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第九話 初心者冒険者

「……で、リリス! クエストっていったいなにを受けるつもりなんだ?」



「はぁー……。ホントに何も知らないのね? 良い? 先ずは、冒険者になったらギルドが貼り出したクエスト票から好きなクエストを受諾できるの!

もちろん最初はEランクからよ! そして、ギルドが決めた規定をクリアーすれば、ランクが上がっていく仕組みなの!

ランクが上がれば、危険は伴うけどそれだけ高額な報酬が得られるわ!

だから、最初はスライムとかアーモンドリザードとかを討伐して日銭を稼ぐのが定番ね!

まぁ、いずれはランクが上がってドラゴンとかを討伐出来たら万々歳よ!」



なるほどな。

いわゆるこの世界は、ゲームとかでよくある定番のファンタジー世界らしい。

そりゃあ、レイナさん見たいに獣耳もふもふの住人もいるし、ギルドカードのステータス表にも魔法って文字があったし。

オレの職業が『三流ホスト』じゃなかったら、夢の異世界ライフの始まりだったんだけどな。



しかし、それよりもだ……。



「リリス……もう一つ聞いて良いか?」



「何かしら?」




そして、一瞬の沈黙が流れる。




「なんで、お前は昼間からっ! から揚げをツマミに泡の出る飲み物なんかを飲んでんだよおおおおおおぉぉぉぉーっ!!」



オレの声が、食堂の中でこだました。



そう、あろうことかこのひよっこ勇者はギルドに隣接する食堂で酒……いや、泡の出る飲み物を昼間から優雅に飲んでいたのだ。



「べ、べつに! 良いじゃない! 何事も焦っても良い結果は得られないのよ? それに、クエスト中にお腹が空きすぎて倒れでもしたら、それこそ危ないじゃない! 身体は一つしかないし、仮に死んでしまったとして蘇生魔法なんて使えるのは国に数人いるかどうかよ? ハルトは、デビルトマトが死んだ時見たいにグチャってなりたいわけ?」



そう言いながら、リリスは皿に付け合わせに盛られていたトマトをフォークで潰して見せた。



「……百歩譲ってだ。仮にリリスが言う通りだとしても、武器や装備の新調や街の外のモンスターの情報を仕入れたり、やる事はいくらでもあるだろっ!

なんで、お前は一番最初にやる事が昼間から泡の出る飲み物を飲む事なんだよ! お前、それでも自称勇者かよっ!」



「ちょっと待って! 自称じゃないから! 勇者だからっ! 可憐で可愛い、勇者様だからっ!」



「ひよっこ勇者だけどな」



「なっ! ハルトだって、全ステータスEランクで職業だってわけのわかんないヤツだしー! 今まで、どうやって生きて来たか知らないけど、良く恥ずかしくも無く人前に出られるわねぇー! わたしなら、屈辱過ぎて死にたくなるレベルよ!」



「なにをーっ!」



「なによっ!」



オレとリリスはテーブルを挟んで、ガシッと手を組み睨み合う。



「はぁー……。やめだ、やめ! こんな事しても何もならねー」



「そ、そうねー……。確かに何も得られないわねー」



そして、再び沈黙が流れる。



「けどな……リリス……あれ、どうするんだよ、あれ……」



「……あれって?」



「……これだよ」



そう言ってオレは、ごそごそっとポケットから一枚の紙切れを取り出した。






『       【借用証明書】



冒険者リリス・ジャンヌ・セレベール及びに、冒


険者イチジョウ・ハルトに金七万ギルを貸し付け


る。返済期間は、七日間とし期日までに返済する


べし。


尚、期日までに返済出来ない場合はギルドマスタ


ーレイナ・ラミスティーの名を持って身柄を拘束


し、強制執行を持ってあらゆる手段を持ち入り返


済させる事が出来るモノとする。     

                     』




「な、七万ギル位ならちょちょっとクエスト行ったらどうにかなるわよ! だって、このパーティにはゆ、勇者のわたしがいるんだから! えっとー……確か……あのクエストが一万ギルでー……」



そう言って、リリスは残念な頭の中でクエスト勘定を始めた。



ちなみに、ギルド登録とかは勇者割引で無料になったのだが、恥ずかしい話しオレ達はこの世界で言う所のギルを所持していない。



そこで、ギルドに頼み込んで自称勇者の信用?とやらで特別にお金を借りたのだ。



費用としては、最低限の生活費とクエストに出る為の武器を買う位の金額だ。

もちろん、間違っても今みたいに贅沢をする為では無い。

大切な事なのでもう一度言うが、「贅沢」をする為のお金ではないのだ。



「リリス……もし、返済出来なかった時の事を考えた事あるか?」



「な、なによーっ! わたしがいるから大丈夫って言ってるでしょ! それに、もし返済出来なかったら、どうせ強制的になんかやらされるんだからそれで頑張って返せば良いじゃない! しかも、ホントに最悪の場合は荷物をまとめて高飛びよっ! この、リリス様を捕まえて見れるもんなら捕まえて見せなさいよって感じよねー!」



おー勇者よ借金を踏み倒すとはなんと情けない。オレがRPGとかに出てくる王様ならきっとこう言ってるだろうな。



しかも、勇者がギルドに借金するだけでもヤバイのに、その世界を救うかもしれない勇者が借金を踏み倒す事を推奨するとはこの世界はもう駄目かもしれない。



「ちなみにだが、リリス。高飛びしたとして捕まったらどうなるかわかるか?」



「強制労働されられるだけじゃないの?」



「甘いな! あのレイナさんがそれだけで許してくれるわけないだろ」



「じ、じゃぁ……。どうなるって言うのよー!」



「……これだ」



そう言って、オレは自分の首の前で親指を逆さに立て、横にスライドした。



「……な……なにそれ……」



「……チョンパだ」



バンッ!



リリスが、思いっきりテーブルを叩いた。



「さ、さぁーハルト! え、エネルギーは充電したわ! さっそく、クエストを受諾しに行きましょうかー!」



「まぁー待て! 先に武器屋に行くぞ! 武器無しでどうやって闘うつもりだ?」



「そ、そうねー! そうだったわー! そうと決まれば武器を用意したら直ぐにクエストに行くわよ! い、急ぐわよ!」



さっきまでの余裕はどこに行ったんだよ。



こうしてオレとリリスは、武器を新調してクエストに行く事となった……。




【只今の借金】金七万ギル


【運命の日まで】残り七日





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