016.資格
オレはクーナさんの問いに素直に答えた。ユグドラシルが淡い光を放っていた事、クーナさんの髪が輝くのを見た事があるのを。するとクーナさんは、「やはりそうか」と言ってオレを抱きしめる。
「ケイジ、聞いてくれ。お前にはユグドラシルの加護を授かる資格がある」
「ユグドラシルの加護? ってことはオレも魔法を使えるんですか?」
オレまだ30歳になってないけど魔法使いになれるのか。なんてくだらない事を考えていると、オレの疑問にクーナさんは頷いた。
「どの魔法が使えるかは分からないが、可能性はある」
「え? 魔法って種類があるんですか?」
どの魔法が使えるか分からないと言うからには、魔法には種類があるという事だろうけど、と疑問を抱いた。そう言えばオレはまだ木の根を操って攻撃したり防御したりする魔法しか見ていなかった事を思い出す。オレにもあの植物を操作する魔法が使えるのかと期待してしまう。
「そうだ。大きく分けて魔法には2つある。今日実際に使った木や草を操る『調和魔法』、そして私達が前の戦場で使った戦術級超位魔法の様な光や炎といった元素を操る『精霊魔法』だ」
戦術級超位魔法は訓練生時代に、ミーティングで映像を見た事がある。前回の時はその光景を見る前に気絶してしまって自分の目で直接見る事は出来なかったが。精霊魔法の方が、オレ達地球人にはRPGによく出てくる分、分かりやすい。
どちらかと言うと調和魔法よりも精霊魔法を使ってみたい――
そんなオレの心の内を読み取ったのか、クーナさんにデコピンされる。
「こら。調和魔法より精霊魔法を使ってみたいって顔をしているぞ。全く、若いアールヴと言いどうしてみんな調和魔法よりも精霊魔法を好むというのだ」
「うっ。だ、だって調和魔法って地味だし・・・」
「確かに精霊魔法よりも派手さはないが、今日の戦いを見ていたら分かるだろう。調和魔法は汎用性が高く、短い詠唱で使う事ができる。実戦においては調和魔法の方が役に立つ機会が多いんだ」
クーナさんの言う通り、オレがブラックホールに吸い込まれそうになった時、調和魔法を使えていたら自分の身を守れていただろう。
「対して精霊魔法は高威力だが、2つ弱点がある。まず詠唱が長く、その間は動けない事。そして惑星マザーの様な自然が無く、ユグドラシルの加護が届かない場所では、更に詠唱が長くなってしまう事だ」
だから惑星マザーでの任務の時、1時間も詠唱していたのか。ただ、自然というか植物が一切ないという点では、惑星マザーでの調和魔法も弱体化してしまうのではないだろうか? それをクーナさんに聞いてみると、否定しなかった。
「惑星マザーの様な場所はあまりにも極端だが、地球上にある砂漠みたいな場所では確かに調和魔法は弱くなってしまう。ただ、それは対策のしようがある」
「対策?」
「ああ、これだ」
クーナさんは腰に付けていたポーチから、半透明の瓶を出す。その中には水と種が入っていた。
「こうやって植物を持ち歩けば、回数制限付きだが調和魔法を使う事が出来る。もちろんアールヴヘイムやユグドラシルのそばで使う時に比べたら弱くなってしまうが」
「なるほど」
そう考えると無機物での戦闘が主体のオートマタと植物での戦闘が主体のアールヴとでは、戦い方だけではなく、種族としての在り方の相性もとことん悪いのかもしれない。
――でも、オレも魔法が使える様になるのか。
自然と頬が緩む。そんなオレの顔を見てクーナさんは微笑みながら、またオレを抱きしめ、そのままベッドに倒れる様にお互い横になる。
「明日はユグドラシルの加護を授かりにまたアールヴヘイムへ行くぞ。だから今日はこのまま寝てしまおう」
「いや、オレ一人でも寝れますってば!」
「ダメだ。こんな広い部屋で一人なんて寂しいだろう? それに今日だって大変な目に遭ったんだから」
「だとしても毎度毎度こんな狭いベッドで一緒に寝なくてもぉ!」
ここにあるベッドはシングルサイズ程度だ。そんな狭いベッドで一緒に寝るとなると、かなり密着する必要がある。クーナさんはそんな事お構いなしと言わんばかりに腕も脚も蔦の様に巻き付けてくる。
「よいではないかよいではないか」
「どこからそんなネタ仕入れたの!?」
結局オレはされるがまま弄ばれ、オレの頭はクーナさんの腕の中にすっぽりと納まる。不思議な事に、クーナさんはものすごく力が強い。オレでは彼女の力に全く太刀打ちできない程に。
巻き付いた腕を引き剝がす事を諦め、聞こえてくる寝息と心音、そして人肌から感じる温もりが心地よく、オレも次第に意識を失っていった。




