青年の生い立ち1
人間の住むハール大陸。その東の果てには小さな街がある。街の名はダンストン。バジル王国に属する街で、人口は6000人ほどである。
主な産業は塩づくりと漁業であり、街には教会や病院などの施設が小さいながらもある。領主は、ダンストンから北西に20里ほどにある都市に住むハマル東方伯である。
ダンストンの東側には、海が広がる。そして、さらにその海の奥には陸地が見える。ガイア大陸だ。魔族が住むとされ、ハール大陸から海を挟んで約4里ほど離れたところにある大陸である。
ダンストンには製塩所が大小あわせて30ある。そのうちの1つの小さな製塩所で少年達は働いていた。
「おら、しっかりと働け。ちんたらせずにささっと海水を運べ」
中年の男が少年達を怒鳴る。
少年達は海水の入ったバケツをせせっと製塩所に運ぶ。少年達の服や靴はボロく、ほつれが多い。懸命に少年達は、海水を運んでいる。
すると突然、少年の1人が倒れ、桶から海水をこぼす。
「そこ、何をしている。立て!!」
中年の男は倒れた少年に罵声を浴びせ、立たせようとしている。
少年は中年の男に謝りながら、立とうとする。しかし、うまく立てずに尻餅をついてしまう。
「ルビス!休むな、海水を運べ!運べないと今日は飯抜きだ。それでもいいのか?」
ルビスと言われた少年の顔色は悪く、大量の汗を流している。
必死に立とうとするルビスのもとに別の少年がやってきた。
「ルビス!大丈夫か?」
やってきた少年はルビスを心配する声をかけながらルビスの額に手を当てる。
「すごい熱じゃないか!!ダストさん、今日のルビスの分まで俺がやります。だから、今日はもうルビスを休ませてやってください。お願いします」
少年は中年男、ダストに頭をさげる。
「ふん、役立たずな奴め。いいだろう。ルビスは今日はもう休ませてやる。その代わりシュタット、お前には今日の残りのルビスのノルマの倍をしてもうぞ。それでもいいな?」
ダストはシュタットにそう告げるとニヤリと口元をあげる。そんなダストに対して、シュタットは「はい」と即答する。
「よし、ルビスを部屋に連れて行け。そして早く海水を運びを再開しろ。早くしない終わらないぞ」
シュタットはダストにお礼をいうとルビスの肩をもち、自分達の部屋にルビスを運ぶのだった。
小さな部屋だ。2段ベットが並んで2つあり、机が1つとタンスが2つあるだけだ。
シュタットはルビスの体を濡れたボロ布で拭いてやり、汚れた服から着替えさせるとルビスをベットに寝かせた。
「ごめんね。シュタット!迷惑かけて。本当にごめん」
ルビスは申し訳なそうに謝ると、シュタットはニカッと笑ってみせる。
「気にするな。人間なんだから風邪を引く時だってあるさ。それにルビスは俺たち4人の中で一番年下なんだし、遠慮せずに俺たちを頼ればいい」
その言葉にルビスは涙ぐみながら「うん」と答えるのだった。
それからシュタットは、水の入ったヤカンとコップを机に置いて、水分補給をしっかりするようにルビスに伝える。
「水分補給をしっかりしろよ!ゆっくり休むといい。俺はもう仕事に戻るな!じゃあな」
シュタットは急いで部屋を出ると仕事に戻る。
部屋を出るシュタットを見送るとゆっくり目を閉じて眠りにつくルビスであった。