始動4
「武尊大丈夫かなー」
千穂はポテトチップスを食べながらぽつりと言った。
「大丈夫じゃないかしら」
一人先に戻ってきた壱華が答える。
「でも、太良さんもあわてんぼうだね。壱華ちゃん置いてくなんて」
「それだけ急いでたのよ」
「武尊が行ったから、康兄は大丈夫だよね」
千穂は近所の兄貴分の心配をする。
「大丈夫よ」
壱華が千穂の頭を撫でる。千穂は気持ちよさそうに目を細めた。
「そうだよね」
武尊にできないことはないんだ、自然とそう思った。
「今日のご飯は何かな~」
「私はご飯とお風呂に戻って、寝るときにこっちに来るわね?昨日みたいに」
「「俺たちも~」」
壱華の言葉に、戸川兄弟が声を合わせた。この兄弟は油断していると兄弟だということを見せつけてくることがある。吹き出してしまえば樹の機嫌が悪くなるから笑いはこらえなければならない。
壱華と千穂は目を合わせてコホンと咳払いをした。
「今のところ、襲われてるのも夜の時間帯だし、そこを固めとけばいいだろう」
啓太が携帯をいじりながら言った。と、その携帯が鳴った。
「母ちゃんからだ」
啓太は樹に視線を投げながら電話を取る。
「なに?・・・・うん、・・・うん、分かった」
相手方の声は聞き取れなかった。
「飯食いに帰ってこいだって」
「了解」
樹が立ち上がる。
「じゃあ、いったん俺たち帰るね。すぐ戻ってくるから」
「うん!」
「またあとで」
「じゃあね~」
千穂と壱華と未海は軽く手を振ってあいさつした。啓太たちが靴を履いていると、がらっと玄関が開いた。
「ただいま~」
「おかえりなさい!」
千穂が玄関に顔を出す。
「帰るところだったのね」
「晩飯食べて、風呂入ったらまた来ます」
「分かったわ。いつもありがとう」
「いえいえ」
そう言って、兄弟は帰って行った。
「私もそろそろ帰ろうかしら。未海、大丈夫?」
「大丈夫!何かあったら時間稼ぎくらいはできるから!」
私だって少しなら戦えるし!と未海は笑う。
「じゃあ、しばらくお願いね」
そう言うと、壱華も長い髪を翻しながら帰って行った。
「かっこいいー」
その背を未海は眺めていた。
「髪の毛伸ばせばいいじゃん」
「私の髪は壱華みたいにきれいじゃないもん。長くしたらそれが際立つに決まってる」
「そうかな~」
千穂は短い未海の髪に触れた。
「まっすぐでいいな~」
「お姉ちゃんちょっと癖あるもんね」
未海も千穂の髪に触れる。
「この柔らかいのも、触ってると気持ちいいよね~」
「そうかなーまっすぐの方がいいと思うなー」
二人は母親の手伝いをするのも忘れ、互いの髪を触り続けていた。




