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勇者スレイヤー 勇者絶対殺すマン  作者: ランタン丸
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青年の生い立ち4



「ちょっと待て、初めて聞いたぞ、そんな話。どういうことだ?説明してくれ」

あと1年で製塩所を辞めるというシュタットの言葉に、ハノイは驚きつつも説明を求める。


「いやなぁ、ずっと前から考えてたことなんだけど、俺は王都に行こうと思うんだ」

頭を掻きながら、シュタットは2人に説明する。

「ほら、来年で、俺15歳になるだろ?15歳になれば王都で王都警備の試験が受けられるんだよ。それを受けてみようと思ってな」


「はああ⁉︎おいおい、王都警備ってことは中央軍直下の組織だろ?俺たちみたいな孤児がなれる可能性なんてないんじゃないか??」

ロックが呆れるような声を漏らす。


その声に追随するようにハノイが言葉を続ける。

「そうだぞ、そんなもん5大都市学園を卒業したエリートたちがこぞって受験するようなところだぞ。孤児で最低限の教育しか受けていない俺たちには無縁の職業だ。それに、なぜ王都なんだ??軍に入るなら中央軍ではなく東方軍でもいいはずだ。わざわざ遥か遠い王都ではなく、東方都市でもいいじゃないか」


「うん、ハノイの言うことはもっともなんだけど、もっと広い世界を見て自分の力を試してみたいんだ。ここでの仕事だっていつか自分の為になると思って頑張ってやってるんだ。体を鍛える訓練だと思ってね」


「はあ・・・、なんだよ!それ!お前はそんなこと考えながら海水を運んでたのかよ!それに俺たちに今まで黙ってるなんて水くさいじゃないか!!!」

ロックの声に熱が入り、声量が増す。


「ロック!!静かに!!ルビスが寝てること忘れんなよ。それよりもシュタット、王都警備の試験は狭き門だ。合格する可能性の方が低いだろう。もし、不合格だった場合はどうすんだ?」


「不合格になる可能性が高いのは承知の上さ、不合格になったらまた翌年の試験を受けるよ。15歳以上であり能力が認められれば出自に関係なく合格できるからな」

シュタットは、ハノイの疑問にニカッと笑い答えた。それを聞き、さらにロックがシュタットに尋ねる。

「その一年間はどうやって過ごすんだ?どこかで働いて金を稼がなきゃ野たれ死ぬだけだぜ?職のあてでもあるのか?」


「あてというほどのものじゃないけどね。その間は冒険者にでもなろうと思ってるよ。王都にはバジル王国のギルド本部もあるしね」


「「それこそ、論外だ」」

声が重なり、ハノイとロックの2人が真剣な表情になる。

それとは対照的にシュタットは、この2人息ぴったりだな、よく声が重なるなぁと思うのだった。


「シュタット、お前死ぬ気か?冒険者は確かになるだけなら簡単だ。でも、死亡率が高いことでも有名だろ。聞いた話では、3人に2人は5年以内に死んじまうんだとよ。五体満足でいられる奴も少ないらしいぞ」

「そうだぜ、俺やハノイは孤児院で冒険者がどんな仕事かをシスターから事あるごとに聞いてるからな。シスターも孤児だろうと冒険者だけにはなるなと耳にたこができるほど言ってたぜ」



冒険者ギルド、それは各国をまたにかける組織で主に未開の地の探索や魔物の討伐・素材回収、鉱物・薬草の採集などを行っている。このギルドの組合員は、冒険者と呼ばれている。

冒険者は王都警備隊のように年齢制限などなく、犯罪歴さえなければ誰でもなることができる。そして、自己責任のもとに依頼を受けて、達成できれば報酬がもらえる。依頼の難易度が高ければ高いほど報酬額も多くなる。高位の冒険者などは都市によっては、そこを治める貴族よりも良い生活をし、影響力をもつ者もいる。

もっとも依頼中に死ぬ冒険者は少なくない。むしろ多く、ケガにより手足を失う者も多い。

そのため、どこの孤児院でも冒険者にはならないように孤児に言い聞かせている。碌な訓練を受けていない孤児が冒険者になったとしても1月ももたずに死ぬが関の山だからである。


2人の説得の言葉にシュタットは笑みを止めて、2人の目を見る。

「そんなことは俺もわかってるよ。でも人間なんていつか死ぬんだ。それなら自分の生きたいように生きたいね」


シュタット自身、王都警備試験の難しさ、冒険者の過酷さはわかっている。

両親が死んでから製塩所で働きながら自身で調べたからだ。


シュタットの両親は、シュタットが10歳の時に流行病で死んだ。両親が死んだ時を今でも覚えている。冷たくなった両親の青白い顔を見つめながら泣いた記憶は忘れることはないだろう。

そして、泣きながらシュタットは決意した。人はいつか死ぬのだ。だからこそ、後悔のないように生きるのだと。


シュタットは胸中の決意を2人に語った。

語り終えるころには、すでに三日月は天高く上がり、深夜にさしかかっていた。


ロックとハノイの2人は、シュタットの話しを聞き終わると、ふぅーとため息を吐いた。

「わかったよ。シュタット、お前の決意は固いんだな。お前の人生だ。文句はもう言わんし、ここを辞めて王都に行くことも止めん」

「ああ、ハノイの言う通りだ。でも1つだけ言わせてくれ。ハノイ、お前もシュタットに言いたいことあるんだろ?今、一緒にこいつに言ってやろぜ」


ハノイは頷き、ロックとともにシュタットに告げる。

「「俺たちも王都 へ行く」」

2人の声はやはり、きれいに重なるのだった。

もう少ししたら話しが進むはず

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