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7 王宮に行こう!vs義母さま

活動報告に、チヤチャの製作途中の年表を書いてみました。

興味あったら見てみてください。

見なくても大して問題ないと思います。

うう〜憂鬱だ。

王宮なんかに行きたくない。



わたしは馬車の中で呻いていた。

今日は精霊の儀の日である。

脳内会議の決議により、スッキリとしたわたしであったが、決議内容の一つが早速崩れるとは考えなかった……。

ユリウス兄様に指摘されるまで気が付かなかったよ、わたし。

そうだよね、王宮は王族のお(ウチ)だよね、うん。

何とか良い方法がないかと第二回脳内会議を開催したが、建設的な対策は残念ながら出なかった。

消極的対策であったが、採択されたものは『王宮に行かなければ良いんじゃない?』と言うものだ。

しかし明らかな逃亡はまずい。いや、なんだ、敵前逃亡はわたしの性に合わない。

そこで考えたのが、目覚めた翌日から始めた早朝の走り込み、それを利用するのはどうだろうか……と。

名付けて――。

いつもよりちょ〜っと長く走り込み、いつもとちょ〜っと違う、主に建物の陰とか屋根の上とかを走り込む、あれ、気が付いたら出発予定時間過ぎちゃった、テヘ、ゴメンね作戦!

これはいける!と思ったのに、思わぬ伏兵によって作戦は失敗に終わってしまった。

義母様自らが、槍を持って捕獲に動いたのだ。




無理、あのお方は人間じゃない!




わたしは裏庭を気持ち良く走っていた。

走り始めて一か月――この身体チヤチャは高性能だ。奴隷として生き残るために鍛えたわたしの身体と遜色ない。それより、若干チヤチャのこの身体のほうが性能が上かもしれない。最初は感覚と身体能力が重ならず、少なからずストレスを感じたが、今はそんな事はない。

感覚通りに動ける、これはとっても壮快だ。




今、わたしは風になる!




そんな感じだ。

調子に乗ったわたしは、すっかり当初の作戦を忘れた。

わたしはニマニマと笑いながら、良く手入れされた芝生を軽やかに駆ける。




はっ?殺気!




わたしは咄嗟にその場を飛び退く。




ズーン!




と地面に生えた槍。

その槍をゆっくりと優雅に引き抜き、にぃっと妖艶に微笑む義母様。




「よくぞ避けました、チヤチャ。この義母はうれしいですよ」




その言葉セリフと笑顔にわたしは血の気が引いた。




逃げろ!




頭と身体が全力でそう命令コマンドした。

しかし、世の中には上には上がいるものだと改めて実感する。

壁を走り、屋根の上を全力で逃走するわたしを、襟に槍を引っ掛け、まるで猫の子のように軽々と義母様は捕獲したのだ。

そして極上の微笑みを浮かべ、満足そうにわたしを()()()()強制連行した。

その後わたしは、アンネローゼとコジマに、お説教をされながら着替えをさせられるという苦行を課せられる。幸いなことに義母様からはお説教はなかった。むしろ何故か機嫌が良さそうに、ニコニコとわたしの着替えを、お茶を飲みながら監視していた……謎だ。



「お嬢様、逃げ出してどうするおつもりだったのですか……」



アンネローゼがそう言いながら、コジマに緋色のサッシュを渡す。

コジマはそれを受け取り、わたしの腰に巻いた。

今日のわたしの衣装は白のワンピースドレスだ。刺繍とフリルが可愛らしい。



「チャチャお嬢様、精霊の儀は平民から貴族、王族も皆、例外なく受けねばならない儀式ですよ、逃げることは出来ません」



 コジマはそう言いながら、力一杯サッシュを締める、いやこの場合は絞める、か。わたしはあまりの仕打ちに抗議の声をあげた。



「コジマ、ちょっと苦しいです。そんなに締めたら、朝食も入らないわ!」


「チャチャお嬢様、朝食のお時間はありませんよ」


「ええっ!?」



 コジマから衝撃の事実が知らされた。幼児虐待である。わたしはが再び抗議の声を上げようと口を開くと、コジマに先制された。



「チャチャお嬢様、今朝の騒動のためにお時間は()()()()()()余裕がないのですよ」



どこか迫力のある笑顔がわたしに向けられる。

着替えよりも朝食の時間を優先して欲しかった、とは口が裂けても言えない。

わたしは開きかけた口を閉ざし、息を飲み込んだ。

うん、わたしは空気は読める子だ……。




その後、櫛を持ったアンネローゼが、嬉々として髪を何やら複雑に結い上げようとしているので、それだけは断固拒否。ポニーテールにしてもらった。結ぶリボンも普通のものにして欲しかったのだが、それだけは銀糸のレース編みリボン、とアンネローゼが絶対に譲らなかった。珍しくウチのコ(アンネローゼ)が頑張る。

結局わたしが折れた。



「お嬢様は可愛らしいのですから、もっと着飾ればよろしいのに……」



と、少し唇を尖らせながらリボンを結ぶアンネローゼ。

うん、お世辞でもそう言われると、悪い気はしない。まあ、その言葉に調子に乗って着飾ろうものなら、髪と瞳の色以外平凡なわたしは、間違いなく世間からお馬鹿な娘と見られることだろう。または、()が歩いている、と陰口を言われるのだ。

どこに破滅の一歩が潜んでいるのか分からないのだ。

何より着飾るのが、面倒くさい。



「アンネローゼ、チャチャは何を着ても可愛らしいから大丈夫よ。ただし――」



それまで、一言も口を開かなかった義母様がそう言った。チラリと青い瞳がわたしを射貫く。



「おとなしくしていればですけどね。さて、準備も整いましたね、向かいましょうか」



義母様に笑顔で大きな釘を刺されたよ、わたし。

お読みいただきありがとうございました

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