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勇者スレイヤー 勇者絶対殺すマン  作者: ランタン丸
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青年の生い立ち6



朝霧が陽の光に照らされる。


まだ、仕事がはじまって半刻もしないうちにロックは大きくあくびをする。

「ふああ、眠い。今日の仕事は一段とダルくなりそうだぜ」


「ああ、そうだな。昨日は2人ともごめんな。俺の話に付き合わせてしまって。2人とも寝不足だろ?大丈夫かい?」

シュタットが桶を運びながら、ロックとハノイを心配するが、2人は「大丈夫だ」とシュタットに返す。


「しかし、俺たちが製塩所を辞めて、王都に行く話をほとんどルビスに聞かれてたとはな。ロック、お前の声がデカいからだぞ」

ハノイがロックに文句を言い、ロックもそれは悪かったと反省した表情を見せる。




昨夜は、シュタットたちの話をベッドの中で聞いていたルビスが泣いて大変だった。

必死に自分も連れて行くように懇願するルビス、そんなルビスを必死になだめようとする3人。しかし、ルビスは興奮したのか熱が再び出てしまいベッドの上で倒れてしまったのである。

3人は慌てながらお湯を沸かし、ルル草の残りをルビスに煎じて飲ませたのだった。

おかげで3人とも寝不足である。


今日は朝からルビスは仕事を休んでいる。

シュタット、ハノイ、ロックの3人がダストに頼みこんで今日一日ルビスを休みにするように取り付けたのだった。その代わり3人とも普段の倍のノルマを課せられてしまった。



「昨日の夜のことは仕方ねえよ。それよりもルビスの意思も確認できたことだ、シュタット、俺たちもお前と一緒に王都に行くからな!」


「そうだぜ。ハノイの言う通りだ。今日のノルマは倍になっちまったが国軍の試験を受けるための訓練と考えればやる気でるぜ!まあ少し眠いがな」


そんな2人の言葉にシュタットは、笑みを浮かべながら2人を見る。


「ああ、俺たち4人で王都へ行こう。今から1年後が楽しみだよ。みんなで頑張ろうな」



そんな会話をしていると、

ダストの怒鳴る声が耳にはいる。


「おい!!何無駄話してやがる!今日はノルマがいつもの倍なんだから早く運びやがれ。飯抜きにされてえのか!お前ら」


3人は「すみません」と頭を下げて、海水を一生懸命、釜へと運ぶのであった。


海水運びという重労働。しかし、3人の顔は希望で満ち溢れていた。






















バチンと焚火の弾ける音がする。

空には星の海ができ、空気は冷たい。


焚火の弾ける音で目が醒める。

青年は目を擦りながらあたりを見渡す。

(夢か、これまた懐かしい思い出だな)

懐かしく、大切な過去の思い出に自然と笑みが出る。


「起きられましたか」


焚火を挟んで向こう側に座る女性から声がかけられる。その女性の髪は白くて長い、目の色は緋色だ。緋色の瞳、魔眼である。女性は魔族だった。


青年は、「ああ」と答えると立ち上がる。


「もう少し休んでは?この2日間ほとんど寝てないでしょうに」

魔族の女性が青年の身を案じる。

しかし、青年は「問題ない」と答えてシャベルを手にとる。


青年は、魔族の国の王都、ナルカを破壊されてから勇者が軍隊とともに去ってからは、生き残った魔族たちととも殺された魔族の人々を埋葬していった。花を添える余裕などなく、ただ埋めるだけだ。


「なに問題ない。昔、海水を運ぶ仕事を睡魔と戦いながらやってたからな、それに比べたら穴を掘るくらい大しことないよ。それにもうすぐ終わる」


「しかし」

「それよりもだ」


魔族の女性はなおも何か言おうとするものの、青年が被せるように言葉をはなつ。


「お前さんたちは、埋葬が終わった後どうするんだい?勇者はガイア大陸を北に進みつつハール大陸に戻るつもりだ。今、北側に避難すると軍隊の被害にあうかもしれん。南方にあてはあるのか?」


「ええ、ここから20里ほと南側にウルスの森林地帯があります。そこに魔族の村がありますから、そこに身を寄せようと考えています」


「そうか。森林地帯にある村なら万が一勇者の軍勢が攻めて来ても逃げやすいな」


青年は生き残った魔族に行き場があることを知り安堵する。



勇者が率いる人間の軍隊が都ナルカを破壊し、魔王を討つとその日のうちに軍隊は一兵残らずナルカを後にしていた。

理由は簡単だ。魔族を殺し過ぎたのだ。

多くの死体が転がり、瓦礫の山となった都を軍の駐屯地には使えないと判断したのだ。

死体は、やがて腐り悪臭を漂わせるだけでなく疫病の原因となりやすい。遠征において疫病は避けるべきリスクの1つだ。ナルカはもともと石畳が敷き詰められた都であり、瓦礫が多いのもあいまって死体を埋めるのに手間がかかる。

兵に死体の処理を命じることは士気の低下を招ねいてしまう。そのため、勇者はすぐに軍隊とともに北進したのである。



「あなたもはやく寝るといい、明日の昼までには全ての埋葬が終わる。それからあなたちは森林地帯まで歩いて移動しなければならない。体力を使うぞ。今は寝て明日に備えた方がいい」


青年は魔族の女性にそう告げると、シャベルを担いで死体まで歩きはじめるのだった。


やっと話が進む。


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