ロボと奴隷
~土豆まる~
20代くらいの青年。
イラスト、小説、ゲームが趣味。
文章は丁寧に書き込むけど遠回りな表現は苦手。
小説の腕はアマチュアなので、優しく見守ってね...?
20XX年。3月。私は開発に成功した。
人型の、人間としての「意識」を持ったロボットを。
やったぞ、これを大量に製造販売すれば、私は...私は...!
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20XX年、4月。
人型の人間ロボを開発した私は、最終検査として
この春、彼女を学校に通わせることにした。
このスイッチを入れれば彼女は動き出し、
人間と同じように「自我」を持つことになる。
ボタンを押す手は震えていた。
...いや、私はこいつらで大儲けするんだ...!!
ポチッ。
ズズズ....
「んっ...んー....」
彼女は目を覚ますと人間のように目をこすって目の前を見る。
「やあやあ、ミノ!私はあなたの母のエイル。
早速だがアンタには明日から学校へ行ってもらう。」
目を覚ましてからの押し込むような情報量に困惑するミノ。
「ど、どういうことですか..?博...士?」
「おい、私は母さんだと言っただろ。」
「いいえ違います。あなたは博士です。」
「チッ...
まあ今はそれでいいけど、学校では絶対博士とか言うんじゃないぞ。」
「どうして...?博士は博士なのに...」
...しかしそれ以上エイルからの返答はなかった。
なんだか気まずい空気が流れる。
「あ、あの...!」
「お前ほんとに6年生かよ。」
「ろ、6...年生...?」
「ああ?こっちの話。
とにかくまずは学校に行く準備をしろ。ほら、これがカバンで.....」
エイルはそそくさとカバンを取ってきたり、
制服を準備したりしている。
その間、私は辺りを見渡した。
...研究所のような銀色で無機質な壁。
近くにはパソコンやら書類やらがたくさん散らかっている。
...そして私は画面の消えたモニターに映る自分を見て思う。
あれ。私はどうしてここにいるのだろう。
私はどうして言葉を理解できるのだろう...。
そんなことを脳裏に浮かべながら視線をゆっくり横へ移す。すると...
「...わっ?!びっくりした....」
視線の先、ほんの十センチほどの距離にエイルがいた。
「ふーん...驚きっぷりは悪くない、と...」
そう言ってニヤリと笑う。
「ほらよ、これがアンタの制服。一回着てみろ。」
「う、うん...」
...と言われるがまま、制服に着替えてみる。
ガサガサ...
「なんだ、案外似合ってんじゃん。」
「そ、そうでしょうか...」
私は照れた。
「まあこれなら誰がどう見ても小学生にしか見えんわな。」
えっ...小学生にしか...見えない...?
「それって...どういうことですか?」
私は照れる顔を元に戻して質問する。
「は?そのままのことだよ。お前は本来ロボットなんだから。」
「ロ、ロボット...?」
私は...ロボット...?
なぜ?こうして意識も、自我もあるのに...?
...するとエイルは再び十センチほどの距離にまで顔を近づけて言う。
「いいか?お前がロボットだってこと、絶っっ対、バラすんじゃないぞ....?」
顔が本気すぎて怖い。
「ち、近いですー、、そんなに近いと驚くじゃないですかー....」
私がそう言うとエイルは少しため息をついて私から離れ、
そしてまた話を続ける。
「...とにかく、万が一お前がロボットだとバレたら
この研究はすべてが水の泡なんだ。
それくらい成功と失敗は紙一重で.......」
長い話に私は正直飽きていた。
それに、聞いていてもよくわからなかった。
次に私が理解できたのはここからである。
「....だからつまり、お前がロボットだってバレることと、
学校側に目をつけられるようなことさえしなければあとは何をしたっていい。」
「何を...しても...」
「そう。友達をつくって遊ぶのもいいし、勉強に集中するのもいい。
1年間、卒業まで過ごせたらクリアだ。」
「な、なるほど...要約すると、
ロボットだとバレずに学校に通えばいいんですね...?」
「それさえ覚えとけばいい。
それじゃあ今日はもうそのくらいにして寝るぞ。おやすみ。」
「お、おやすみ、なさい...?」
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翌日。
私は生まれて2日目にして初の「学校」に行くことになった。
制服に身を包み、転校生というていで教室に訪れる。
そして早速、先生に紹介された。
「皆さん。静かに。はい、今日から1年間
みんなと一緒に暮らす転校生を紹介しますよ。自己紹介、できる?」
「は、はい...!えー...わ、私はミノって言います....」
「ミノ?苗字はなんて言うんだよー?」
「あ、えーっと....」
私は自分の名前は聞いた。けれど博士の苗字って.....?
問い詰められ、焦っていると先生が助け舟を出してくれた。
「こらこら。転校生を困らせないの。
...大丈夫よ、あとでゆっくり教えてあげなさい。」
「ちぇーっ。」
た、助かったー....帰ってから苗字を教えてもらわないと....
...そんな感じで、私は自分の役目を果たすため、
本物の「人間」と偽って学校生活を送る毎日が始まった...。
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「20XX年、4月8日。
奴隷ロボ001号、ミノ。最終試験のため学校に通いはじめる....っと」
ミノが学校に通っている間、エイルは[奴隷ロボ]の記録を記入していた。
どうして奴隷なのに命を与えたのか...
どうしてこんな計画に乗ったのか...
そう、すべては金と我欲のためである。
普通のロボットはボタンを押すだけで効率的に仕事をしてくれる。
しかし故障や操作ミスで誤作動を起こしたり使い方を間違えてケガをしたりと
使いこなせない人が多い。
そして何より「同じひとつの作業」しか行えない。
だけどこいつは違う。
全世界のありとあらゆる言語を瞬時に習得し、理解する。
そしてその理解した言語で命令に従い、行動する。
人としての意識など要らない。
...それならただ命令に従うだけのロボでよかったのでは?
私は知りたかったから...
人が、意識が、運命に抗えぬという絶望を、
知りたかったから......!!!
「博士、何を書いているのですか?」
「って、おい。帰ったなら言えよ。」
「ちゃんとただいま、って言いましたよ?」
「....そ、そうか...」
あまりにも熱中し過ぎて気がつかなかったのか。
「....奴隷、ロボ?最終...じっけ...」
「おい、それ以上読むな。その記憶をすべて消せ。」
「わ、わかり、ました.....」
ミノは小さく目を閉じた。
もう一度目を開けるときにはこの日記の記憶はないはずだ。
「あれ...?私は...」
「おかえり、ミノ。学校はどうだったか。」
「そうそう!博士、今日学校で自己紹介したんだけどー、私の苗字ってー...」
「中本。」
「中本...?」
私の本当の苗字などではない。
実験をしていることを隠すための偽名である。
「中本ミノ。やったあ、これで明日みんなに
ちゃんと自己紹介できるね!!ありがとう!」
「......」
「博士?」
エイルは何も言わず、その日記を片付けて部屋を出て行った...。
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翌日。今日もミノは学校に通う。
「4月9日。今日は友達ができたらしい。」
---さらに翌日。
「4月10日。今日ははじめての授業があった。」
---「4月11日。今日は.....」
-------------順調に実験は進み、転校してから1か月が過ぎていった日のこと....
「5月8日。学校に通いはじめて1か月。ゴールデンウイークが明けた。」
今日もいつものように記録を記入していると、ミノが帰ってきた。
「あれっ。どうした。まだ学校の時間.....」
...ところがミノを見た瞬間私は青ざめる。
「...おい、、頭が、、壊れてるじゃないか......!!」
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この日。
ミノはいつものように学校に行った。
キーンコーンカーンコーン....
「よっしゃー!休み時間だぜ!ドッジボールでもしようぜー!」
「行こ行こー!!」
クラスの男子たちが騒ぐ。
「ちょっと...まだ3限目が終わったところでしょ...」
彼女はクラスの委員長で私の友達の沙羅。
小学生ながら将来のことを考えている、しっかり者である。
中学は進学校に通い、大学を目指すんだって。
「まー、ほっとけばいいんじゃない?沙羅。
授業遅れても自業自得だし。」
彼女は沙羅の幼なじみの玲音。
真面目すぎる沙羅にちょっかいを出せる唯一の人だ。
「さて、次は移動教室だからもう移動しておきましょ。」
「そうだね。私も行く!」
こうして私と沙羅、玲音は次の授業のため教室を移動する。
「...あ、やべっ。次移動教室じゃん。遊んでたら間に合わなくね?!」
そんなことを耳にはさみながら、私たちは階段のところまで
差し掛かったそのとき...
ドンッ
「わ、わああ!!?」
「ミ、ミノ?!」
先ほどの男子が急に後ろを振り返って走ってきたもので、
私はそれに間に合わず衝突してしまった。
ガシャガシャ....!!
持っていた教科書たちが散らばる。
「ちょっと、大丈夫?」
「だ、大丈夫大丈夫....」
そうして私は立ち上がろうとしたとき....
私の足は、先ほどの衝撃で散らばった紙を勢い良く踏んでしまい....
「ミノ!!!!」
私の身体は下の階へ向かう階段に向かって振り落とされる。
その瞬間、私の時間はスローモーションになった。
(ああ...私...ここで死ぬんだ.....)
ドドドドドドドドド!!!!
(...あれ...痛....くない?)
そうか、私はロボットだから痛みは感じないのか...。
すると涙目になった沙羅が私の傍にやってくる。
「ミノ...!!ケガ....は.....」
そこまで言って言葉を失った彼女は、
大粒の涙をこぼしてしまう。
「噓...だろ.....」
沙羅の後ろからそっと近づいてきた玲音もショックを受ける。
...そう。私の頭の一部が破損し、ロボットであることがバレてしまったのだ。
すると下の階から先生たちがやってくる。
「何ですか、今の音は.....」
私はこれ以上騒ぎを広めたくなかったからなのか、
破損した部分を手で隠して下の階に逃げ、そのまま博士のいる研究所に
戻るのであった...。
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「なるほどな...」
ミノから過去の記憶データを読み取って、何があったのかを知るエイル。
「博士...私のミッションはもう失敗です...やめましょうよ、こんな悲しい実...」
「.....消せ....」
「...?」
「お前を落としたアイツを、消せ!!!」
「はい?」
博士からはとんでもないほどの怒りエネルギーを感じる。
まるで本性を表したモンスターのような強い殺気だ。
「い、嫌ですよ、そんな...」
「さっさと行ってこい!!!お前の正体を知ったやつも全員だ!!」
「わかり、ました...」
主である博士の命令は絶対。
そもそも私は命令に従うためにできたロボットなのだ...
破損した頭部は応急処置のみが施され、すぐに学校に送り返される。
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学校に戻ると、先ほどの事件がクラスに広まっていたのか、
教室で緊急の連絡が行われていた。
「えー、皆さん。落ち着いてください。ミノさんは....」
ガシャン!
先生が話している中、私は教室に突撃する。
「わ....わたしの....正体を知った奴は....み、みんな生きては返さない.....」
私の身体は主である博士の命令に従うため、
みんなに向かって殴りかかろうとしていた。
「きゃーー!!」
「うぎゃぁーー!!」
席を立ち、慌てふためるみんな。
「やめてよ....!どうしてなの....!」
沙羅は泣きながら私に訴えかける。
「私だってこんなことをしたいわけじゃない...!身体が、、勝手に....!」
すると私は、沙羅の顔に向かって殴りかかろうとしていた。
「や、やめてっ...!!」
沙羅が殴られそうになったそのとき、私は突然動きを止めた。
沙羅は恐る恐る顔を上げると、ミノはみんなと同じように泣いていたのである。
ガシャン!!
殴ろうとしていた右腕から力が抜け、私は一気に崩れ落ちる。
「嫌に...決まってるじゃ...ないですか........!!」
私は大きな声で泣いた。
ただただ泣いていた。
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最終的に、エイルは捕まった。
違法ロボットを生産し、裏ルートで販売しようとしていた罪である。
どうして捕まったのかって?
それはエイルの情報をすべて私が話したから。
実験のこと、計画のこと、奴隷ロボットのこと....
私には「意識」の他に、蓄積データベースというものがある。
そこから言語情報や記憶情報などを意識に取り出すことができるからだ。
エイルは捕まった。
そもそも最初からこの実験は失敗していた。
なぜならエイルは、「意識」が「命令」を破壊していたことに
気がつかなかったから...。
エイルは捕まった...
私は国に引き取られ、ロボット研究所の管理を任された。
私の「核」が壊れるその日まで...
はじめまして、土豆まるです。
クスッと笑える日常系作品を作りたくて、楽しみながら文章を書いています。
作品を投稿することは初めてなので気軽に見てもらえると嬉しいです(^^♪
少しでも楽しんでいただける作品を目指して作品を書いていきます、
どうかよろしくお願いいたします!