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7.辿り着いた灯火

其処からの歩みは先程までのものとは大きく遅れ始めた。

疲労が残っている、というのも無論だがいつまた襲撃されるか。

そういったものへの警戒が自然と緊張感を増してしまっていた。

太陽の位置も分からない、暗く湿った森の中。

方向も、目標も定まらない中をただ歩く。

幾ら楽天的な俺とは言っても、どうしようもなければ投げ出していたかもしれない。

そうしなかったのは、死にたくない。 そういった感情が大きくあったのが一つ。

もう一つは、最初から持っていたライターのお陰だった。

ぱちん、ぱちんと一定のリズムで鳴らしながらの行進。

音が理由で何かに気付かれる危険は無論あったけれども。

それよりも定期的に浮かぶ淡い光が心を落ち着けてくれていたから。


(……ぁ?)


どれだけ歩いただろうか。

木々が、視界の奥で見えなくなっていた。

自然と脚が早まる。

出口だろうか。

或いは誰かが切り開いた場所なのだろうか。

それとも……。

実際に行かなければ分からない、というのもあったけれど。

恐らく俺は、『誰かに会いたい』という気持ちが大きかったのだと思う。


「こりゃ、ぁ……。」


突き当たった先は森の出口。

やや盛り上がった台地のような場所の上にある、森の端。

森から続く川がうねった先に、小さく白い煙が幾つもたなびいて見えた。

明らかに現代の、俺が知る範囲の日本ではありえない光景。

空を見上げれば、太陽が頂点からやや傾き始めている。

頂点を正午、とするならば午後に入り始めた時間ということになるのだろうか。

それはそうとして、煙。


「誰か、いるよな……?」


そんな不安な言葉が漏れるほど、今の俺は疲れ果てていた。

後になって考えれば、何かしらがあるのは明白だったのだけど。



小さい、金属をぶつける音がする。

それと共に響く叫び声。

恐らくは数名、男女入り交じったような声と爆音が響いた。

ゆっくりと、そちらに近付いていく。


「っし、終わりッ!」

「とっとと証明部位剥ぎ取って次行きましょ。」

「ちょっと待て、此奴金属製の武具持ってんだけどおっちゃんとこ売れねえかな?」

「どうだろうね、質は悪いから父さんが買い取るとしても安値だよ?」


遠巻きに見えるのは、様々な髪色をした少年たちだ。

赤、青、銀。 現代の日本で見ればやや、どころかかなりの確率で浮くだろう。

そんな彼等が鉄でできた、やや長めの武器……剣や杖を持って何かを話している。

嘗て読んだ、幻想物語(ファンタジー)に紛れ込んだような……そんな違和感が先立って。


「あ……おい、誰かいるぞ?」

「ほんとだ……■■■■、知ってる?」

「知らねぇ。 つーかあの服からしてどっかから迷い込んだとか?」


だけど、そんな彼等の会話は左から右へと抜けてしまった。

誰かに会えた、そんな事実が力を抜けさせてしまった。


「あっ、おい!?」


誰かが呼んでいる。

誰かが駆けてくる。

ただ、それが誰かを知ることは出来ず。

意識が遠退いて……。

やっと人間と遭遇。

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