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さんそく! ヒーローと幹部と学生と  作者: ムネミツ
第一章 偽ヒーロー登場
3/5

第三話 偽ヒーローサイド

 秘密結社パッチが作ったヨモギマンの事件は、ヒーロー達の動く所となった。

 「で、お前さん達はどう動くつもりだ?」

 閉店状態の喫茶Pのカウンター席で、背広姿の岩のような体格の男性が幸之助と

店長であり赤鬼メイドの素顔である赤毛の白人女性のマリアに尋ねてきた。

 「どうするって、例のタバコの事件ですか?」

 幸之助が恐る恐る聞き返す。

 「雷同さん、幸之助君にはお店も学校もあるんですよ!」

 マリアが怒った顔で雷同に言い返す。


 「そりゃそうだ、だがあんたらもヒーローだろ?」

 雷同は引き下がらない、彼は体だけでなく性格も頑固だった。

 幸之助達が登録制のヒーローだと知っていて、ヒーロー道を説くお節介な先輩。

 

 「特に幸之助、お前の祖父さんミスター・ゴールドハートの名が泣くぜ?」

 雷同は、幸之助とカンナの祖父である今は亡きスーパーヒーローの名を口に出す。

 「俺は、お祖父ちゃんみたいにはなれませんよ」

 幸之助は、ヒーローであり()()()()()()()()()()()である祖父の事を思い出す。

 「まあ、祖父さんの真似しろとは言わねえがお前は立派なヒーローになれるよ」

 雷同こと、雷同鉄男(らいどう・てつお)

 ヒーロー名、重装刑事(じゅうそうけいじ)バイオレッドは微笑む。

 雷同はT市警察ヒーロー課の課長で、元ヴィランのヒーロー部隊サンダーガッツの隊長だ。

 

 幸之助にとっては、良い人だけど暑苦しく根性バカなのが欠点な亡父の親友。

 ことあるごとに、亡き祖父や父を例に出してくる面倒な人でもあった。

 「近所の見回り位はしますよ、倒せるなら俺が倒します」

 幸之助は雷同にそう答えた。

 

 「斜に構えた所はあいつ譲りだな、だが良い目をしてるぜ♪」

 雷同は微笑んでコーヒーの代金を支払い出て行った。


 「暑苦しい人ね、私達の気持ちなんかお構いなしで」

 むくれ顔のマリアがぼやく。

 

 「そうだね、悪い人じゃないのが性質が悪いけどああいう人も必要だから」

  幸之助もつぶやく、ヒーローとして活動しているが秘密組織の偽ヒーローと

裏の顔を持つ彼らには雷同のような表しかないヒーローは眩しすぎる光であった。

 

 「旦那様の表の顔しか知らない人は、苦手ですよ」

 マリアのぼやきは続く。

 「俺もだよ、祖父ちゃんがパッチを作るようになった一因でもあるし」

 幸之助も同意する。


 パッチの創設者であるスーパーヒーロー、ミスター・ゴールドハート。

 自分に寄生した宇宙生物ネイバーの力で数多くの悪の組織と戦ってきた男。


 そんな彼が何故、悪の組織と見られるパッチを作ったか?

 それは彼がヒーローとして戦う中で見てきた()()()()()が原因だ。

 『ヴィランだけが悪を為すのではない、我々は一般人の悪も放置すべきではない』

 ヴィランの誕生原因や事件の原因には、少なからず一般人の悪が絡んでいる。

 ヒーローは一般人の悪も警戒し防ぐべきだ、と言うゴールドハートの主張。


 一般人によるテロと強盗で、二人の娘夫婦を失った彼の言葉に賛同の声もあった。

 だが、結果として彼の主張は受け入れられなかった。


 大いなる力には責任が伴う、ヒーローの力は一般人に振るうべきではない

 一般人の事は、一般人で対応させるべき

 戦友や後輩たちの言葉に、ゴールドハートは憤慨した。

 彼らの言葉の正しい、だが彼には同胞達がその言葉を責任を丸投げした怠惰の

免罪符にしているとしか思えなかった。


 よろしい、ヒーローができぬならば一般人の悪に対しては悪で懲らそう

 サンタが悪い子には炭を送るように、私は悪の面を被って彼らを懲らそう

 ヒーローの面でヴィランを討ち、悪の面で一般人を懲らす二つの顔を持とう


 それが、ゴールドハートの決意


 ゴールドハートは二人の孫、執事一家、メイド、義理の息子の教え子一家と自分に残った

家族と呼べる存在を集めて計画を語りパッチを結成した。

 「さて、雷同さんも動いたようだし俺達も動こう」

 マリアに語る幸之助、マリアも頷く。


 二人は、厨房奥の隠しエレベーターから地下へ降りる。

 

 そこは宇宙船の中に似た白い外壁の部屋、偽ヒーロー達の秘密基地。

 中央のテーブルには、手足に吸盤のようなものが付いた蛸を模した黒いスーツで全身を覆った女性。

 ベレー将軍の別の姿、オックガールが待っていた。

 「待ってたわよ、二人とも♪ ヨモギマンちゃんのお片づけを始めましょう♪」

 軽いノリでしゃべるオックガール、クネクネと体を動かす仕草が艶かしい。


 「リン姉は平常運転か、で? ヨモギマンの居場所はどこ?」

 幸之助がため息をつきながら尋ねる。

 

 「リンは、ネイバーを取り込んでからおかしくなっただ」

 訛った口調でオックガールを本名呼びしつつ呆れるマリア。

 「失礼ね、私は素直になっただけよ♪ コウちゃん大好き♪ カンナ様大好き♪」

 オックガールが幸之助に抱きつく

 「いや、ちょ! その姿で抱きつくなって!」

 幸之助が逃れようともがくがブラックオックは離さない。

 

 「逃さないわよ~♪ コウちゃんの臭いハアハア♪」

 ブラックオック、駄目な女性であった。


 「変態、止まれっ! 真面目にやるだよ!」

 マリアがハリセンでオックガールを叩くと、渋々オックガールは幸之助から離れた。

 「何よ、マリアだってコウちゃんが好きな癖に~♪」

 幸之助から離れたもノリは変わらない。

 「それはそれ、これはこれだ!」

 マリアが頬を染めて怒る。

 「で、ヨモギマンは何処?」

 幸之助がオックガールに尋ねる。


 「今、モニーターに出すわね♪」

 オックガールがテーブルのパネルを操作して、デジタルスクリーンをポップアップさせる。


 「ヨモギマン、増えてるだな」

 スクリーンに映る緑の点が怪人ヨモギマンのマーカー、それが五個ほど市内各地に点在している。

 「博士が増やしちゃったのよ、他のヒーロー達の動きわ~♪

お役所が北、警察が南、消防が東って所ね」


 「追われてないのは西だな、んじゃ俺達は西へ行きますか」

 幸之助が西に行くと決めると他の二人が同意する。


 「それじゃあ、私は先に行ってるわね~♪」

 オックガールが宣言すると、彼女の足元から床が消え彼女はスライダーで目的地へ滑って行った。


 「それじゃあ私も行くだよ、変・身っ!」

 マリアが赤鬼メイド、ではなくヒーローの偽装であるレッドオーガへと変身を始める。

 瞬時に彼女の服が分解され、一瞬だけ鍛えられた筋肉と豊満な胸のシルエットが浮かぶがすぐに白いアンダースーツに覆われ、手足と胴体と腰回りに赤いプロテクター頭部にはヘッドギアに似たタイプの鬼の角が付いたマスクが装着されてレッドオーガへの変身が完了する。


 変身が完了したレッドオーガも、床下のスライダーから出撃して行った。

 「さて、俺は現地で変身するかな」

 幸之助は、私服のまま床下のスライダーで基地から出撃して行った。


 怪人を倒して事件を解決するためではなく、倒したフリをして一匹だけでも回収するために。


 



 

 



 


 

 

 

 


 

 

 

 

 


 


 

 

ヒーローと偽ヒーロー、それぞれの思いが動き出す。

次回、重装刑事バイオレッドが大暴れ。


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