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第八話 冒険者ギルドへようこそ③

「こ、これは……」



そう言って声を出したのは、受け付け嬢のソフィーさんだった。



「で……どうだ? 勇者だったのか?」



「いえ……その……これは……」




そう言ってソフィーさんは、ギルドカードをこちらに見せてきた。


 


『【冒険者名】リリス・ジャンヌ・セレベール


 【年齢】15歳


 【職業】ひよっこ勇者


 【スキル】勇者への道 リリスソード 腹減り


 【ステータス】剣C 体術D 魔法D ……   』




「ひよっこ勇者……だと」



オレは、予想の斜め上の結果に困惑する。

すると、その横でレイナさんはーー。



「ぷっ……はははははっ! ひよっこ勇者とは、こりゃたまげたな! 勇者じゃなくてひよっこ勇者とは、こりゃー、今年一面白い! ひぃ、腹がよじれる」



「な、ななな、なに笑ってんのよぉ! ひ、ひよっこ勇者でも、勇者には変わりないじゃない! わたしは、いずれ悪しき魔王を討伐する勇者様なんだからあぁぁぁぁーっ!!」



「ひ、ひひひぃー! これは、これは勇者様失礼した! ご無礼をー……。あーっ、ダメだ。腹が痛い! し、死ぬーっ! は、はははっ!おい、ソフィー! つ、次はそこのボウズを鑑定してやれ! ふひぃー! そいつも、この……。ゆ、勇者様の御一行なんだろ? あぁー死んじまうぞ。ふーふー」



「は、はい! では、こちらにどうぞー」



ソフィーさんにそう言われて今度は、促されるままにオレが水晶の上に手を乗せる。



きたぞ! ついに来た!これから本当の冒険の始まりだ。

この最初のイベントフラグこそ、ゲームとかで一番大切なシーンだ。



ここでオレの隠された潜在能力とかが、披露されて直々に王様からお呼び出しがかかったりするわけで。



職業はなんだ? ひよっこでも勇者がいる以上、同じモノが出る事はないだろう。



パラディンか? いや大賢者でもいい! ここは剣と魔法のファンタジー世界。

どうせなら、魔法職で最強を目指すのも悪くない。



そんな事を考えてると、眩く光っていた水晶が更に強く光だした。



「な、なに!? どうしたの!?」



「なんだ? この凄まじい光は」



「こ、故障でしょうか?」



そして、その光は眩しすぎて目を開けていられない程に光り輝く。



「はじまる! はじまるぞー! オレの……夢の! 異世界生活がああぁぁぁぁーっ!!」



そして、オレの叫びは光と共にかき消されーー。



ーー。



ソフィーさんが、ギルドカードを手に取りーー。



「こ、これは!!」



あぁ……その顔は、カードを見なくても分かる。



やはりオレは、引き当ててしまった様だ。



職業ガチャで、SSRとやらを!!



「ソフィー! どうしたんだ!? 見せてみろ!なっ! こ、これは……」



「ま、まってー! わたしも見たい! え、うそ……なにこれ……」



あー、わかるわかる。

やっぱりみんな、そんな感じになるよな。

これぞ、ファンタジー世界の王道ってヤツだよな。



さて……じゃあオレもそろそろ、ギルドカードを見るとしますかね。




『【冒険者名】イチジョウ・ハルト


 【年齢】16歳


 【職業】三流ホスト


 【スキル】アイアン・ハート


 【ステータス】剣E 体術E 魔法E ……   』




「……さ、三流……ホストだと……」



そして、一瞬辺りは静まり返り。



「ぷっ、くすくす……職業はともかくとして。全ステータスがEだなんて! あはははっ! は、ハルト今までどうやって生きてたわけー? あー、やっぱりダメ! 笑いを堪えきれないっ!ひっひひぃー! お腹がー!」



「お、お前らなー! ホントにどこまで、わ、わたしを笑わせれば……は、はははははっ! お、お前、このステータスは……や、やばいぞ! そ、そこらの赤子の方が。ふひぃひひ、た、高いんじゃないのか?」



「こ、これは十年に一度……いえ、もしかしたら100年に一度の出来事かもしれませんね……。こほん、こほん」



ソフィーさんですら、笑いを我慢しているのがわかる。



終わった……。



オレの輝かしき冒険者ライフが開始早々、幕を閉じた。



しかも、職業三流ホストってなんだよ。



この世界は、前世の職業まで受け継ぐのかよ。





こうしてオレの冒険者人生は始まった。



職業三流ホストして、この異世界を生きて行く。



そう……これはそんな売れない『残念なホスト』と『残念な勇者』と、この先で仲間になる『残念な仲間達』による、『残念』なお話しなのである。




『熱盛!』売れないホストさんは、異世界で無双するらしいですよ!



つづく


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― 新着の感想 ―
[良い点] 全然無双出来そうにないのが逆にいいですね。 このまま残念な感じで突き進んで欲しいです。
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