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習作

【習作】征服

作者: さとう

 初めて永遠を知ったとき、それは恐怖でしかなかった。完全なる暗黒が覆う、絶望と苦難の世界としか思えなかった。いつからか始まる〈不滅の運命〉とも言うべき、絶対的な力に為す術など無い。永遠は恐怖そのものであった。

 しかし、成長とともにいくつもの同じ事象を繰り返し見て、感じ、すぐそこで触れることにより、それに対して理解を深めると恐怖はいつからか無くなっていった。暗黒の中には安らぎが待っている、苦難の先には再生が見える。永遠の果てには別な何かがあると思えるようになった。


 恐怖の源泉たる嫌悪や忌避すべきだったものが、可能性や希望に変わったとき、永遠は〈不滅の運命〉から、いつしか〈喜望の運命〉へと変わった。永遠に潜む主題が〈混沌〉から〈未来〉に変化したとき、私の内で眠っていた暗い翳は、光輝く進む意志へその姿を変えたのだ。

 それを認識すると私の中に未知なる光が溢れ、同時に、これからの人生に対して光が射し込んだ瞬間でもあったように思う。閉ざされていた私の世界、内側に向かう深く暗い内省の意識は絶えず私自身を苦しめていた。それが終わりを告げ、意識は外へと向かい、終わらない自己探究から新たな世界の発見へと転換した。苦しみは振り払われ、見たことのない景色に〈未来〉を感じた。

 ただし、その影にはもちろん拭い切れない永遠への恐怖もまた存在するが、それは人生の道を際立たせる陰影なのだと思えば、取るに足らないことである。影のない世界はおそらく歩み征く先を全くの平面にしてしまう。そうなれば正しく進むべき道は消え失せてしまう。


 私はいつからか、永遠に焦がれるようになった。終わらない夢を見続けていたい。世界を繰り返し渡り歩きたい。永遠の果て、歩み征く先にはきっと何かがある。故もわからぬ確信があった。永遠に身を投じ、呑み込まれたあと、永遠とともに……いや、そんなことでは終わらない、永遠を征服するのだ。

 永遠を越えて自分のものにしたとき、私は何ものになるだろう。

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