始まり-1
前回までのあらすじ
ゲームをやりたかった少年は
ゲームを買って家に帰って
ゲームをやり始める
「今あなたの町には152401人の人間が生活していて、あなたの国には136974001人の人間が日々暮らしています」
そう表示される背景にはうっすらとある町が浮かび上がってきた。僕が住んでいる町だ。
さすがに細かい所まで入力しただけある。
それに、すごいのは驚くほどの精巧な町の作りだ。町の輪郭から家の形、そこら辺を歩く人までもが鮮明に映しだされる。
まるで今の今、この町をモニタリングしているような感覚におちいる。
「あなたはこの町で1人になったら、と考えたことはありますか?」
画面が問いかけてくる。
アニメではその題材をよく目にするものの、自分の身の回りに重ね合わせて考えたことはなかった。
画面は続ける。
「それでは、この町で1人になってみましょう」
その直後、画面は僕の家の前に立った時の風景に切り替わった。何も風景に変わりはない。人も時々歩いてきては挨拶してくれる。
なぁんだ、1人になんてならないじゃないか。
そう思った時風景に矢印が表示される。
「あちらに進んでみましょう」
少し待っても特に何も起こらないようなので僕は指示された方向に進んでみる。
しばらく進むとゴール地点のようなマークが見えてきた。そこまで走った。
到着した時何故かある種の達成感を覚えた。そして段々楽しくなってくる。
すると突然後ろから悲鳴が聞こえてきた。
人の悲鳴が苦手な僕は咄嗟にゲーム機の電源を切ってしまった。
しまった、と思ったが再度起動させてみると元の画面からゲームは始まった。
ホッとした反面、先に進むのが億劫になった僕はそこで中断してアニメを見て落ち着くことにした。
その日の内に、僕はそのゲームを進めることはなかった。