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94話 クロイツの動乱

 レガイアから姿を消したレイは、クロイツ王国首都フェルークへと送られた。

 何もない場所からレイの姿が現れると、2人の兵士がレイに槍を向けていた。辺りを見渡すと、どうやらフェルークにある城の入り口に立っているようだ。


 兵士達はいきなり現れたレイを明らかに不審がっている。


「サリアの奴・・・目立たない場所にと言ってあったのに・・・」


「何だ! コイツは!? いきなり姿を現しやがった!?」


「怪しい奴だ! 捉えて牢にでも入れておこう!」


 兵士達が槍を向けながら、ジリジリとレイに近付いて来る。


「驚かせてすまなかったな。ちょっと色々あってな。クロイツ王から指名依頼を受けた傭兵だ。レイ・アストラルが来たと王に伝えてくれれば分かると思う」


「ちょっと待ってろよ! 今聞いて来るから、お前はここを動くんじゃないぞ!?」


 兵士の1人が城の中へ入って行った。もう1人の兵士は相変わらずレイに槍を突き付けたままだ。

 暫くすると、中に入って行った兵士が走りながら戻って来た。余程急いで戻って来たのか、かなり息を切らしている。


「はぁ、はぁ、はあ、お、お待たせしました・・・陛下が早急にお会いしたいとのことです。謁見の間はお分かりになられますか?」


「ああ。何度か行ったことがあるからな」


「謁見の間にて陛下がお待ちになっていますので、そちらへお願いします。おい。お前は槍を退けないか! 陛下の客人の方だぞ」


 兵士に言われ、槍を向けていた兵士は急いで槍を引き下げた。


「失礼致しました!」


「いきなり知らない人間の姿が現れたら、ああなって当然だ。気にしなくていい。それでは俺はクロイツ王の所へ向かわせて貰うぞ」


 レイは城の中へ入ると、クロイツ王の待つ謁見の間へと向かった。普段、王が他国の人間と接触をする時や、貴族や部下からの訴え等を聞く時は全てこの部屋で行われる。


 部屋の前まで着くと入り口の扉を軽くノックした。


「陛下。レイ・アストラルです。中に入っても宜しいでしょうか?」


「おぉ、レイ。来てくれたか! もちろんだ。部屋の中へ入って来てくれ」


 王に呼ばれ部屋の中に入ると、奥には玉座が置かれていてクロイツ王が玉座に腰掛けている。部屋の入り口を少し進んだ場所から玉座の前までは、赤色で枠の部分だけが黄色くなっている絨毯が引かれている。


 王の右隣にはロゴスとメルンが立っていて、左隣には文官の格好をした40代前半くらいで、身長170㎝前後。頭には四角い帽子を被り黒縁の眼鏡を掛けた男が立っている。


「レイさん。お久し振りです」


 メルンがレイに挨拶をしたが、何か悩みでもあるのか以前の様な明るさはなかった。


「その節は世話になったな。操られていた私を止めてくれて感謝をする」


 ロゴスはレイに頭を下げた。自ら牢に閉じこもっていると言う話だったが、出て来て職務に戻っているようだ。


「もう大丈夫なようだな? それで陛下? 今回の私への指名依頼の捕縛対象とは、リデウス王子のことでしょうか?」


「リデウスを捉えられれば1番良いが、流石にそれは厳しいだろう・・・リデウスがフェルークに対して、兵を起こした話しは知っておるか?」


「いえ。私は先程までアルクレストに滞在していましたので・・・」


「なるほど・・・兵士が突然、お前が現れたと言っておったのは時空魔法のせいか?」


「仰る通りでございます」


「ふむ・・・」


 王は何かを考えているようだ。やはり時空魔法を使っての国境越えとなると、色々と問題が出て来るのだろう。


「ゼノン殿にはジェリドの家族のことでも世話になったし、お主がここに来たのは私の依頼を受ける為であるからな。今回は不問にしておこう。それで依頼なのだが、お主にはドゥーラの捕縛を頼みたいのだ」


 ドゥーラと言えば、メルン王子に呪術を掛けたり、ロゴスに魔法を掛けてメルンを狙わせた疑いが持たれている呪術師だ。


「なぜ、ドゥーラを?」


「お主はハーランド侯爵の所で、ティゴールという男を切ったそうだな?]


「はい。ハーランド侯爵に害をなさんとしたので切りました。致命傷になる傷を負っても動いていたので、普通の状態ではなかったようです」


「そこなのだ。ドゥーラが1000人の兵士を連れて、西にあるナバル砦に攻めて来たのだが、1000人の兵士に砦の兵士3000人が全滅させられた。辛うじて逃げて来た兵士の話を聞くと、敵の兵は胸を刺しても動きが止まることはなかったらしい・・・」


〖ナバル砦〗フェルークの西にある砦で、攻め込まれるまでは3000人の兵士が駐留していた。


「陛下は、ドゥーラが魔法を使い兵士に特殊な力を与えていると?」


「ティゴールの話を聞くと、そう考えるのが妥当な気がしてな・・・敵の兵が全てそんな兵であれば、多少の兵力差では話しにならん。また、それ以外にも人を操る魔法があると言うだけで、味方への不信感が拭い去れないまま戦うことになる。そんな状態が指揮に及ぼす影響は計り知れないものとなろう」


「そうですね・・・もしかしたら、今私にもその魔法が掛けられているかも知れませんしね・・・」


 メルンが不安そうにしている。確かに、発動条件などが指定出来るのであれば、この城の誰が魔法に掛かっていてもおかしくない状況ではあった。


「どうだレイ? やってはくれぬか? そんな兵士が1000人もいる砦に行かせるのは、無茶な頼みではあるが、逆にお主にしか出来ないことでもある」


「ドゥーラの捕縛が困難な場合は、その場で切っても良いと言うことですよね?」


「あぁ、構わん。ドゥーラがリデウスの軍からいなくなるのであれば、どんな形だろうと問題はない」


 ドゥーラと言う妖しげな呪術師の存在にレイは少し考えたが、結局傭兵であるレイの選択肢は1つだった。


「わかりました。その依頼受けさせて頂きます」


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