表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/347

21話 御者なのに

「貴方には本当になんとお礼を言って良いのやら。本当にありがとうございます」


 ガスターは涙を流しながら何度も何度もレイに頭を下げた。


「もう良いから気にしないでくれ」


「いえ。時間は掛かってしまうかも知れませんが、薬代は少しづつでも返していきたいと思います」


「俺が勝手に使ったことだ。気にする必要はない。それにエクスキュアポーション1個くらい、イエロードラゴンの素材を売れば、余裕でお釣りが来るから問題はない」


「しかし、それでは私の気が済みません!」


「だから食事をご馳走してくれるだけで良いと言っている。シーラスで一番美味い飯屋を頼む」


「本当にありがとうございます・・・貴方のような傭兵には初めて出会いました」


 ガスターはフィンナを抱き抱えると、改めて深く頭を下げた。

 話を聞いていたジェイクが、凄い剣幕でレイに迫ってきた。


「いや、まてまて! アンタ今、イエロードラゴンって言ったよな!? イエロードラゴンって南西の谷にいるやつか?」


「ああ。そうだが、それがどうかしたか?」


「どうかしたじゃないよ! ハッキリは確認出来なかったが、見たところアンタ達は4人だよな? 4人でイエロードラゴンを倒したって言うのか?」


「いや違うな」


「やっぱりか!? だよなー? 4人でイエロードラゴンを倒せる人間なんて、Sランク以外にいる筈がないもんなぁー」


「俺が1人で倒したんだが?」


「はははは! アンタ。嘘をつくならもう少し上手い嘘をつきなよ」


 ジェイクは腹を抱えながら笑っているが、別にレイは気にすることなく平然としていた。そんな話をしている時にレイの視界に御者の姿が入った。

 

 御者はレイが倒したモンスターの死体から、必死に素材を集めていた。


「おい。馬車の方はどうなったんだ?」


「あー、あれなら1つ部品が壊れていただけだったので、一瞬で直りましたよ」 


 御者は会話をしながらでも手の動きは止めずに、解体したモンスターの素材を次々と袋の中へと詰めている。


 今回レイが倒したモンスターは素材として価値がある部分が少ないのに、かなり袋が大きくなっているので、金になる素材だけを取っては次のモンスターを解体しているのだろう。


「アンタ達の馬車は動くようになったみたいだが、誰か馬車を動かせる人間はいるのか? そこで死んでいる人間が馬車の御者だろう?」


 そう言うとレイは、モンスターに殺されていた人間の死体を指差した。


「大丈夫です。私が運転出来ます。馬車くらいは運転出来ないと、商人はやっていけませんから」


「そうか。一応もう大丈夫だとは思うが、シーラスに着いたら娘を治療師に見せておくと良い」


「はい、そうします。貴方達もシーラスへ行くんですか? そう言えばお名前もお聞きしていませんでしたね。お聞きしても宜しいでしょうか?」


「俺の名前はレイ。レイ・アストラルだ。俺達もこのままシーラスに行く予定だが、肝心の御者があんなんだからな。出発にはもう少しかかりそうだ」


 御者は必死にモンスターの素材を集めている。どうやら売却出来る素材は全て集める気のようだ。


「わかりました。私はフィンナのこともあるし、御者の遺体と私を守る為に戦って、亡くなった傭兵2人の遺体を馬車へ運んだら先にシーラスへと向かいますね。夜になったらガスター商会という商会まで来て頂いて宜しいでしょうか? 宜しければお仲間さんも全員でどうぞ。私がご馳走させて頂きます」


「わかった。他の皆にも伝えておこう」


 ガスターはフィンナを馬車まで運び寝かせると、次は御者や傭兵2人の遺体の方へと向かった。


「ジェイクー、遺体を馬車に運ぶのを手伝ってもらっても良いかー?」

 

 どうも先程レイが自分の名前を名乗った時から、ジェイクの様子がおかしい。蒼い顔をして、ブルブルと震えながら冷や汗をかいている。


「ジェイク。どうしたの? ガスターさんが手伝ってほしいって呼んでるよ」


 ミラの話し掛けている声が、ジェイクの耳には入っていないようだ。何かに怯えるようにずっと震えている。


「ねぇ。ジェイクってばぁ!」


「うわぁぁぁ! なんだミラか・・・驚かせるなよ・・・」


「ジェイクってば、一体どうしたって言うのよ?」


「お前・・・さっきの傭兵の名前を聞いたか?」


「ああ。レイさんね! 私のタイプの美形な顔立ちだし、それでいてAランクなんて最高よね! さっきは軽くあしらわれたけど、必ず私に興味を持たせてみせるんだから!」


 そう言うとミラは少し大きめの胸をアピールしてみせた。


「バカ! アイツはAランクなんかじゃねーよ!」


「そうなのー? あんなに強いのにAランクじゃないんだね」

 

 ミラは少しガッカリしたような素振りを見せた。


「アイツは紅い死神・・・レイ・アストラル。セレドニアに3人しかいないSSSランクの傭兵だ・・・」


「そうなのー!? Aランクなんて目じゃないじゃない! 益々やる気が出て来たわ! で? なんでアンタはそんなに怯えてるのよ?」


「バカ! 俺はアイツを嘘つき呼ばわりした上に、かなり失礼なことも言っちまった・・・確実に殺される・・・」


「えー? そんな人じゃないと思うけどなぁー?」


「傭兵になって日が浅いお前は、アイツを知らないんだよ! 気に食わない相手なら無抵抗な子供ですら、簡単に殺すって噂だ」


「でもそれってただの噂でしょ? そんな人には見えないわよ?」


 一向にガスターの呼びかけに応じないジェイクにレイが声を掛けた。


「おい。お前の主人が呼んでいるぞ?」


「はっ、はい。今すぐに行きます!」


 ジェイクはレイの近くから逃げるように、全力でガスターのところへと向かって行った。


「ねぇ、レイさんってSSSランクなんですか?」


 ミラは胸元をアピールしつつレイに話し掛けた。


「ああ。そうだが」


「凄ーい! 今度私に戦い方を教えて下さい!」


「お前の武器は槍だろ? 悪いが槍は専門外だ」


「じゃあ私も剣を武器にします! だからレイさんが教えて下さい!」


 レイはギロっとした目つきでミラを睨んだ。


「そんな考えで傭兵をしていたら死ぬぞ?」


「・・・」


レイに睨まれたミラは何も言葉を発することが出来なかった。


「おーい! ミラー!」


 ガスターが馬車を操りこちらの方へ向かって来る。どうやら遺体の積み込みが終わったようだ。


 ジェイクの姿が全く見えないのは、箱の奥に隠れているからだろう。


「シーラスへ出発するから馬車に乗ってくれ」


「わかりました」


 そう言うとレイの方をチラリと見ながら、ミラは馬車へと乗り込んだ。


「それでは私達はシーラスへ発ちますね。本当にありがとうございました。夜に商会でお待ちしております」


「ああ。楽しみにしておくよ」


 ガスターは馬車をシーラスの方向へと向けて出発させた。


 ガスターは出発したが、御者の方は相変わらず素材を集めていた。


「おい! いい加減にしろ。折角谷を抜けて、早くシーラスに着けるようになったというのに、無駄な時間を使っていたら意味がないだろう? シーラスで早めに休めば、その分明日は早く出発が出来るんだからな」


「すみません! 今終わりました!」


 どうやら、御者は全てのモンスターの解体を終わらせたらしい。殆どのモンスターが一部だけとはいえ、そのスピードには目を見張るものがある。

 小さなナイフ1本のみで行っているようだが、解体の技術だけなら下手な傭兵よりもかなり上だろう。


「メルン王子のところへ戻るぞ」


「わかりました」


 レイとモンスターの解体を終わらせた御者は、メルン王子の待つ馬車へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ