く。

 骨の所まで刃をいれ尾に向かって深く切り込みを入れる。

 中骨に沿って刃を入れ四分の一のブロックが完成する。

 反対側も同じように刃を入れこれで上身が切り分けられた。

 中骨の下に刃を沿わせ下身と切り離し、下身も同じように縦半分に切り分ける。

 骨に付いた身をそぎ落とし取り分ける。


 要するにマグロの解体と同じである。


 最後に皮をはぎ、その辺に釣るして完了だ。


 皮は柔らかいが熱が通ったり乾燥させるとカチカチになる。

 噛み切れないのだ。


「皮と骨は後で粉末にしましょう」


 乾燥させて粉末にすればいい出汁がとれるので無駄にはしない。


 巨大過ぎて男手でもかなりの重労働だ。

 ひんやりとした庫内なのにうっすらと汗が滲んでいた。


「疲れましたね……」

「とりあえず……アレを処分しようぜ……」


 ぐったりとしつつドルトが指差した物。

 袋に入れられ密封された頭と内臓である。

 視線を向けるなり、全員が顔を青くしたのは言うまでもない。


「こっちも終わったわよ~ぉ」

「お疲れ様。バロフさんも、ボーデンさんも、ありがとう……」

「「どういたしまして」」


 一番美味しい頭部寄りの腹身と中落ちだけ残し、食材用の魔法袋にしまう。

 洗った鱗も素材用の魔法袋に放り込む。


 グダグダもありながら全ての作業が終わった。

 汗を流し、体を癒し、今日だけで濃い過ぎる一日がようやく終わったと一息ついた面々である。

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