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霹靂‐へきれき‐のシルト  作者:


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10/15

寝床


「ふぅ…助かったぜ」

小屋に向かうルツとアールの後ろ姿を見て、俺はホッとした。


クァズとサンディもそうだが、ルツとアールは付き合っている。クァズ達は夫婦って感じだが、ルツ達はゲームでいうところの『相方』っぽい。


ルツの方が束縛系で、アールはいろんな男に目移りするタイプで、ちょっとでも興味をもった奴には積極的に声をかける。だからルツは町に戻るとアールの側から片時も離れないでいる。俺にはあんな女の良さがちっともわからんがな。


アールが俺に興味を示したって事は、俺…相当痩せたんだな。確かにベルトの穴増やしたし、上着もぶかぶかになってきた。


今度町に帰ったら新しい服を買って、何か装備を買うか。俺は火が落ちかけた焚き火のところに行き、マジックボックスから薪を取り出すと火に焚べた。


『採集』か…もっと土魔法の事知っておけば良かったな。そういえばコーティングは念じたら勝手にガラスコーティングができたけど、あれも砂の中から『採集』したガラスを変化させてコーティングしたのか? 


それなら、採集はコーティングの上位互換か? うーむ、わからないことが多すぎる。


俺はマントにくるまって、あれこれ考えながら焚き火の前で膝を抱えた。



「…ふぅ」

賢者タイムが始まったクァズはゴロリと横になった。横には抱くには飽きた女が、甘ったるい芳香を纏わせて息を弾ませていた。


確かに年の割には豊満な胸でスタイルも良い。体の相性も悪くないが、知り尽くした身体の新鮮味はとっくに薄れている。


最近まだまだガキだと思っていたアールが時折見せる熟れる前の女の色香を、出し始めているのに気がついた。さっきの風呂上がりにすれ違った時に見たアールの細いうなじに、久しぶりにどきりとしていた。


ー初ものは色々気を使わないとあとが面倒だが、ルツでこなれてきているなら、色々楽しめるはずだ。予定変更して頃合いを見計らうか…。国の所属になると『風紀』ってやつが煩いらしいからな。金払わずやれる最後くらい楽しみてぇよな


クァズは起き上がると、横に置いていた酒瓶に手を伸ばした。



ーこの人…。またあのメスガキの事考えてるわね。…ったく、今回で終わりなのに何考えてんだか。

横たわったまま、酒瓶を口にしているクァズの横顔をサンディは息を整えながら薄目でみていた。


サンディとクァズはお互いそこそこのレベルで知り合い長く組んできた。戦いの中でもベッドの中でもクァズの癖をサンディはよく知っている。クァズが今までパーティを組んだ何人もの女達とよろしくやっていた事もだ。


クァズは他の女とよろしくやった後は、優しくサンディを抱く。落とす前はその相手を自分に重ねるのか抱き方がちょいと違うのだ。

それは長く同じ男と身体を重ねてきた女にしかわからない、ほんのちょっとした差異である。


最初の頃はクァズが他の女に目移りをしそうものなら、クァズに目を光らせ相手の女にもわかるように牽制をしていた。だが、それでパーティの雰囲気が悪くなり連携が取れなくなって解散を繰り返した。



冒険者パーティに死人はつきもの。ある討伐でパーティは半壊した時、生き残ったサンディは気がついた。討伐さえ果たせれば死んだメンバーが受け取るはずだった経験値が生き残ったメンバーに振られる事を。


そして、クァズを自分だけに引き留められる方法を思いついたのだ。


当時クァズは冒険者としての盛りだった。だが盛りであるにも関わらず、最近レベルアップが頭打ちになってきた事を悩むクァズに囁いた。

パーティでギリギリ倒せるダンジョンのフロアボスを討伐した際、不幸にしてメンバーが命を落とす事はよくある事じゃないか…と。


サンディの甘い囁きにクァズはのった。


最初の方は手の抜き具合がわからず、自分達も危ない目にもあったが悪運が強かったのか、なんとか生還できた。だが、死と隣り合わせの冒険者と言えど、何度も続けてクァズとサンディだけが生き残るのは不自然だ。


少しでも不審がられたらパーティを解散し、すぐにギルドを転々とした。

そういう用心深さからかギルドにも怪しまれることなく過ごしてきたが、盛りを過ぎ始めた頃今度は手頃なメンバーが集まらなくなった。


レベルの割には二人のバトルスキルが伴ってないのだ。経験の長い冒険者は、モンスターの動きだけでなく仲間の動きもよく見ている。数度一緒に討伐をすると相手から抜けると言われることが続いた。


そこでクァズは考えた。集めるメンバーを中堅から初心者に切り替え、ある程度育ててからフロアボスに連れていく方式にだ。


少し時間がかかるが、若い初心者は自分のレベルアップの為によく戦う。バトル中の自分達の負担が減りクァズとサンディはバトルスキルは落ちていったが、メンバーの適性や戦い方の癖を見抜く目、陥れる技術だけが養われていった。

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