ボクのママになってください!
待ちに待っていた瞬間ーー 思わず時が止まった。
消えるかどうか絶妙に戸惑っている百万ドルの夜景ですら。
ときに激しくうちつけ、優しい音色のようなさざ波でさえも。
兎に角…………、冷静に努めよう。
ひっひっふー、ひっひっふー。
ラマ○ズ式ってヤツにすがるしかない。
ちょっとラクになった。 なのにーー
「ボクのママになってください!!」
また告られた。
ちょ、待てよ。
ふつう、こういう時ってーー
古臭いけど「付き合ってください」ってんじゃないの?
そりゃあ年上なのは確かだけどさ。
甘えてこられたりするのも慣れてたけど。
「これぐらいは出来ンだろ?」って。
威張るタメ年とか年上のヤツよりかは遥かにマシで。
まさか、生き遅れ間近なワタシに、だ。
「ダメ…………ですか??」
ですよねー。
年が離れていたのは分かっていたのだろう。
意を決した告白だった。 人生経験の乏しかった彼でさえ、到底。
「…………ってことがあったのよ」
「…………へーーー」
「で、あんた。 どうすんのさ?」
「ん~~~…………面倒臭いけど」
嬉しかったな。
あくる日、まるで何事もなかったようにしていた彼に近寄る。
「良いよ……」
「え? 何か言いました?」
気付くのが遅かった。
その薬指に填められていた高級な輝きに。
「○▲くーん♪」
ガラス窓の向こう側から通りすがりの熟女が微笑んでいた。
なんだよ結局ーー 金が全てだってのかよって。
誰のママにもなってやるモンか!!
「あのう……どうしたら良いンですかぁ」
上目遣いの新人。
日常はショタコン詐欺にまみれている。
甘え上手は危険です。