飛行
15人程の盗賊団の幹部がゾッドのテントに集まってきた。その中には母の話していた魔族が何人かいるようだ。リザードマン、サイクロプス、獣人など様々な種族がゾッドの下で働いているらしい。
ゾッドが今日の作戦に着いての説明を始めた。
「今夜責め落とすのは戦時中人間が使っていた城だ。
ここに、虎の団が居座ってるという情報が入った。 城の回りには魔法戦の際に使われた塹壕がある。
そのため索敵が非常にしにくい状況になってる。 」
そう言ったゾッドはニヤけた顔をして俺の方を向いてきた。
「こいつに城の様子を見てきてもらう。」
ゾッドがそう言うとサイクロプスの男が地面を蹴りあげ文句を言った。
「そんな餓鬼に仕事が務まるはずもない。お前この仕事 の重要性を理解してるのか?」
「おいおい、タイランお前はただ子供が戦争の道具にさ れるのが嫌なだけだろ?それにこいつは餓鬼じゃねぇ
自分で戦うと決めた戦死だ。」
おいおいそんなに俺を持ち上げるなよ
それに俺は戦士でも何でもねぇ
それしか選択肢がなかっただけだ
やはりゾッドのネジは少し外れている。自分の子供に何より3歳の俺を戦場に立たせるなんて
「それに俺はこの仕事の重要性を十分に理解している。
だからこそ1番安全な方法を取ろうとしてるんだ。」
「それに今回は価値の高いマジックアイテムをもたせるんだ死なせる気はねえよ」
「俺は意見を変えねぇ。文句があるやつはいねえよな?
おい、レイラのとこに行ってろ」
と言われ俺はテントを追い出されてしまった。
俺が飛べることが作戦の中に組み込まれて当たり前になってしまったが俺は未だに飛ぶことは出来ていない。
こうなったら、レイラから聞いた方法で行くしか無いかな…
レイラから聞いた話は崖から飛び降り死を感じる事で
肉体に刻まれた本能で飛べるようになるという事だ。
俺はこの話を聞いてレイラが本当に俺を愛してるのか
疑問に思っちまった。
俺は今夜責め落とす城を崖から眺めていた。
作戦は夜になってから始まる。
虎の団は地形上、夜に索敵をしに来るやつは居ないと信じ込むからだ。
そこに漬け込む。
翼族は夜目が非常にきくからだり
俺はゾッドから受けとった、マジックアイテム…現代で言うところのインカムの様なものを耳につけ崖のてっぺんまで登る。
俺は高所恐怖症などでは無いが、この高さになれば流石に恐怖を感じると思っていた。
しかし翼族の特性のせいか俺はあまり恐怖を感じなかった。
なんなら飛べるような感覚を持っていた。
俺は散歩に出かけるかのように崖から1歩を踏み出した。
全然トベねえじゃねえか
俺は恐ろしい勢いで崖の真下まで一直線に落ちていった。
レイラに言われた話が脳内にゆっくりと流れていく。
走馬灯の様にこの3年間いや、20年間の記憶が自分が飛ぶためにこの数秒間に駆け巡る。
俺はこの土壇場で飛ぶ感覚を手にした。
俺は地面との距離残り1m程まで落ちていた。
自分が今まで持っていなかった身体の器官を自由に動かせる感覚はなにならくすぐったいような気持ち悪いような感覚だった。
何より俺は空を飛ぶことが出来るようになった。