085.変異ドリンク
ミカエラと惑星マザーでオメガ討伐デートをした1か月後、午後から母艦内の会議室で連合の会議が行われる。会議の内容は知らないが、何故かオレも参加する事になっている。
ちなみに今のオレの住まいはアメリカの軍事基地から母艦になった。物置と化していた一室をコマンダーがリフォームしたのだ。
キッチンに浴室、トイレも完備しており、基地にあった家具も持ち込んだ為生活する事に困る事はない。部屋も広くなった為、ミカエラもクーナさんも通いやすくなったので、喜んでいた。
軍事基地の内部を部外者のミカエラが歩き回るのはあまりよろしくなかったので、こちらとしても助かった。それに広くて綺麗な部屋なら大歓迎だ。
そういう訳で会議室への移動も楽なのだ。部屋の中にはコマンダーしかおらず、他のお偉いさん達はこれから来る模様。
準備しているコマンダーを横目に、待つ事30分。
先進国のお偉いさんが続々と入室する。もちろん、他の国の重鎮も参加している。ヨハネス大統領がオレを見付けて手を振ってくる。あの人は相変わらずだな。
コの字に置かれているテーブルとその後ろに数列置かれているテーブルに、ゾロゾロとおよそ100人近くの人間が席に着く。ここまで大人数の会議になるとは知らなかったオレは、隅っこで大人しくしている。
「コマンダー。早速始めようか」
ガブリエル大統領が進行を務める。
『承知した。今回集まってもらったのは、ある実験に成功したからだ』
そう言ってモニターにミカエラが惑星マザーでサイコキネシスを使ってトウテツを蹂躙する映像が流す。
オレ以外にオメガ因子に適正がある人間に驚いたのか、サイコキネシスを初めて見て驚いたのかは分からないが、感嘆の声がいくつも漏れていた。
『オメガ因子の適性者を人工的に増やす方法。彼女はその第一被験者だ』
言っている内容は非人道的だが、ミカエラからは特に何もしていないと聞いている。オレのそばにいたらその影響を受けるらしい。だからオレがこの場にいるのだろう。
おそらくだが、ユグドラシルから貰った世界樹の種が影響していると考えている。憶測だが。
『そしてこれが、この実験の集大成だ』
コマンダーが透明な容器をいくつも用意する。その中には麦茶の様な色の液体が入っていた。
へえ、いつの間にあんなものを用意していたのだろう。
「それを飲めばオメガ因子に適合して力を得られると?」
中国のトップ、学主席が問う。
『肯定。だが長い時間をかける必要がある。それとどのオメガ因子の適性を得られるかはまだデータが取れていない為不明だ』
「であれば我が国から多くの軍人を提供しよう」
『多くの人間にこれを渡すつもりはない。個人が持つにはあまりに強大な力だ。素行、人間性を含めてこちらで精査する予定だ』
中国人の多くをオメガ人間にしようとする学主席に、コマンダーが釘を刺す。
確かに、一個人が持つには強すぎる力だ。管理する為にも、無作為に適性者を増やすのは愚策だ。コマンダーの言う通り、この力を持つ人間は精査する必要がある。
学主席は舌打ちし、固く口を閉じた。
「それでコマンダー。それは一体何で出来ているんだ? オメガの血液かい?」
次はヨハネス大統領が問う。
『否定。これの原材料は、彼の体液だ』
オレを見て言うコマンダー。
「おい、オレの体液ってどういう事だ?」
それよりいつの間にオレの体液なんて採集していたんだ?
『君の部屋を用意した際、ある細工をした。君が排泄した尿が自動で集められる様に』
尿・・・。つまり小便だよな? という事はつまり・・・。
「あの液体ってオレの小便って事?」
『そうだ。アンモニアや老廃物を除去して殺菌、そしてフルーツの香りづけをしている。何も知らなければジュースだと思うだろう』
「だからってお前! オレに許可も取らずに他人に小便を飲ませようとするなよ!」
『何の為に君に部屋を与えたと思っている』
「お前に感謝したオレがバカだったよ! 誰も小便集められる為に部屋をもらったとは思わねぇよ!」
『考えが足りないな』
「コノヤロウ!」
今までは逃げ回れていたが、複数回に渡って施された改造手術、そしてオメガ因子を結合させて強くなったオレに、コマンダーを捕らえられないわけがない。
そのアダマンタイトで出来た不格好なボディを掴んで振り回すと、コマンダーの腕がオレの脳天をブッ叩く。
『ヤメロ。この摩訶不思議生物め』
「うるせぇ! この粗大ゴミが!」
コマンダーと取っ組み合いをしていると、ガブリエル大統領が大きな声で咳払いをした。
「そろそろいいかな?」
各国のお偉いさん100人に見られている事を思い出し、恥ずかしくなってコマンダーから離れるが、これから多数の人に小便を飲まれる事の方がよっぽど恥ずかしい。
「そもそもどうして彼の体液が原材料なんだい?」
オレ達がアホな事をし終わった後、再びヨハネス大統領が問う。
『彼のDNAを摂取する事で、オメガ因子に適性出来るようになる。その理由は不明だ。彼は我々でも理解できない不可思議な存在だ。おそらくはユグドラシルの加護が影響を他者に与えていると予測しているが、不確かな憶測だ』
「なるほど。今後の戦争は、彼がカギとなる訳だ」
やめてください。どうしてみんなオレにそんな責任重大な役目を任せようとするんだ・・・。
胃に穴が開きそうだ・・・。




