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 (わたくし)は、ベネディクト。

 アランブール公爵家の長女です。

 今日は、十歳になった私の魔力量を調べる為に、城から測定をする文官が二名やって来ました。

 魔力量を数値で表示する魔導具を腕に巻き付け、測定されました。

 念の為に、二回測るのだそうです。


「ベネディクト様の魔力量は、1199でございます」


 貴族の位は魔力量で決まっていて、男爵が400以上・子爵が600以上・伯爵が800以上・侯爵が900以上・公爵が1000以上・王族が1100以上だそうです。

 因みに、魔力量が200以上ある平民は準男爵の称号を得る事が出来、400以上が三代続けば、魔力量に応じた爵位を得て貴族になれるそうです。


「1199だと?! 何と言う事だ! 魔力量1200以上を誇るアランブール公爵に、其方は相応しくない! 即刻立ち去れ!」


 お父様が酷い剣幕でそう怒鳴ったので、私は驚きました。

 愛されていない事は理解しておりましたけれど、城の文官の前でこのような言動を取るなんて、宜しいのでしょうか?

 1100が王族と認められる最低ラインです。

 それを上回っているのに公爵家に相応しくないだなんて、王族への不敬にならないのでしょうか?


「アランブール公爵。養子先も用意せずに何を」

「其方等が勝手に決めれば良い! 不愉快だ!」


 文官達は顔を見合わせ、これ以上言っても無駄だと思われたのか、私を促して退出しました。




 王城に連れて来て頂いた私は、陛下に謁見する事になりました。


「全く、あの男は……」


 文官達から事情をお聞きになられた陛下は、溜息を吐かれました。


「申し訳ございません。父は、先代に決められた結婚に不満を持ち、母が産んだ私を嫌っておりますので……」

「それは知っていたが……」


 陛下は頭が痛いのか、手で押さえられました。

 陛下とお父様は従兄弟で、先代公爵夫人であるおばあ様が先王陛下の妹なのだそうです。


「魔力量が足りずに養子に出すならば、当主が養子先を探す事になっている。それを知っているだろうに、魔力量が十分な者を養子先も決めずに追い出すなどと」

「この場合、何方(どなた)が養子先を探してくださる事になるのでしょうか?」

「私だ」


 お父様は、私憎さに陛下にご迷惑をおかけになるのですか。


「御面倒をおかけします」

「良い。……そうだな。オーレリアンを呼べ」



「お呼びと伺いました。兄上」


 陛下がお呼びしたのは、王弟殿下でいらっしゃいました。


「うむ。……オーレリアン。彼女は、ベネディクト。アランブール公爵家の娘だった」


 陛下はオーレリアン様に、私を紹介してくださいました。


「ベネディクト。我が弟ヴォーボワール公爵オーレリアンだ」

「其方がバンジャマンの娘か。アランブール公爵家の娘『だった』とは?」

「お初にお目にかかります。お会い出来て光栄で御座います。実は、先程、魔力量が1200に満たないとアランブール公爵家を追放されました」


 公爵殿下は、驚いた様子で陛下に顔を向けられました。


「驚くのも無理は無いが、間違いない。あやつは昔からアランブール公爵家の魔力量に拘りが強かったからな」

「その割には、恋人関係から後妻となった現公爵夫人の魔力量は、1100にも満たないようですが」


 お母様が亡くなられて直ぐに再婚した義母は、私と亡きお母様を大層嫌っております。

 お父様と彼女は私を冷遇し、異母妹ばかり可愛がっておりました。

 幼い頃は妹が羨ましくて堪りませんでしたが、もう慣れました。

 冷遇されていたとは言っても、ちゃんとした教師も付けられておりましたし、使用人達に虐めを命じていた訳でもありませんもの。

 使用人達も勝手な忖度で私に嫌がらせする事無く、余所余所しい程度の態度に留めて接してくれましたし。


「愛する者だけは例外なのだろう。そんな事より、ベネディクトだ」


 お二人は、私に目を向けられました。


「養子に出す場合、魔力が足りないと言う理由が殆どだ。だが、ベネディクトは違う」

「幾らなのですか?」

「1199だそうだ」


 お父様が私を嫌っている事を考えると、私の魔力量が1200に足りない事は、きっと喜ばしい事の筈です。

 それなのに怒っていらっしゃったのは、何故でしょう?

 お父様は、嬉しい時に怒りを感じるのでしょうか?


「そこで、其方の養女にしようと思う」

「私の養女にですか?」

「王家の血を引いておるし、王族として認められる魔力量なのだから、問題は無かろう?」


 公爵殿下は私を見詰め、考え込まれました。


「確かにそうですね。私の養女にしましょう」


 まさか、私が王族になるとは思いませんでした。

 他の公爵家に引き取られるとばかり思っていたからです。




 養子縁組を終え、私はオーレリアン殿下のヴォーボワール公爵領の城へ移りました。

 我が国では、陛下の甥や姪も王子・王女の称号を得るそうなので、私も王女の称号を賜りました。


「ベネディクトは、王侯貴族の最も重要な役目を知っているか?」

「いいえ。習っておりません」

「そうか。最も重要な役目とは、領地の市町村を魔物から守る事だ。その為に魔力が必要なのだ」


 各領地の城に魔法陣が在り、それに魔力を込めると領地内の市町村を守る結界が起動するそうです。

 魔法陣を創った方は、偉大ですね。

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