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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第一章
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2・孤島の乙女(?)

 さて。

 隔離されたこの孤島に住まう、自然をこよなく愛し生物を愛する可憐な乙女(聖女)、と噂されるその人物は……。


「わああ……っ、きゃあああ……っ、ひえぇ……っ」


 と、深奥部の平屋の庭先で転びそうになっていた。

 しかも、石ころもなければ段差も何にもない所で。

 

 運動神経も何もあったもんじゃない。


 歩くとぽよぽよと音がしそうな感じで、程々に大きい。

 縦にではなく横に。


 可憐な乙女……?

 噂とは恐ろしい物である。


 だけど、どことなく可愛らしさもある。

 憎めない。


「ファルル様、足元に気を付けて(にっこり)」


 そう言いながら、ヒューーーンッと何処からともなく飛んできて、転びそうになるファルルと呼ばれた少し(?)大き目な彼女が地面とご挨拶しそうになる所を、間一髪で余裕な表情で優雅に支えるイケメン。


 足元に気を付けるもなにもそこには何もないのだが、そんな事は微塵にすら頭に浮かべない。


「うぅ……。あ、ありがとう……」


 口調が尻すぼみになりつつ、ぽそりと呟くファルルに、


「どういたしまして(にっこり)」


 と、リティウスと呼ばれたイケメンは、ニコリと極上の笑みを浮かべる。

 ファルルは俯きながら、思わず一歩下がりそうになった所でまたふらっと……。


「わっ……」


 どんだけ運動神経がないのか……。

 そしてまた、にこにこと笑顔のリティウスが支えになる。


 眩しい。

 ぽよぷよとしたファルルには、少し……いや、かなり眩しい。


「うう……」

「ファルル様、大丈夫ですよ(にこにこ)」


 リティウスにとっては、彼女の大きさなど小枝一本支える様な程度でしかない。

 涙を浮かべるファルルの目に人差し指を当てて、そっと拭う。


 完璧だ。


「ファルル~~~っ。も~、よそ見してるからよーうっ。ただいま~ぁっ」


 と、ファルルとは正反対に超細身の女の子がぽすんっと抱き着いてくる。

 この行動からは可憐と呼べないものの、彼女の方が「見た目」聖女っぽい。


「カーリィ、お帰り。えへへ……。またやっちゃった。だめだなぁ……」


 トロイし。

 美人じゃないし。

 何やっても駄目だし。

 泣き虫だし。

 取り柄ないし……。


 どんどんと闇へ闇へと思考が向かい始めるのを見た二人は、そっと目を合わせて苦笑した。


「ファルル様は、そのままでいいんです」

「そうよぉ。ファルルはファルルでいいのよ~っ」


 リティウスもカーリィも思う。

 取り柄がない事はないのに、と。


「えへへ~……」


 少し照れながらにっこりと笑う。


 喋るのも得意ではないし、引っ込み思案気味で、皆が想像する誰もが魅了される微笑み……とはいかないものの。

 ファルルのその笑顔は太陽だ。


 その笑顔と、優しい心に救われたのはこの二人だけではない。


 確かに、世間のいう所の美人でも可憐でもないけど。

 それを補っても有り余るファルルという存在に癒されるのだ。


 だから。


(もう少し自信を持って頂きたいものですが……)


 と、リティウス……だけでなく、彼女の周りにいる者はいつも思うのだった。

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