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第一話 俺のいままで。

 

 なんでだ?

「ねえ、デイブ。終わったよ」

 なんでこうなった?

「私、デイブを助けたよ。助けるって、こういうことでいいんだよね?」

 どうして俺は今こんなところにいる?

「ねえ、デイブ」


「次は、どうすればいい?」

 どうして、俺はこんな選択をしちまった!?

 §

 その日の俺は、リーダーが持ってきた依頼の説明を受けてた。

「今回はこの建物に……セキュリティはクライアントが片付けて……ブツを回収したら……追手は始末して……」

 リーダーはいろいろ言ってるが、俺は簡単な作戦も覚えられないくらいバカだ。だから現場でリーダーの説明を聞く。つまり、別に今聞かなくたってリーダーがあとで教えてくれる。

「おいデイブ、聞いてんのか!?」

「うっす、聞いてないッス」

「テメこら……まあお前はそういうやつだけどよ」

 周りの仲間たちが笑う。馬鹿にされていると感じるが、憤りはない。俺はバカなのは俺もよく知ってる。

「まあ……今回は簡単な仕事だ。割もいいし、気楽にやっていこうや」

 オー!と掛け声が上がる。今回の仕事は簡単らしい。俺のやることは変わらない、現場でリーダーの言うことを聞くだけだ。


「ぐぁっ!?」「なんで自動追尾弾を……!」

 自動追尾と言っても、結局のところ銃器か銃器に接続した使用者の視界で判断してる(らしい)。つまり、メチャクチャ素早く大きく、壁とか天井とか走ったりすればロックは外れる。

 そしたらカタナでぶった斬る。あとはそれを続けて、終わりだ。

「リーダー。終わりましたッス」

「おーありがとよデイブ。さーてこの部屋のパスは確か……」

 リーダーが扉を開けるために色々やってる。俺は何もしない。何もわからないし、何も言われてないからだ。

「よし、開いた。デイブ、お前先いけ」

「ウッス」

 部屋の中に入る。特に自動兵器類はないし、人影も見えな……いや、部屋の中央に一人?

 でもこれは……人間なんだろうか。

 背中から六枚の翼が生えてる。髪は白い。そいつは床にぺたって座って、下を向いて目を閉じてる。寝てんのか?

 と思ったら、そいつが目を開けた。そんで俺の方を見る。

「あなた、誰?」

 聞かれた。聞かれたけど、答えていいんだろうか?リーダーは何も言ってくれなかったし。

「おーいデイブ、中は大丈夫か?」

「ウッス、特に問題なさそうなんすけど、部屋の真ん中になんか変な奴が居るッス」

「変な奴だァ?」

 リーダーから聞かれたんで答えてたら、翼の奴が急に立ち上がった。

「デイブ。それがあなたの名前ね」

 そう言って、俺に近づいてくる。俺はカタナを構える。こいつはどうするべきなんだ?斬っていいやつなのか?

「デイブ、私は何をすれば───」

「お、それだそれだ!」

 リーダーが近づいて来て、翼の奴に近づいていく。

「デイブ、これが頼まれてたブツだ。斬らなくて偉いぞ。こいつを外の待機組のところに持っていく。わかったか?」

「ウッス」

 リーダーから言われたんで、俺は「ブツ」の手を引っ張る。「ブツ」は特に抵抗もせず、俺についてくる。

 あとは、これを外に持っていけば、俺の仕事はひとまずそこで終わりだ。


「クソ、おいジェシー起きろ!目を閉じんな!」「話が違う!クライアントは確かにセキュリティ切ったって……!」「裏切られたんだよ!それしかないだろ!」「デイブ!追手をさっさとやれ!」「ヤバイ車のタイヤ撃たれた……!」「嘘だろ……ジェシーが死んじまっ───」「オスカー?おいオスカー!」「デイブ!後ろの車撃ち抜け!」「あいつらまさかウチらに体当たり仕掛けてくるんじゃ、ッ!?」「デイブ、デイブ!」


 ヘリの羽音が遠い。世界のすべてが遠く感じる。

 俺とリーダー以外死んじまった。ジェシーも、オスカーも、ゴライアスもセレナもだ。

「クソ……テメェら……木っ端企業のカス共の癖して……!」

「あらベレスタ、今アタシにそんな口きける状況って理解してんノ?これだからギャングってダメネ~」

 ベレスタ。うちのリーダーの名前。今、オカマに銃を向けられてる。俺もオカマの仲間に体を押さえつけられてる。

「俺はここで死ぬかもしんねぇがな……俺のバックがテメェらに対して───」

「あラ、あなたのバックってコイツらかしらン?ハーイ、コレ写真」

「なっ……」

「これネ、うちの別の班が今送ってきた写真。よかったわネ~アンタももうすぐ同じところに行けるわヨ」

「糞……畜生……!」

 写真がちらって見えた。うちのチームにたまにやってくる人だ。死んでた。その上の人も死んでたし、その人たちのボスも死んでた。

「お疲れ様です、対象を確保しました」

「ハーイ、それじゃア、ここいらで撤収と行きましょうか」

 アーマーを着た男が「ブツ」を連れてきた。連れていかれるんだろう。

 ここで俺の人生も終わりだ。次の人生では、もっと頭がよくなりたかったな。

「デイブ」

「ブツ」が、俺に話しかけてきた。今更なんだよ。

「ちょっト、アンタ急になにヲ……」


「私は、何をすればいい?」


 何を?何をって、なんだよ。俺は今まで、言われたことばっかりやってたんだ。「何」なんて、思いつけるわけがないだろ。

 でも……そうだな。折角最後なんだ、俺もなんか、言ってみるか。

 俺は俺の体を押さえつけるヤツを見る。オカマを見る。リーダーを見る。


「なあ」

「うん」

「助けてくれ」

「わかった」


 ブツがまず自分を縛る拘束具を壊した。それから何もわかってない連行役を翼をぶつけて吹き飛ばした。俺がギリギリ見える速さだから、きっとみんな何をしたのか見えやしなかっただろう。

「なっ……ふざけんじゃねえぞこの腐れ(ピー音)が!」

 オカマが憤って、拳銃を向ける。そんで銃を撃った。

 でも無駄だった。「ブツ」が手を翳したら、全部あらぬ方向に向かって行ったからだ。

「なんなんだよ、なんなのヨ、アンタ……!」

「焼却開始」

 掌に光が集まる。「ブツ」の手から、光の線と呼ぶにはあまりにも太いそれは、大砲を思わせた。

「あ……」

 その声が出たのは、俺かリーダーか。オカマは光に呑まれた。近くにいたリーダーも巻き込まれた。

 俺の体を押さえてるやつが、叫びながら走り去っていく。逃げるつもりだ、とあまり働かない頭で思った。

「ブツ」が手を向けると、逃げてる男の動きが止まる。そのまま、宙に浮かび始めた。

「ブツ」が大きく上へ腕を振り上げた。男も上に吹き飛んで、上空に浮かんでたヘリにぶつかった。

 爆発。墜落。マンションに当たって、火災。


 現実に見えなかった。今日のすべてが、夢に感じた。


 なんでだ?

「ねえ、デイブ。終わったよ」

 なんでこうなった?

「私、デイブを助けたよ。助けるって、こういうことでいいんだよね?」

 どうして俺は今こんなところにいる?

「ねえ、デイブ」


「次は、どうすればいい?」

 どうして、俺はこんな選択をしちまった!?


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