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「ねえ、今度の土曜日一緒に勉強しない?」
思わず箸を止めて鮎坂さんの表情を見る。
いつも通りの明るい表情の鮎坂さんがそこにはいて、特に深い意味がある訳ではないと察する。
「いいけど、バイトは?」と聞くと
「店長がテスト前だからって休みくれた!」
特に予定もなく、1人で勉強も捗らないだろうという事で一緒に勉強をすることにした。
家に帰ってから姉ちゃんに「ありがとう」と伝えると分かってましたという様にうんうんと頷く。
今週の土曜に一緒に勉強する事になったと伝えると「デートじゃん」と言われすぐに否定する。
「好きなんじゃないの?」
「違うよ」
姉ちゃんに言われてもあまりピンと来なかった。好きな事は好きなんだとそれはきっと恋愛感情ではなく、僕と一緒にいてくれる友達として好きという感情が正しいと思う。
今までにも人を好きになった事はあったけど鮎坂さんへの感情は過去のそれとは違った想いだと思う。
入浴などを済ませて自室へ戻りLINEを開くと鮎坂さんからな通知が入っている。
メッセージを開くと「土曜日どこでやるー?」と連絡がある。
「どこでもいいよ」
「そしたら、私のバイト先は?割と静かだし安くできるよ!」
「いいね、そうしよう」
そんな連絡を取り合い土曜日の予定が決まる。
土曜日になって、昼過ぎに学校の隣駅で集合してからバイト先だというカフェに入る。
「優香ちゃん彼氏かな?」
「違いますよ〜」
店員の方が鮎坂さんに声をかけて、先へと案内をしてくれる。
鮎坂さんがメロンソーダを頼んだのを見て僕も同じものをお願いする。
広めの席に案内してくれた事もあってお互いに教材を広げて勉強に取り組む、30分ほど経つと「疲れたー」と言って鮎坂さんが伸びをする。
「そういえばしずくくんは大学に行くの?」
聞かれた僕は「行きたいなって思ってるよそんなに難しいところには行けないけど」と伝える。
「いいなー私まだ迷ってるんだよねー」
「なんで?」
「親からは働いて欲しいって言われててそれもありかなとも思うし、でも大学生やってみたいじゃんーあとね本当はやりたい仕事もあるの!多分無理だけど!」
「なんの仕事?」
「カウンセラー!心理学勉強したいけど大学院まで行かなきゃだしそんなお金も頭もないしさ!でも大学生はやりたいなー」
「大学生って良いよね、姉ちゃん見ててもそう思う」
「お姉ちゃんいたんだ!確かにしずくくんお姉ちゃんいそうだわ!」
「そうかな」
「まあでもまずは定期試験だよねー」
そう言って再びノートに目をやったタイミングでお互いに勉強を再開する。
しばらくして今度は同じタイミングでペンを置き休憩をする。
「そういえば、暑くないの?」今度は僕から言葉を発した。
「あーなんか昔からなんだよねこっちの方が落ち着くんだよ。それと肌を見られるのがあまり好きじゃなくてさ!」
「そうなんだ。なんか頼む?」
「アイス食べたい!」
2人でアイスを頼み少しの休憩をまたする。
勉強と休憩を繰り返しながら気付けば夕方になっていたため、お会計をしてお店を出る。
「今日はありがとう」
「こちらこそ!今度は和馬も誘お!」
そう言いながら駅へと戻りそれぞれが帰路に着く。