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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第一章
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1・孤島の噂

 この世界には、人族・獣族・魔族・妖精族など多数の種族と、大小様々な陸が存在する。


 基本、種族ごとに住み分けがされているが、実は結構入り乱れている。

 単一・混合それぞれであるが、人族や獣族、魔族といった圧倒的に個体数が多い種族は一つの大陸につき一つの種族といった風に大雑把に分かれている。


 それぞれの陸には、当然の事ながら国がある。


 こちらも陸同様単一種族で構成されていたり他種族混合であったりするが、余程の至上主義でない限りは気に入った土地に住み着いたりと自由な面もある。

 ただ、至上主義ではないが、一部の種族は交流が消極的である。

 あるが故に、未だに主に人族にとって未知な部分が多かったりもする。

 かといって、その種族にとって交流そのものが嫌いなわけではない。

 色々と誤解されたり、嫌われはしないが敬遠されたりと微妙に居心地が悪いと感じるので自らが積極的に外へ出るのを控えているといった具合。

 旅人・商人・冒険者。

 そういった彼等が、ふらっと外からやって来る分には平気なのだ。

 自らの足で積極的に出て行かないだけで、普通に歓迎もするし商売もする。


 そんな世界にある魔族大陸。

 人族大陸よりも大きく、世界で一番広大な地でもある。

 その大陸より西端から南に七日程海を下った先に、とある孤島が存在する。


 森林で深く覆われたその孤島は、四年半前突如として出現した。

 周知されてはいないが、ある人物の所有地である。

 その人物の所有地だという事は、同種族にとっては暗黙の了解として口にはしないが理解はしている。

 外の種族が知らないだけだ。


 島というには大きいが、ぽつんと海のど真ん中に静かに存在する以上それは島である。

 その空間はとても穏やかで居心地も良く、沢山の生物が何の危機感を覚える事なくのんびりと生息している。


 島の中心には開けた場所があり、かなり大きい平屋の建物がある。

 平屋の周りには、敷き詰められるように草花が根を張り、数分歩いた先には澄んだ泉がある。

 という事実は、今までそこに辿り着いた者がいないので知る人はいない。


 上空から見ても巧みに隠されているため、詳細を知る事はない。

 何か魔法が掛けられていて、そこに何かがあるだろうと思われる。

 程度には分かるであろうがそれだけである。


 そして、突如現れた孤島に、様々な物が足を踏み入れる。

 踏み入れた者は必ずと言っていい程、深く感嘆のため息を漏らす。


 穢れのない空気。

 溢れる生命力。

 荘厳な自然の空間。

 見慣れぬ生物。


 そして何より。

 季節を感じさせない多種多様な植物が東西南北に区分され管理されているかの様に群生していた。

 東には春の植物、南には夏の植物、西には秋の植物、北には冬の植物。


 こんな自然の摂理を無視した環境があっていいものなのか……。


 と、そんな感じで法則を無視し季節を凝集させたこの孤島に、神秘めいたものを感じた者達は更に驚愕する。

 未発見の植物に加え、希少生物や絶滅したと思われる生物までもが生息しているのだから。


 そして、思い耽り想像する。

 

 きっと、ここを住処としていると噂される人物は、神に手が届くほどの徳があり、聖気を惜しむことなくこの孤島に注ぎ、ひっそりと暮らす聖女様なのだと。

 その姿は、可憐で一度微笑むと見る者を魅了する素晴らしい乙女なのだろうと。


 故に、想像はあくまで想像でしかなく、乙女で聖女であって欲しいという願望が、いつの間にかこの孤島には聖女が住んでいるという噂となり定着してしまった。


 見た者はいないので、婆さんかもしれないし爺さんかもしれないし、もしくは人すらでない場合すらもあるが、人とはそういったあって欲しくないという思いが強ければ強い程、想像だけを膨らましていくものである。


 まぁ、想像するのは勝手なので放置である。


 だが、誰一人としてそこに辿り着いた者はいない。

 辿り着けないには理由がある。

 そこに住む人物のせい……ではなく、そこに集う者達の仕業。


 生物学的調査をしようと密漁しようとすれば、物理的・視覚的・精神的な三大ダメージを喰らい、そこで諦めればいいのだが、中にはしつこい者もおり、そういった者は問答無用で見えない何かにより放り出されてしまうのだ。

 ご丁寧に乗って来た船の近くの海の中へ。


 とは言っても、食としての果実くらいは目を瞑ってはいる。

 が、持ち出そうとすれば三大ダメージを負う上、いつの間にかそれらは回収されて海の中に放り出される。

 

 そして今日も。


 そんな話はただの噂話だ。

 ホラなんて信じない。

 あの島には夢があるんだ!


 そう息巻いては諦めの悪いお馬鹿な連中が、二日目にしてげっそりとした面持ちで去って行く。

 そう、たった二日でこのやつれ様。

 半端ない。

 一体どれだけ禁忌を犯そうとしたのか。


 何が聖女の住まう孤島だよ! 悪魔の巣窟じゃねぇか! と罵詈雑言をまくしたて孤島を後にするのだった。


 当たらずとも遠からずだが、言いがかりも大概である。


 そもそもここは。

 ある国のある人物の領域であり持ち物なのだ。


 つまり、勝手にやって来る者は不法侵入。

 持ち帰りは盗みである。


 海の中とはいえ、船の近くに放り出される程度で済んでいるだけマシだと思うべきなのだが、その事実を知らないのでこの程度に留めているといった所でもある。


 そんな孤島のいつもの日常。

 深奥部では、のんびりとした空気が流れていた。

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