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49話 御者再び

「どうやら、あちらの方で何かあったようですね!? 行ってみましょう!」


 メルンにそう言われて4人は騒ぎの元へと向かった。そこには1人の男が倒れていて、その男を囲うように3人の男が立っていた。


「嘘を言うんじゃねーよ! タイガーファングの群れが、こんなシーラスの近くなんかにいる筈がないだろう!」


「嘘じゃないよ! 西の岩場で本当に見たんだ! パッと見ただけだけど10匹近くはいた! 直ぐに討伐依頼を出さないとシーラスが襲われたら大変なことになる!」


〖タイガーファング〗ギルド指定ランクB 体長2m程の虎の姿をしたモンスターで鋭い牙と爪で人を襲う。普段はあまり群れをなすことはないが、群れをなすと危険度が上がりギルドの指定ランクもAへと上がる。


「本当にそんな数のタイガーファングがいたら、もうこの待ちは終わりだ! ギルドに依頼なんか出してる時間がある訳ないだろう!」


「嘘ばかりついてるんじゃねーよ!」


「うっ、ううっ・・・」


 男は取り囲まれていた内の1人に腹を蹴られ、うずくまりながら腹を押さえている。


「行こうぜー。こんな嘘つきに関わってたら日が暮れちまう」


「そうだなー」


 そう言うと男を取り囲んでいた連中は何処かへと消えていった。男が取り囲まれているのを街の人間も見ていた筈だが、触らぬ神に祟りなしといった感じで誰1人声を掛ける者はいなかった。


 レイは倒れている男に近付くと声を掛けた。


「タイガーファングの群れがいたと言うのは本当か?」


「あっ、ああ。本当です! 貴方は信じてくれるんですか?」


「確かにこんな場所にタイガーファングがいるとは信じがたいことだが、わざわざそんな嘘をつく意味がないからな」


 タイガーファングは肉食モンスターだが、普段は森や草原など木々が茂っている場所に生息する。


「あれは間違えなくタイガーファングでした! 恐くて直ぐに逃げて来たから、何をしてたかまでは分からないけど・・・」


「メルン様。如何致しますか?」


 レイはメルンに判断を委ねた。


「本当にタイガーファングだとしたら奴らは肉食です。放っておいたら辺りの人達が大変なことになります。私達で調査に行きましょう」


「いや。メルン様は危険なので、シーラスでお待ちになって頂ければと思います」


「今回は私も行きます! いつもレイさんに任せているだけでは駄目だと思いますので」


「・・・わかりました」


 レイはメルンに何を言っても聞いてもらえないだろうと判断し、メルンも同行させることにした。ディアスとセリーヌに護衛を集中させ、その間に自分がタイガーファングを仕留めれば良いかと考えたからだ。


「それで、そのタイガーファングがいたという岩場はどこにあるんだ?」


「ここから西にある岩場の所です! 馬車なら20分くらい走れば着きます」


「わかった。俺達が行って見て来るから、お前はそれまで大人しくしていろ。またタイガーファングがいたと騒いだら街がパニックになる可能性もあるからな」


「分かりました・・・」


 レイ達は男と分かれ、タイガーファングがいるとされる岩場に向かうべく馬車へと向かっていた。


「本当にこんなところにタイガーファングがいると思うか? それも群れをなして」


 ディアスはレイに質問をした。


「分からん。だが、あの男が嘘を言っているようには見えないし、嘘を言う理由もない。確認してみていないならいないで、それに越したことはないだろう」


 レイ達が街の入り口へ戻ると、入り口には先程いた兵士が立っていた。


「おや? 兄さん達はさっき来たばかりだろう? 今からどこかに行くのかい? それとも俺とマリッサ様について熱く語りたくなったのかい!?」


 男は熱狂的なマリッサ信者のようだ。レイがマリッサを抱き抱えたと知ったら、何をされるか分かったものではない。


「いや。今から少し西の岩場に行こうと思ってな」


「あんな所に何をしに行くんだ? あんな所に行っても何もないぞ?」


 兵士は不思議そうな顔をしている。兵士にタイガーファングの話を言う訳にもいかないだろう。


「4人でピクニックだ。天気も良いことだしな」


 空はもう夕暮れ時になっている。こんな時間からピクニックに行く人間などいないだろう。


「ワッハッハ! 面白いことを言う兄さんだな! まぁいい。もう直ぐ完全に日も落ちて暗くなる。出掛けるなら気をつけてな!」


 4人は兵士と分かれ馬車の止めてある場所へと向かった。馬車へ着くと御者が金を数えながらニタニタとしていた。


「おい」


「うわぁ!」


 いきなりレイに声を掛けられた御者は驚きで飛び上がった。


「こ、こんな時間に一体どうしたんですか!?」


 御者は数えていた金を必死にレイ達が見えない所へ隠した。


「喜べ。いきなりモンスターの素材が手に入るかも知れんぞ?」


「本当ですか!?」


 御者は目の色を輝かせている。まるで目にお金のマークでも付いているようだ。


「しかもタイガーファングだ。良かったな」


 タイガーファングの素材は牙、爪、毛皮などが売れる。中でも毛皮は人気が高く、そこそこ高い値段で売ることが出来る。


「早速行きましょう! 今直ぐに行きましょう!」


 御者は直ぐにでも出発が出来る準備をした。


「あれ? 今回はメルン様達も行くんですか?」


「ああ、そうだよ。宜しく頼む。馬車を西にある岩場へと向かわせてくれ」


「わかりました!」


 4人が馬車に乗るのを確認した御者はすかさず馬車を発車させた。

 明らかにいつもよりも馬車のスピードが速い気がする。15分程経過すると馬車は岩場へと到達をした。


「どうやらあの男の言っていたことは本当だったようだな」


 岩場には9匹のタイガーファングが集まっていた。


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