39話 右か左か
2人は茂みを抜け出ると洞窟の前へと移動した。周りに人の気配はない。全員洞窟の中にいるのだろうか。
洞窟の入り口はかなり狭く、人2人が通れるのがやっとの広さだった。
「少し待っていてろ」
『気配察知』
レイは気配察知を使った。洞窟内はそれ程広い範囲ではないため、SPの消費も少なく済むのだろう。
「中には100人近くの盗賊がいるな・・・強い反応が2つ。その内1つは、かなり強い反応だ。その強い反応の近くに弱い反応が1つ。おそらくこれがクルトだろう」
「クルトは無事なのか!?」
「今のところは何もされていないようだ」
「はぁー、良かったぁ」
マリッサはホッと胸をなで下ろした。
「さてと、どうするかな・・・奴らの気配からの察知のみなので、確実とは言えないが洞窟の中は大きく2つの道に分かれているようだ。道が奥で繋がっていれば良いのだが、繋がってない場合は、おそらくどちらかの道からしかクルトのいる所には行けないだろう。どちらかの道から攻めるか・・・もしくは両方一気に攻めるか・・・」
「奴らがクルトを人質にする可能性はないのだろうか?」
「その可能性は大いにあると思う。だが、それに関しては俺に考えがある。俺が何をしようとお前は俺を信じろ」
「わ、わかった」
マリッサはレイに全てを託すと決めていた。あの戦闘でマリッサの中でレイへの認識が変わったからだ。傭兵とは所詮金の為だけに動く人間。マリッサは今までずっとそう思っていた。だがレイと戦い、レイを知ることで、レイに引かれつつある自分がいることに気付いた。レイならきっと何とかしてくれる。そう思わせてくれる存在になっていた。
「ここは二手に別れよう。片側に60、片側に30、奥に7と分かれている可能性が高い。俺が60の方を殺る
。お前は30人を倒すことが出来るか?」
「もちろんだ。これでも聖騎士の称号を持つ者だ。それくらい出来なくてどうする!」
「よし、ではその手筈で行こう。ただ、お前の道だけがクルトの場所に通じていた場合は、クルトには近付かず俺が行くまで待つんだ。クルトの近くにいる相手はお前よりも格上だ」
「わかった・・・悔しいが、クルトの命が懸かっている以上ここは慎重に行くべきだろうな・・・」
「では中へ入るぞ」
2人は洞窟の中へと入った。中は壁や床についている植物のようなものが光を放っており、洞窟全体を明るく照らしている。これなら何もなくても先へ進むことが出来そうだ。壁はかなり脆そうで、ときおりパラパラと石のような物が降ってくる。
洞窟の状況を見てマリッサがレイに言った。
「これはかなり脆そうだな。強力なスキルや魔法を使ったら簡単に崩れ落ちそうだ」
「そうだな。特にお前は気を付けろよ」
「何だと!? まるで私が何も考えずに戦っているようではないか!?」
「実際に肝心なことは何も考えてないだろう? 俺に勝ってクルトを助けに行くつもりでユニークスキルを使ったようだが、あそこで勝っていたらどうした? あんな身体で助けに行ける訳がないだろう」
「そ、それは・・・」
正論を指され、ぐうの音も出なかった。
「だが、その真っ直ぐなところがお前の良いところかも知れん。俺は嫌いではないぞ」
「や、止めてくれ。照れるではないか・・・」
マリッサは頬を赤くして照れている。
「着いたぞ」
レイがそう言うと目の前で洞窟が二手に分かれていた。右奥へ行く道と左奥へ行く道だ。思っていたよりも早く道が分かれていたため、片方が外れだった場合は合流までに結構な時間を使いそうだ。
「マリッサ、お前が左の道だ。くれぐれもさっきの言葉を忘れるなよ?」
「わかっている!」
レイとマリッサはそれぞれが別の道へと進んで行った。右の道へ入り暫く歩くと盗賊達の集団に出くわした。
「あん!? なんだテメーは!? ここをガスティ盗賊・・・・グハッ!」
レイは盗賊の一人が喋り終わるより先に切った。
「テメェー! よくも仲間を! みんな! アイツをぶち殺すぞ!」
「オォー!」
盗賊達が一斉に襲い掛かってきた。レイは盗賊の攻撃を避けては切り、避けては切りと繰り返し続けた。
「ぐぁぁぁ!」「うがっ!」「がはっ!」
20人近くはいた盗賊達を一瞬で全滅させたのだった。その後もレイは奥に進み盗賊達と遭遇する度に戦闘を繰り返し、50人以上を倒した頃だった。
「どうやらこちらの道ではなさそうだな。流石に奥に来すぎている。気配察知からいけば、とっくにクルトがいる場所に着いていなくてはいけない筈だ。戻るとするか・・・だが、その前に」
『真空波!』
「はっ! はぁっ!」
レイは3つのかまいたちを作り出し洞窟の奥へと放った。
「ぎゃぁぁぁ!」「ぐぁぁぁ!」「ぐおっ!」
奥から多数の盗賊達の叫び声が聞こえきた。数秒経つと完全に声は聞こえなくなり、辺りは静けさに包まれた。
「これでこっちの60人は終わったな。後はマリッサの方だが・・・アイツが自重してくれていると良いのだが・・・」
~一方その頃マリッサは~
「はぁ、はぁ、はぁ、これで後10人か。私もアイツに笑われないような戦いをしなくては・・・」
レイと離れたマリッサの方も盗賊達との戦闘を繰り返していた。




