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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第一章
14/44

14・孤島の魚釣り大会-2

 チャポン。

 チャポン、チャポーン。


 黙々と釣り糸を眼前に広がる海に放り込む。

 黙々と、ただひたすらに、黙々と。


 シュールである。


 ……。


 一分……二分…………三十分……………一時間……………………。


 チャッポーン。


 シュールである。

 シュールであるが、そのスピードは凄まじい。


 水を張った容器に大小様々な魚が入れられていく。

 成長を遂げてない小物は直ぐに海へ還すのが暗黙のルールである。

 が、勝負なのだからこの際は気にしない。

 また後で海に放り投……還せばいいだけだ。


 周辺は、必要以上に搾取する事がないので海の幸は豊かである。

 ただ、そんな悠々自適な魚達にとって、この時ばかりは涙目になっているであろう。

 そんな勢いで魚達が釣り上げられる。


 ただの勘、経験則、まぁ色んな条件が重なり潮流を読んだ結果、それぞれが陣取った場所は、どれもピンポイントで面白い様に釣れていた。

 本職漁師も真っ青である。


 無遠慮に釣り上げられていく魚の中には、これぞ大物! とその立派な魚体を見せつけるかの如く堂々としたものも混ざっており、壮観である。


 そして釣れ具合が悪くなると移動する。

 ただひたすらそれの繰り返しだ。


「むむっ。わっぱめ。エメラルドプーファを釣りおったな。負けておれんわい」


 同時に相手の釣り上げ具合も見ながら、一喜一憂する。


「リト、シルクフィッシュなんて釣ってやがる……」

「ふふっ。珍しい魚が釣れましたね。ファルル様に差し上げましょう。おや……。カーリィは、レインボーライギョですか……。やりますね」

「ワーグ~ぅ……? ちょーっとその巨大ブラッカー、反則過ぎだわ~ぁ……」


 それぞれに感嘆や呆れの混じった感想を漏らしつつ、チャポーンと糸を垂らして静かに過ごす。


 エメラルドプーファ。

 口元が尖り、頭部が鏃のような形で胴体から尾びれの境目にかけてすっと細長くなっている。

 頭から尾びれにかけてクリーム色からグラデーションが掛かり濃いエメラルド色に変化している。

 観賞用で、特に天然物は高値で取引されている。


 シルクフィッシュ。

 名前の通りシルクのような透明感・光沢のある鱗、柔らかくほんのり赤い鰭が、海中に射す陽光を浴び幻想的に煌めく。

 無駄に捻る事なく、すーっと真っ直ぐ優雅に泳ぐ様も相俟って、海の貴女も言われている。

 こちらも観賞用で、貴族の間では人気の高級魚となっている。


 レインボーライギョ。

 少し丸みを帯びた魚体で、青色の皮膚に黄色い雷マークの様な模様が真ん中に入っている。

 ギザギザの歯は主に甲殻類をかみ砕くもので、エビやカニをメインに捕食する。

 動きも激しく身がしっかりと締まり、特に引き締まった頬肉は非常に美味である。

 こちらも高級食材として人気の魚だ。


 ブラッカー。

 個体そのものが比較的大きく、平均一.五mという巨大魚である。

 皮膚は白く柔らかいが、薄いが固く光沢のある黒い鱗に覆われており、外敵から身を守っている。

 常人が通常の方法で刃物を思いっきり突き刺しても、穴は開かない。

 鱗は装飾としても使用され、非常に鋭く細いとげの様な硬い鰭は武器の一部としても使用される。

 そんな見た目に反して、優しい味を醸し出す身は、貴人から一般民まで幅広い食卓に良く並ぶ美味しい白身魚で、食の王様(魚類バージョン)とも呼ばれている。

 ちなみに、ワーグの釣り上げたブラッカーは三m級である。


「ふぉっふぉっふぉっ。こりゃなかなかの大物だのぉ」


 片手間の様な勢いでひょーんと釣れるのは、単純に腕力という力技である。

 竜族のワーグだけでなく、リティウスやドルトにとっても簡単な作業だ。

 純粋に腕力という意味では、魔法禁止という制限がある以上カーリィには無理だろう。


 忘れていないか心配だが、誰が一番素晴らしい魚をゲットするかではない。

 誰がより多く釣り上げたかの勝負だ。


 そして、二時間とうい短時間で漁師もびっくりの獲物と量を揃えた四人は、勝負の時を迎えた。


「しゅ~りょ~! さあ、みんな~ぁ。釣り竿引っ込めて~ぇ! ……ワーグ~ぅ? 未練たらしくしな~ぃ!」


 と、カーリィの問答無用の遠距離魔法でぶっつんと釣り糸を切られたワーグは、渋々と竿を引っ込めるのであった。

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