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元上場企業CEO、廃村を再建する  作者: 50


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1/1

第1話「異世界の小屋」

単管パイプの足場が、嫌な音を立てて崩れた。

 落ちかけた若い職人を反射的に突き飛ばした瞬間、視界が白く弾けた。


 ——そこで、私の人生は終わったはずだった。



だが、次に目を開けたとき、天井があった。

 木の板が隙間だらけで、青空がのぞいている。

 四畳半ほどのボロ小屋。壁は反り返り、床は土。風が吹き抜ける。


「……どこだ、ここは」


 扉を押すと、錆びた蝶番が悲鳴を上げた。

 外に出た瞬間、息を呑む。


 ——空が見たこともない青さ、しかし廃村だ。


 石畳は割れ、建物は崩れ、農地らしき区画は草に飲まれている。

 人の気配はない。



 元々、私はただのサラリーマンだった。

 趣味で古民家を直していたら評判になり、独立。

 不動産事業は当たり、飲食、宿泊、アミューズメント、企業投資へと広がり、会社は上場した。


 それでも現場主義は変わらず、今日も職人たちと汗を流していた——その結果がこれだ。


 小屋に戻り、周囲を見渡す。

 廃材、釘、石。

 隅には古い工具箱。錆びてはいるが、ノコギリもハンマーも使えそうだ。


 思わず口元が緩む。


「……懐かしいな、ここまでひどい物件は」


 まずは壁の隙間を塞ぐ。

 廃材を切り、打ち付け、天井を直し、扉の蝶番に油を塗る。

 作業に没頭していると、足元で何かが動いた。


「うわっ……!」


 虫だ。だが、こんな気持ち悪い虫は見たことがない。

 青紫の甲羅、八本の足、異様に長い触角。


 よく観察した瞬間、頭の中に情報が流れ込んできた。


 名称:アオアシガメムシ

 危険度:なし

 特性:臆病で人を避ける


「……ん? これ鑑定か?」


 私はしばらく虫を見つめ、それから静かに笑った。


「あらー異世界か。なるほどな」


 不安よりも、好奇心が勝ち早くリフォームしたい

 ちょっと気持ち悪いので、木の板に乗せて虫をそっと外に逃がし、作業を再開する。


 どれほど時間が経っただろうか。

 ハンマーを振っていると、外に複数の気配を感じ扉を開けた。


 村人らしき子供、若い女性、老人。

 皆、痩せ細り、服は継ぎ接ぎだらけで、顔色も悪い。


 世間的にはハズレの最初の村

 個人的には当たりの村

 失礼ながらリフォームしがいのあるの“限界状態”であることは、一目で分かった。


 そして——一人の老人が前に出た。


 背筋が伸び、静かな目をしている。

 耳が長い。人間ではない。


 おお、エルフだ。


「……あなたが、この小屋を直していた人ですか」


 穏やかな声。だが、その奥には警戒と期待が混じっていた。


 私はヤバいと思い頭を下げた。


「五十嵐鉄也。元々は商会のような組織を束ねてましたが……今は、ただの大工職人です。勝手に直して、すみません」


 老エルフは小屋を見て、私を見て、長い沈黙のあと——小さく息をついた。


 老人の背後で

 青空にアオアシガメムシが飛んでいく姿が見えた

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