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37話 パラディンズプライド

「まだまだぁー!」


 マリッサは剣を構えレイに近付くと、大きく上空へと飛び上がり剣を掲げた。


『バーンフレイム!』


 炎がレイの足元から噴き出してレイを襲う。


「無詠唱の中級魔法か? さっきの魔法師などよりもよっぽどやるじゃないか?」


 レイは炎を避ける為に斜め後方へと飛び上がった。その瞬間を待っていたかのようにマリッサが動いた。


「そう動くと思っていたぞ!」

『真空波!』


 レイが後方に飛び、着地する瞬間を狙ってマリッサは真空波を放った。マリッサの放ったかまいたちが真っ直ぐにレイの着地地点に飛んで行った。


『疾風』


 レイは地面に着地することなく宙を駆けた。


「バカな! 宙を駆けるだと・・・?」


「惜しかったな。狙いは悪くはなかったが俺には当たらないようだ」


 マリッサにとって、これ程の実力差がある相手との戦闘は初めての経験だった。何をしても攻撃が当たらない。今までどんな実力者と戦ってもこんなことは一度もなく、マリッサ自身どうしていいのかが分からなかった。


「私は・・・負ける・・・のか・・・」

(奴は剣すら抜いていない・・・そんな相手に負けると言うのか? 私が・・・)


「そんなのは絶対に嫌だぁぁぁぁぁぁ!!!」


 マリッサの身体が白く輝きだした。


「!? よせ! マリッサ!!」


 ハーランドがマリッサに向けて叫んだ。


『聖騎士の誇り!』


 マリッサの身体が激しく輝き出したかと思えば、その光はマリッサの身体の中へと入るように消えていった。


「貴様は・・・いやレイよ。お前は強い! 私よりも遥かにな! だが、私も負ける訳にはいかない! 私には騎士の誇りがある!」


「私の全てを出し切り全力で行かせてもらう!」


 マリッサは剣を構えた。先程までのマリッサとは雰囲気が違うようだ。


「来い。お前の全力とやらを見極めさせてもらおう」


 「いざ! 参る!」


 マリッサは一気にレイに近付き、レイの頭上より剣を振り下ろした。


 レイはマリッサの剣を横に避けた。レイが避けたと同時にマリッサは剣を横に切り返した。


 その剣をしゃがみ込み避けた。マリッサは更に剣を切り返した。


 更にその剣をレイは飛び上がり避けた。マリッサは休むことなくひたすら攻撃を続けた。レイはその攻撃を避け続けている。そんな攻防が数分間に渡り繰り広げられた。


「はぁー、はぁー、はぁー」


 マリッサの消耗は激しかった。呼吸は乱れ肩で息をしている。


「今までとはパワーもスピードも遥かに増している。先程のスキルのせいか? たが、それだけ身体の能力を上げられるスキルが、何のデメリットもなく使えるとは思えないのだがな」


「全ては貴方に勝つ為だ! 次の攻撃に私の全てを懸けて貴方に届かせてみせる!」


「良いだろう。見せてみろ」


 マリッサは剣を真っ直ぐに突き出し、正面からレイに突っ込んだ。


「やぁぁぁぁ!!」


 更にマリッサの速度が増した。今までのどの攻撃よりも速い攻撃。


 しかしレイには届かなかった。マリッサの全てを懸けた攻撃をレイは難なく避けてしまった。


「と、届かなかったか・・・うっ、ううっ、くううっ!!」


 マリッサが突如苦しみだした。右手に握っていた剣を地面に落とすと、自らも地面に崩れさってしまった。


「くっ、くぅぅぅ・・・」


「マリッサ!」


 ハーランド侯爵がマリッサの名前を呼び駆け寄った。


「あれ程聖騎士の誇りを使うことは禁じたではないか! 父親に娘の苦しんでる姿を見せるものではない!」


〖聖騎士の誇り〗マリッサが聖騎士になった後に突如使用出来るようになったユニークスキル。

全能力を10分間だけ倍にすることが出来るが、スキルが切れると30分の間身体が耐え難い激痛に襲われる。


「申し訳ございません・・・お父様・・・でも、私は、この男に勝ちたかったんです・・・」


「マリッサ・・・」

 

 ハーランド侯爵が涙を流しそうになっている。娘が激痛に襲われている姿など見るに堪えないのだろう。


「マリッサ!」


 メルンもマリッサに近付くと彼女の手を握りしめている。


「メルン様・・・」


 しんみりとする中、レイが口を開いた。


「これはスキルの影響によるものか?」


「ああ、そうだ・・・マリッサの聖騎士の誇りは、使えば能力を10分間だけ2倍に引き上げてくれるが、効力が切れると3倍の時間地獄の苦しみを味わうことになるのだ・・・」


 ハーランドは俯きながらレイに説明をした。


「そういうことか。だったら良い方法がある」


 レイはマリッサに近付き手をかざした。


『感覚千消!』


 レイの手が赤く光ると、赤い光はマリッサの身体を包み込んでマリッサの中へと消えた。


「お主、一体何を?」


「い・・痛みがなくなった・・・」


 マリッサは驚いている。あれ程の苦痛が今は嘘かの様に何も感じない。マリッサが地面から起ち上がろうとすると。 


「えっ・・・」


 起ち上がろうとしたマリッサは起ち上がれずに、そのまま地面へと倒れてしまった。


「今は動かない方が良い。大人しくじっとしていろ」


「私の身体は一体・・・?」


〖感覚千消〗身体中の感覚を全て消すことが出来るスキル。発動が遅すぎるため戦いで使うには使い勝手が悪いが、苦しみながら死んでいく者に安楽死を与えることなどが出来る。


「俺が使ったスキルは身体中の全ての感覚がなくなるスキルだ。発動が遅すぎて戦いには使えないが、死んでいく人間には助けとなるからな。今は身体中の感覚を失っているから話すことくらいは出来ても、立ち上がったり動くことは出来んぞ? 30分以上は効果が続くからスキルの反作用が切れるまでは持つだろう」


「おぉ、レイよ。娘を苦しみから救ってくれて感謝するぞ!」


 ハーランドがレイの手を握り感謝をしている。


「レイさん。マリッサを苦しみから救って頂き本当にありがとうございます」


 メルンもマリッサの苦痛の表情が消えたことでレイに感謝をしている。


「レイ。約束通りに宝剣レアリスはそなたの物だ。今の私では、お前に渡すことが出来ぬから自分で持って行ってくれ」


「そうだったな。では遠慮なく」


 レアリスはマリッサの直ぐ傍に落ちている。レイはレアリスを拾うとマリッサの鞘へと戻した。


「!? 何を!?」


「俺にはヴェルシークがある。そんな剣は必要ないのでお前に返しておく」


「レイ。お前・・・」


「マリッサよ。これでレイの実力は分かっただろう? レイにクルトの救出を頼むのに異論はないな?」


「はい。異論はございません。ですが、お父様に1つだけお願いがあります!」


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