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社交シーズン最初に国王陛下主催の宴があり、今回は私とシプリアン様の結婚式の日取りが発表される事になっています。
「次に、我が弟オーレリアンの娘ベネディクトと我が息子シプリアンとの結婚式の日取りを発表する」
宴の始まりに主催として挨拶をされた陛下がそう仰った直後、コランティーヌ様の肩を抱いたシプリアン様が進み出ました。
「お待ちください、父上! ベネディクトとは結婚出来ません!」
その言葉に、私は唖然としてしまいました。
「ベネディクトは、私の愛するコランティーヌに数々の嫌がらせをしました! そのような醜い行いをする女は、次期国王たる私の妃に相応しくないでしょう?!」
シプリアン様が数ヶ月前からコランティーヌ様とお付き合いしている事は知っておりましたが、嫌がらせをした覚えはありません。
お会いするのも久々です。
「王妃様! お気を確かに!」
その声に振り向けば、王妃殿下が侍女達に介抱されていました。
どうやら、シプリアン様の宣言に強い衝撃を受けて気が遠くなられたようです。
「シプリアン。一体、誰が其方を次期国王だなどと言ったのだ?」
「言われなくとも解る事です。私は国王の長男なのですから!」
返答を聞いて、陛下は頭痛を堪えるように顔を顰めました。
「最も魔力量が多い者が跡継ぎになる。魔力量が1100に満たない其方は王族ではいられないと、五年程前に説明したであろう?」
「……え? いや、だって、私は今も王族ではありませんか!」
「前例に倣い、王族と婚約させる事で、王族扱いと我等の元での養育が認められていたのだ。次期公爵の配偶者ならば、魔力量が1000以上あれば良いのだからな」
王族扱いされていたから、それ等の説明を忘れてしまったのでしょうか?
「そ、そんな……」
「魔力量だけが王の素質ではないと思います! 能力で判断してくださいませ!」
コランティーヌ様が、陛下を責めるようにそう仰いました。
王都と直轄領を守る魔法陣が、魔力量1100以上ないと起動しない事をご存じ無いのでしょうか?
公爵領を守る魔法陣の起動に魔力量1000以上必要だと教わっていれば、判るでしょうに。
……アランブール公爵が、教えていないのかもしれません。
跡継ぎは、婿養子を取るおつもりでしょうから。
「五年程前の重要な話を覚えていない程度の能力をか?」
「え、あの、それは……。べ、勉強とか」
即座に切り返されたコランティーヌ様は、王に求められる能力をご存じない様で、狼狽えました。
「重要な話を覚えていられない者に勉学が身に付いているとは、とても思えんな」
「う……。じ、人望なら」
「シプリアンに人望があるとは、初耳だ。王都を守る魔法陣を起動出来ない者を、誰が次期国王にと推しているのだ?」
そう問われたコランティーヌ様は、答える事が出来ませんでした。
「話にならんな。……シプリアン。其方の望み通り、ベネディクトとの婚約解消を認める。コランティーヌとの結婚も認めるので、即刻城を出て、アランブール公爵家へ去るが良い!」