ep.5 これからは、俺
こんなやつ俺の村にいたっけ?全然覚えてない。新しく引っ越してきた住人かなんかか?俺より幼く見える少年だが、少なくとも今の俺よりはここの世界について知っているだろうからな、ってここって言語日本語で通じるんだっけ?俺は日本語でプレイしてるけど、世界でも売られてるゲームだしな、、、。いやこのチャンスは逃すまい。しかもここはゲーム内だし、どんな恥をかこうが、俺の人生には関係ない。とりあえず話しかけよう。
「Hi!!」
「なに?ハイテンションオタク。」
はああーーーーー?俺がいつオタクなんて言ったんだっつーの!!てか最初見たとき言わなかったけど、誰がどう見たって、お前の方がメガネでサラサラ髪、そしてそれは一時期流行ったオタクのコスプレですか?と言わんばかりのチェックシャツ全しめ、デニムにインのやつで、オタクじゃねえかよ!!というのを言いたいとこだが、『偏見だ!』を筆頭にあーだこーだ年下に論破されるのもだるい。
ゲームの中では発言は選択肢によって限られてて、自分から自由な発言はできないのだけれども、普通に喋れるみたいだな。この際、ムカつくガキに一発かましてやろうとも思ったのだけれども、
「すみません、少しお時間ございますでしょうか?」
と高校生らしからぬ、へりくだった言葉遣いで抑えた。
「まあ、時間があるのは事実だからな。まあ仕方ない。」
「ありがとうございます^^」
と語尾に明らかに不自然な笑顔をつけて話した。
「あの、この巨大な地図って今見えてますか?」
「ああ、見えてるよ。さっさと小さくしろよとは思ってるけど?」
「ああ、すみません、、、。あの、私も小さくしたいとは思っているんですけど、小さくするやり方が、わからなくて、、、。」
「あんた義務教育受けてねえんか。」
「え?」
「ま、実際義務教育内では特に習わないけど、わからないなんてあんた、ベンジャミンバトンみたいに本当はとてつもなくじいさんなのか、タイムワープできたやつくらいだよ。」
「、、、すみません、あの信じてもらえるかわからないですけど、多分後者に近いと思います、、、。」
「っえっ!マジマジ!?それマジなのマジ!?俺ケッコーそういうの信じるタイプなんだけど、大丈夫?」
俺の中学生時代に劣らないほどの中2病だ。俺は何でこんな奴に話してしまったのかとすぐ後悔した。
その後も1分前まで興味がどん底のようになかったのに、調子よく話しかけてきたが本題を思い出した俺は、
「すみません、私のことなんかより、こちらをどうにかしてもらえませんか。」
「そうだったな。じゃあ俺のやつ見てて。」
そういうと、自分のポケットから地図を出した。出したのは小型のような地図だった。何だ別モンじゃないか呆れて見てたら、人差し指と親指で、それはまるでスマホをいじっているかのように、大きくしたり、小さくしていた。こんなとこでスマホのアレがでてくると思わないじゃーんっと思うのは現役高校生は俺だけであろうか。もちろんスマホは持っているけど、持っているゲームで使うのは大体ボタンだし、この世界自体俺のゲーム機器だし!?そんな言い訳を自分にしてたら、
「ねえ、これだけなんだけど。わかった?止めていい?」
とだるいでーすという顔で俺を見ていた。思った通りの顔だ。
「すみません、ありがとうございます。」
と、俺も早く縮めなきゃとやろうとしたら間髪入れずにぶっ込んできた。
「ところで本当に未来人てやつ?」
「正確には未来人かどうかは定かではないんですが、、、。」
「何なんだよ。はっきりしないやつだな。確かにあんたよく見るとなんか変だな。なんか適応してないような感じする。」
「適応?」
「なんだフォーマット変えてないのか?」
「こんなやつ初めてみた。やっぱあんた未来人だ。」
未来人とは一言も俺は言っていない。
「まあフォーマットに関しては俺が後で教えてやる。てか地図縮めなよ。」
「あ、すいません。」
俺も手馴れた手つきで地図を縮めた。そうすると、地図の端から”人”がついてきた。ん?人ーーーーーー!?誰だこいつ。噛むのをやめ、膝まづいいてた膝を払いゆっくりと立ち上がる。あれ、なんかよくみれば、みたことあんな。
「おいルオ大丈夫かあー?てかなんでお前この地図に噛み付いてついてきてんだよ。にしてもすんげえ顎の力だな。」
そいつはよく見るとやっぱゲーム中の俺のキャラクターだった。本名?が”ルオ”って名前でこの村では生活してんのか。俺の”クロ”は存在するけど、名前を変えていた。
てか俺、理解するの早すぎじゃね?順応しすぎじゃね?もっと驚けよ。ってそりゃそうか。でもなんかキモい。まあ、我にかえれるオタクはまだ世間的にはマシだ。そう自分を責めるんじゃない、俺よ。ルオと呼ばれている俺が使っているキャラクターは俺の操作ではなく確かに自分の意思で動いている。俺の操作だったら地図に噛み付くというようなバカなことはしない。俺はなんも驚くことなく冷静に地図をポケットにしまった。
「メッツー大丈夫だよ。地図広げて何してるのかなって思って歩いてたら間に合わないから、地図を噛んでみたんだ。」
なんじゃそりゃ。俺こんなやつを使ってたのか。外見はいかにもモテそうなインテリ好青年を着飾らせているけど、インテリでもなんでもなさそうだ。
「初めまして、新しい住人ですか?」
「まあ、はい、、、」
「おい、ちげえだろ!未来人なんだぜ?すげえだろー。」
こうなったらそうゆうことで通しておこう。
「僕、ルオっていいます。よろしくね。」
「あ、よろしくー。俺は、、、」
「おいルオー!!大丈夫か!!?」
勝手に気まずくなってる俺の自己紹介をさせまいとの如く後ろからまた誰かくる。こいつは知っている。キョンだ。特別絡みはない。強いて言えばちょっと暑苦しいかなーと思ってるだけだ。
「キョン君、置いていってごめんね。」
「全くもう、ルオは面白いんだからー。」
「アハハハハ、アハハ、アハハハハ。」
なんだこいつら、気味悪いなあ。付き合ってんのか?BL設定か?そんなことはどうでもいい、、。。ん?どうでもいいんだっけ?これって俺だったんだよな。まあ、今は俺じゃないし、でもなんかなあ。てか初期設定?のこいつの性格と俺の性格全く違いすぎな!?俺こんなメルヘンじゃねえぞ。そりゃそうか、ゲームでは俺の真の性格はわかんないからなあ。
「ていうか、君はどなただい?」
キョンが俺に興味を持ったようだ。
「初めまして、クロっていいます。」
「、、、クロ?」
3人が声を揃えて俺の繰り返した。
「クロって名前通用すんのか?」
「クロってお前のプレイヤーのユーザーネームだよな?」
「、、、うん。」
やっべえ、ミスった。ゲームにのめりすぎて普通にゲーム中の名前言っちゃたよ、しかも名前考えねえ。俺ちょっとした危機か!?俺、バレて吊るされてしまうのか?