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第十ニ話 はじめてのクエスト③

【始まりの街】



クエストを終えた帰り道。



「ぐすっ……あああぁ……ぐしゅ……」



「おい、もう泣くなって……死なずに助かっただけでも儲けもんだろ? ほら、ハンカチ貸してやるから……とりあえずこれで涙拭けよ?」



「……あ……ありがと……。じゅ、じゅぴー」



「お、おい! 涙を拭けとは言ったけど、鼻をかめとは言ってないぞ!」



「ぐすっ……だってー……あのトカゲ……ぐしゅ……息が……臭かったもん」



オレとリリスは、夕暮れの中。

クエストを終えて、トボトボとギルドに向かって歩いていた。



前回の話しをすると長くなるので、結果だけ言うと見ての通りリリスは助かった。



オレの二つ目のスキルを使った攻撃は、会心が上昇して確かに大きなトカゲやろうに刃が入ったが。



安物のショートソード故に、途中でそれは見事なまでにポッキリと刃が折れて、痛みに怒り狂ったトカゲやろうはリリスを振り払い、今度は標的をオレに変えた。



そして、オレが泣き叫びながら逃げ回っていると、クエスト帰りの冒険者パーティーがたまたま通りかかり、助けてくれたと言うわけだ。



ちなみにそれでも討伐まではいかず、大きなトカゲやろうは深い傷を被って逃げって行った。



「よーし! じゃあ、今日は初クエスト成功を祝して酒場でお祝いだな! リリスの大好きな、アーモンドリザードのから揚げもいっぱい食っていいぞー!」



「ぐしゅ……じゅ、じゅぴー! そ、そうと決まったら! 敵討ちよ! この、可憐で可愛い! 超絶美少女で勇者のリリス様を、あんな目に合わせたんだから! これでもかーと言う位、食べて上げるんだからっ! さぁ、ハルト! 早く行きましょ! 急がないと無くなっちゃうわよ!」



元気が出たのは良かったけど、食べるのは程々になーと思いながら俺達はギルドに向かった。




           ✢




「「クエスト成功を祝してっ! かんぱーいっ!」」



オレとリリスは、手に泡の出る飲み物を持って酒場で食事をしていた。

もちろん、テーブルには約束のアーモンドリザードのから揚げが並べられてある。



「しかし、一時期はどうなるかと思ったけどアーモンドリザード、一体討伐でニ万ギルになるとはなー! しかも、ギルドの素材買い取りで追加の一万ギルとは! まぁーなんにせよ、良かった!」



「だから、言ったじゃなーい! この可憐で超絶可愛い、美少女勇者のリリス様がいたら大丈夫って!」



「いや……トガゲ野郎に捕まって、たしゅけぇてーって泣きわめいてたのはどこのどいつだよ! たまたま、通りすがりの冒険者パーティが助けてくれたから、良かったものを! 一歩間違えたら今頃、仏さんになってたからな?」



「そ、そ、そんな事言ったら! ハルトだって、Eランクのアーモンドトカゲに食べられてたじゃない? 初心者冒険者だとしても、アレはどうかと思うわよ? それに比べてわたしは、相手がCランクモンスターだったわけだし! し、仕方ないわよねー!」



仕方ないわけあるかーと思ったが言わない。

なぜなら、この話を続けたらめんどくさくなる事が分かっているからだ。



てか、このアーモンドリザードのから揚げ美味いなー。

ちょっと独特な臭みはあるが、ジューシーで旨味が口の中に広がって行く。

確かにこれは、泡の出る飲み物のツマミには良く合うのが分かるぞ。



「そういや、リリスは魔法とかは使えないのか?」



このまま、あの話しを続けても意味がないので、ふっとした疑問をなげかけて見た。



すると、一瞬の沈黙が流れ。



「……魔法は、勇者が使うモノじゃないわ」



と、リリスは言った。



「要するに、魔法は苦手と言う事で合ってるか?」



「に、苦手じゃないわよっ! ただ……ちょーと、わたしの戦闘スタイルと合わないって言うか……。魔法が言う事聞かないって言うか……。ねぇー?」



「ねぇー? って言われてもな……。と、なると後は……。後衛担当の魔法職と、ヒーラーでも居た方が良さそうだな」



オレ自身もパーティの良し悪しは分からないが、オレとリリスが前衛なら後は後衛のサポート系が必要なはずだ。

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