19・孤島で解体ショー-1
明けましておめでとうございました!
美味しい昼食後。
「ファルル様、美味しい食事ありがとうございました(にこにこ)」
ほくほく顔のリティウス。
食事のお礼にと後片付けを申し出るバロフとボーデン。
食器類を運ぶカーリィとドルト。
年寄の域を超えた年寄とは思えない大食いを見せてテーブルに突っ伏しているワーグ。
みんなの満足げな顔に嬉しそうにしながらテーブルの上を拭くファルル。
まさにほのぼの。
平和である。
それぞれひと段落し集まるのは庭……ではなく、解体用の倉庫である。
「冷却するぞい」
ワーグの口からひんやりとした空気が溢れ、空気を逃がさない様に戸や窓を閉め切り、温度を維持するためにボーデンが周囲に氷魔法をかけ壁全体に氷の膜を張る。
充分に冷えてから、
「これで完璧じゃの。さて、出すぞい」
と、中央にある大きな台の上に巨大ブラッカーをドスンと置くと、二度目であるにも関わらず重量で台が振動してビクっとするファルル。
「ファルル様。大丈夫ですよ(くすくす)」
隣にいたリティウスの腕を掴み、背後に隠れるファルルを見て苦笑する。
コクコクと頷きながら、背後からそーっと巨大ブロッカーを眺め続けている。
(ファルル様の手が冷たいですね)
風邪でも引かれたりしたら大変だ。
無限袋からローブを取り出しファルルにかける。
ちなみにローブは保温効果付きである。
「あたたかい……ありがとう……」
「いいえ。どういたしまして。飛び散ったら危険ですから、少し下がっていましょうか」
数歩下がった所に椅子を置きファルルを座らせ、
「それでは、私はあちらを少し手伝ってきますね。ファルル様は見学していて下さい」
と、巨大ブラッカーが鎮座する台へと向かった。
「ほぉ。これは見事なブラッカーですな。ワーグ殿が?」
「うむ。凄いじゃろう。さて。まずは鱗剥ぎからだの」
バロフの言葉に頷き、それぞれが鱗剥ぎに取り掛かる。
立派な素材になるので丁寧に剥ぐ。
ファルルがいる手前、思いっきり力を出す事を遠慮しているため、それなりに重労働となる。
「これは見事な。これだけの物なら立派な素材になりますぞ」
ボーデンが硬い鱗を手に取り、翳してみる。
鱗の割には厚みがあつにも関わらず透き通っている。
少々力を込めて叩いたところで皹一ついらない。
装飾としても武防具などに使っても充分の様だ。
どんどんと積みあがる鱗。
近くに設置した流し場でがしごしと、汚れと臭いを洗い流している。
「ちょっと……どんだけあるのよ~ぉ……」
流石に見ているだけなのも憚られるので、ファルルが隣に座り一緒になってがしごしと洗い始める。
「ファルルぅ、あんなの見るの初めてなんだから見学していいのよ~ぉ? それに結構淵が鋭いから危ないわ~ぁ」
というが、カーリィも一応女子である。
「大丈夫……。一緒に、いい……?」
「ん~っ。ファルルぅいい子~~ぉ!」
「ふふふっ」
おでこでファルルの肩をぐりぐりしてひとしきり戯れた後、作業を開始する。
「やべぇな。鱗だけで疲れる。どんだけあるんだよ」
「全くだのぉ……」
「職人に敬服しますね」
「「ですな……」」
面倒だとも恨みだとも思わないが、これだけの量だ。
流石の男五人も疲れている様子である。
流し場を見ると、大量に詰まれた鱗をひたすらにただひたすらに洗い続けるカーリィとファルルの姿がある。
ファルルはともかく、カーリィですら辛そうだ。
「バロフ、ボーデン。あちらを手伝ってあげて下さい」
「はい」
「そうですな。あの量は大変ですからな」
「うし。やっと本体だな」
という訳で助っ人に向かう二人を見送り作業を続けて行く三人である。