襲撃
俺が転生して1週間程がたったであろうか。
今の俺の状況が少しずつ分かっていった。
俺の新しい名前はデイビットというらしい。
母は俺の事をデーブと呼ぶので名前を知るのにもかなり時間がかかった。
母はレイラというらしい。白い髪を持った天使の様な女性だ。俺は髪色は似なかった用で俺の髪は真っ暗になっている。首元には船のアンカーの様な刺青が入っており見た目に沿わずやんちゃなタイプなのかもしれん。
母と俺は翼族という生まれつき翼を持った種族のようだ。母は普段マントを被り生活しているが翼がほぼ見えないことからかなりコンパクトにしまえるのが伺える。
また母は旅団に所属しているようだ。
馬で移動をしながらテントをはり生活をしている。
かなりの大所帯のようで見た限りでも150人ほどの人間で活動している。
父親はゾッドという黒い髪をオールバックにした悪人面のガタイのいい男だ。母は出産をしたばかりだと言うのにほとんどレイラの傍にいない。
この集団はいったい何をしているのだろうか。
そんなことを考えている内に突然前方から笛の音がなった。何やら何かが始まる合図だった様で、急いで何かを準備している。
ある男が馬車を連れてどんどん何かを渡していく。
どうやら弓や剣槍などを渡しているようだ。
(何が始まるってんだ…)
俺はこの世界がかなり文明的に遅れている事を知っていたので覚悟はしていたが、どうやら戦闘が始めるよだ。
多くの戦士が叫びながら武器を持ち走り突撃しているのが見える。火の矢を空に打ち始め、真っ赤に燃える森の煙が目に染みる。
レイラが俺を抱いてテントに入り小刻みに震え怯えているようだ。レイラは俺の顔を見てびっくりしているようだ。
まあそれもそうか、俺は生まれてから殆ど泣いていない。
もしかしたら病気かもなどと考えてしまっているのかもな。
考え事をしているととんでもない眠気が体を襲ってくる。赤ん坊の体というのは不便なものだと考える暇もなく俺は眠りについてしまった。
朝男の雄叫びと笛の音で目を覚ました。馬に乗り移動を開始するようだ。俺は母に抱き抱えられ馬に乗った。
どうやら先日弓を放っていた方向に向かっていくようだ。
進むにつれ森が焦げるような匂いと嗅いだことのない肉が焼けるような匂いがした。
馬が止まり母が降りた所で見た光景は惨劇と言えるものだった。
そこには村だったものが存在した。
そして村人であっただろう人間が丸焦げになって串刺しになっている。
俺はこの世界に転生し初めての涙を流した。
見れば見るほどに酷い光景だった。
生きている人間もいた。
しかし、そのエルフだと思われる種族には首輪が嵌められていた。
そして次々に熱を持った鉄棒を体に押し付けられ真っ赤に腫れ上がった。
そこには母の首元と同じ紋章が浮かび上がっていた。
この時俺は悟った。
俺が生まれたこの旅団は盗賊団だったのだと。
母が俺を産み悲しんでいた事も。