紅巾物語
嘗て、小判や銀貨などが使われていた時代のことだ。
幸蔵と名乗るおめでたいものが居た。
幸蔵は悪代官の倉に忍び込み、金貨を奪っている。だが、気付かれてはいない。それどころか。悪代官の矢島飛騨守が彼の住まいを保証している。
矢島飛騨守が雪の降るなか、離れの雪隠で用を足そうとした。
目の前には赤い服を着た女の子が用を足していた。
服の形は、和服ではなく異様ではあったが、髪が長いのを見るとどうやら女の子のようだ。
飛騨守は凝視する。
女の子が用を足すのは滅多に見られない。
これを逃してしまっては男ではないと言わんばかりに見ていた。
だが、唯一気になることは、用を足す姿勢である。
女性も立って用をたしているのは普通のことだが、便器を後ろにするのが普通である。しかし、彼女は違った。
気が付いてみたら、彼女が目の前に居た。
「雪隠をお借りしました。有難うございました。では、失礼します。」
幸蔵は出ていった。幸蔵の声にも気が付かず、用を足していた。それほど矢島飛騨守は酩酊していた。
「いやぁ、あんなに可愛いおなごが足した後は、勿体無くて使うのも躊躇するわ。」
変態エロ親父、矢島飛騨守が興奮しているなか、蔵の金の殆んどが盗まれてしまっていた。
「お姉ちゃん。気を付けてな。この極寒じゃ身も堪えるからな。」
「はい。心配有難う御座います。もう一度だけ雪隠を借りても良いですか?」
アイツのことだ。用を足せば、ハイエナのように痕を嗅ぐであろう。
アイツは、金や数多くの財産を手に入れたが、女にだけは逃げられていた。
用を足したふりをして離れた。
案の定、奴は後ろに見えた。
残りの有り金を盗んでその少女は立ち去った。
その後幸蔵は自ら暇を乞い、逃げていった。
彼の行方を知るものは誰もいない。




