表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ダブり集

不愉快な手紙

作者: 神村 律子

 私はそれなりに名の通った小説家である。


 自分で言うのも可笑しなものだが、ベストセラーも何冊もあり、所謂「流行作家」の一人だ。


 毎日いくつもの連載の締め切りに追われ、忙しく過ごしている。


 そんな私を癒してくれるのが読者からの手紙だ。


 何よりの励みになり、創作意欲を刺激してくれる、ありがたいものだ。


 その中に一通辛辣な文面のものがあるのに気づき、目を通した。 




 初めてお便りいたします。


 昨今の貴殿のご活躍、テレビや新聞、雑誌などでお見かけしております。


 私には貴方の作品のどこにそれほどの魅力があるのか、全く理解不能です。


 文章は稚拙、内容は二番煎じか、実際にあった事件の焼き直し。


 読者の皆さんの知能を疑うほど、お粗末なものばかりです。


 私なら、もっと面白くてドキドキする話が書けます。


 貴方がプロの作家として生活できているのなら、私にもできますよ。


 そのくらい貴方の小説は低レベルです。


 ある意味同情します。


 貴方は実力もないのに祭り上げられてしまった「神輿」ですからね。


 非常にお気の毒です。


 ではまた。



 

 私は手紙を読み終えて溜息を吐いた。



 後ろからその様子を見ていたある出版社の編集者が声をかけた。


「凄い内容ですね」


「ええ」


 私は悲しい顔をして編集者を見た。


「あのですね」


 編集者は何か言おうとして躊躇しているようだったので、私は、


「何か言いたい事があるのなら率直に言って下さい」


と真顔で言った。すると編集者は私を哀れむように見て、


「そんな手紙を自分に出して楽しいですか、先生?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白いオチですが、編集者はなぜ「自分で」ってわかったんでしょうか。 その過程が疑問に感じました。 とりあえず、この作家さんが「ドM」なのは間違いないようですねw 次作も楽しみにしています。…
2010/12/15 21:41 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ