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さんそく! ヒーローと幹部と学生と  作者: ムネミツ
第一章 偽ヒーロー登場
1/5

第一話 路上喫煙者を理由不明な暴力が襲う

 「タバコの値上げ? 勘弁してくれよ、吸わなきゃやってられねえっての!」

 スーツを着た中年男性が、ポケットから煙草を取り出しライターで火をつける。

 T市では路上喫煙は禁止されているが、その実態は野放しだった。

 

 人通りの少ない夕方の商店街、通行人はほぼいないことが中年男性の欲求を後押しした。

 通りに人がいなけりゃ、人に迷惑かけねえだろう。

 自動販売機に硬貨を投入してスイッチを押す、コトっと音がしてタバコが出てくるのを取り出し口に手を突っ込んで取る。


 禁止されていても、止める者がいなければ自由と同じと考える人間は多い。

 この男性もその一人だった、シャッターを閉じた自販機だけ置いている個人経営のタバコ屋の前で喫煙を楽しむ男性を恐怖が襲うとは誰も思っていなかった。


 「そこの男性、路上喫煙は止めるんだ!」

 中年男性の喫煙を咎める者がいた、緑色に複眼の昭和ヒーロー風マスクから眉毛の位置から生える二本の触角は剣のような葉と丸い蕾が無数に付いている。

 「何だヒーローさんか、こいつは失礼。」

 緑色の怪人に謝りつつ、携帯灰皿に吸い終えたタバコを入れる中年男性。


 「俺の名はヨモギマン、煙が吸いたければヨモギの煙を喰らえ!」

 緑色の怪人、ヨモギマンが中年男性の顔面に向けて白煙を噴きつけた!


 「な、何! ぶへえっ!」

 突然現れたヨモギマンに焦げ臭い煙を浴びせられた男性はゲホゲホとむせて倒れ伏した。

 「モギー! ヨモギの煙は健康になるモギー! 」

 突如現れた怪人、ヨモギマン。


 「貴様にはヨモギタバコをくれてやるモギー! これで健康になるモギー!」

 ヨモギマンは、倒れた中年男性の口を開けてバルカン砲のように束なったヨモギタバコを突っ込み火を付けた。

 野焼きの煙の如く焦げ臭い白煙が、狼煙の様に天高く上がって行く。

 それを見たヨモギマンはモギモギと微笑むのであった。


 「さあ、次の路上喫煙者を探すモギー! ヨモギの煙で健康にしてやるモギー!」

 ヨモギマンが叫びを上げてタバコ屋の前から立ち去る。

 その後、異臭騒ぎとなり通報を受けた警察が男性を発見し病院へと搬送した。

 これが、連続路上喫煙者昏倒事件の始まりとなる。


 T市役所ヒーロー課のオフィスには電話のコール音が鳴り響いていた。

 「はい、こちらヒーロー課です! 今度は河川敷で被害者が?」

 電話の内容は被害者の発見や、煙への苦情ばかりで対応する職員は辟易していた。

 「うちじゃなくて、警察へ電話して下さいよ~っ!」

 泣き言を叫ぶのはヒーロー課の職員の女性、水木笑子(みずき・えみこ)

 彼女自身もアクアスマイルと言うヒーローなのだが、他の職員が清掃作業などで出払っていた為に電話オペレーターをさせられていた。

 

 そんな中、ヒーロー課の部屋へ一人の男性が入ってくる。

 「水木君、お疲れ様♪ まあ、缶コーヒーでも飲んで一息ついて♪」

 泣きそうなの笑子の泣き言をなだめるのは、課長の神谷英雄(かみや・ひでお)だ。

 

 「犯人はヨモギマンってヨモギの怪人みたいでね、ヒーローみたいな恰好で現れて路上喫煙してる人を襲ってるんだよ」

 神谷の言葉に笑子が呆れた顔をする。

 「ヨモギマンって、すごいアホなネーミングセンスですね?」

 シンプル過ぎて呆れかえる笑子。


 「それで、襲った相手の口にヨモギタバコ突っ込んで火を付けて吸わせてるってさ」

 神谷は一旦、話し終える。

 「何がしたいんですかね、その怪人は! 本当に迷惑ですよ!」

 笑子は、怒りに燃えていた。

 

 「そうだねえ、本当に何がしたいんだか?」

 神谷が胸ポケットから煙草を取り出して火を付ける、そこへ笑子の指から

ビュッと水が放たれてタバコが消されて神谷の顔が水浸しになる。

 「課長、室内は禁煙ですよ♪」

 笑子がひきつった笑顔で神谷を窘めた。

 「水木君、少しぐらい大目に見てちょうだいよ~!」

 神谷は白々しく嘘泣きをした。


 そして、神谷も笑子と共にクレームの対応に追われる事となった。


 「って言う事があったのよ~! 本当、ヨモギマンだか知らないけど許せない!」

 

 所変わって、市役所の近くにある喫茶Pのカウンター席で笑子が愚痴をこぼす。

 「大変ですねえ、水木さんも。雷同(らいどう)さんも忙しいみたいですし」

 笑子のグラスに水を注ぐのは、カフェエプロンを身に付けた釣り目気味のGIカットの少年。


 「他人事みたいに言わないでよ! あなたも登録制のヒーローでしょ!」

 笑子がGIカットの少年こと、遠田幸之助(えんだ・こうのすけ)に突っかかる。

 「今はこの店のバイトですから、ご注文は?」

 そんな笑子をさらりと受け流す幸之助。


 「ナポリタンセット! もうカロリー取らなきゃやってられない!」

 笑子がPの人気メニューを注文する。

 「はい、ナポリタンセットお願いしま~す♪」

 笑子の気も知らずに注文を復唱する幸之助。


 だが、幸之助は内心でビクビクしていた。

 カンナの奴、またアホな怪人作りやがって! 他の幹部連中も止めろよ、甘やかすなよ! 


 そう、幸之助は世間を騒がすヨモギマンの事件の真実を知っていた。

 

 何故なら、彼が働いているこの喫茶Pの運営母体である秘密結社パッチが起こした事件だからだ。

 

 遠田幸之助は、登録制ヒーローのジ・エンダーであると同時に秘密結社パッチの幹部ジエンダーだ。


 彼は、学生とヒーローと秘密組織の幹部の三重生活者であった。


 カンナとは、彼の従妹にして秘密結社パッチの首領である中学生の少女の事である。

 秘密結社パッチとは? 幸之助が何故三重の生活を送ることになったのか?


 次回、秘密結社パッチにて明かされる!

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