青年の生い立ち5
2人の申し出にシュタットは困惑した。
「何を言ってるんだ。2人とも俺に付き合う必要はないんだぞ?それにお前らまで王都警備の試験を受けるつもりか?」
「うるせー、俺たちもお前みたいに自分の生きたいように生きるだけだ。文句は言わせないぜ。王都警備の試験については後で考えるさ」
ロックの言葉にハノイが続く。
「そうだぞ、シュタット、俺たちはお前と一緒に王都に行きたいか。だから行くんだ!ここに残って後悔はしたくないからな。それに、別に王都警備だけじゃなくて中央軍の三等兵試験もあるはずだ。俺とロックは、それを受ければいい」
「おお!!国軍の試験か。それいいね。さすがハノイ!ナイス提案!!まっ、そういうことだ。俺たちもお前と王都に行く。これはもう決定事項だぜ」
ロックはニヤリと笑い、シュタットに告げた。
「本当にいいのか?ここの仕事は大変だが給金も安いとはいえしっかり出るし、飯も3食出るんだ。ここで働いていた方がお前らのためになるんじゃないか?」
「その言葉そのままお前に返すぜ。それにな、俺はお前がいなきゃここでの仕事が続くとは思えん。仕事の内容や待遇は別にしても、ダストの奴が気に入らん」
同感とばかりにハノイが頷いてみせる。
観念したようにシュタットは、はぁとため息を吐き、言葉を続ける。
「もう!やっぱりか。正直、俺が製塩所を辞めて王都に行くって言ったら、一緒に連れて行けって2人とも言い出すと思ってたよ。だから今日まで2人にはこの話をしなかったんだ」
そして、シュタットは、わかったと頷き2人の同行を認めるのだった。
「それじゃあ、ハノイ、ロック、2人ともこれからもよろしくな。これからも俺たちはお互いに助けあいながら生きていこう」
ああ、とハノイとロックが返事をする。
「こちらこそ、改めてよろしくな。ところでシュタット、ルビスはどうするんだ?俺たちが製塩所を辞めた後にあいつ1人を残すのは気がひける」
ハノイが今後のルビスを案じる。
「ルビスはここに残していくしかないと思う。ルビスは、まだ12歳、1年後でも13歳だ。軍の試験は受けられないし、危険な冒険者が務まるとも思えない。残して行くのは心配だが、ルビスのためを思うと仕方ない」
シュタットの言葉にロックが反対する。
「ルビスは俺たちの弟だ。やっぱり連れて行こうぜ。ダストは、すぐルビスをこき使うからな。残して行くのは不安だぜ。それに俺たち3人で働けばルビス 1人分くらい養えるさ」
シュタットは、ロックの言葉にそれもそうだなと頷き、しばらく無言になる。
そして、何ともいえない顔で口を開く。
「まずはルビスにこのことを話そう。ルビスの意思を確認しようよ。ルビスの意思なしに俺たちがアレコレいうのも筋が通らん」
シュタットの言葉にロックとハノイの2人が頷く。
「そうだな。明日ルビスにこのことを話そうぜ。ルビスを連れて行くか、置いて行くかは決めるのはそれからだ」
ロックがそう2人に告げ、今日はもう寝ようと2人に言おうとした時、ガバッとルビスの毛布がもちあがり、ルビスが半身をあげ叫んだ。
「僕も行く!!お願い!置いてかないで!みんなと王都に行きたいよ!!」
3人はギョッとしてルビスの方を見るとそこには、目に涙を溜めたルビスの姿があるのだった。