表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イルの秘密の資料集  作者: イナンナ
番外編 幕間劇場
39/46

235幕間 辰砂とイルの1分クッキング どうしても食べたいテールスープスペシャル

「テールスープが食べたい。凄く食べたい」


「今日も唐突ですね。テールスープってどんなスープなんですか?」


「テールというのは尻尾のことです。尻尾を煮たスープだね。大体、牛の尻尾を使って作られます。なので本日用意したのも牛テール、一本です。精肉店でお願いすると用意してもらえます。私が出入りするところは切れ目も入れておいてくれるが、どこでもやってくれるかまではわからないな」


「結構根元の方ってしっかり太いんですね。先の方はいかにも尻尾って感じの細さですけど。で、これを使ったスープということですよね」


「うんそうです。なのでまずは切れ目に沿って切り分けまして、下茹でします。沸騰した鍋の中にどさどさっと入れちゃって10分ほど茹でます。この際はアクとか気にしなくていいからね」


「10分って下茹でとしてはかなり長いような気がしますね」


「そうだなあ、結構癖のある食材なのは否めないね。これだけ茹でても後で煮るときにはかなりアクと脂が出てくるから。さてと、茹で上がりましたらテールを冷水にとって粗熱をとり、押すようにして洗います。かなり強くやっても大丈夫ですが、手がぬるんぬるんになるので肉を落とさないよう注意。血を押し出すような感じでやっていきます」


「洗い終わったらざるにあげて水気を切るんですか。また煮るなら、直接鍋に入れてもいいんじゃないんです?」


「ざるにあげとくと、また地味に血が滲み落ちてたりするわけだよ。どうもこの行程が下手なんだよなあ……しょうがないから、鍋に入れる前にもう一回洗ってるんだ。私の場合はそのためですね」


「辰砂が下手っぴな作業は初めてみたかもしれません。珍しいものを見ちゃいましたね」


「そこは気にしなくていいところだよ。さて、それでは綺麗にした大鍋に、大量の水と綺麗にしたテール、塩……岩塩でも海塩でも大丈夫ですが……を入れます。続いてニンニクと生姜を雰囲気で、あと長ネギの青いところを入れます。この辺りは香りづけと臭み消しを担う材料ですね。あと、大根をおでんに入れるくらいの大きさに切って適当に入れて火にかけます。大根は趣味なので、省略可能です」


「大根は必須ではないと?でも辰砂が入れるってことは美味しいってことでしょ?」


「うーん、謎の信頼感が。いやまあ、テールスープ味のおでん大根風でとても好きな一品に仕上がるので、3つか4つかは毎回入れてるな。これだけ取り出して白髪ねぎ載せてもいいし、別に載せなくても結構いける。最高の薬味はまだ調査中」


「へえ……あ、沸いてきましたよ辰砂。確かにアクがじわじわ増えてきています」


「このアクが曲者でね。結構ずっと出るから、煮てる間はちょいちょい面倒見てやらねばならない。沸いたらふつふつするくらいに火力を調整して、4〜6時間ほど煮ていきましょう。水が減ったら適宜足して、肉が水面から出ないように気をつけます」


「えっそんなにですか!びっくりするほど煮るんですね」


「テールとかアキレス腱……スジ肉なんかはね、これくらい煮るか圧力鍋を使うかしないと、肉の繊維が解けなくて美味しく食べられないんだよ。ちなみに、一緒に入れたニンニクとネギは、2時間くらいで引き上げておくこと。デロンデロンに崩れてスープが濁ります。生姜は全然崩れないけど、ついでに引き上げておきましょう。結構美味しいんだよな」


「どれどれ?ん、最初にくるのは出汁の味ですね、これがテール味なのかな……それから生姜がじわじわと辛味を伝えてきます。なるほど結構美味しい、味付けが塩だけとは思えませんね」


「わかってくれるか。別に具にしたいわけじゃないんだけど、なぜか齧ってしまうんだよなあ。ニンニクもホロホロで結構美味しいんだが、人と会う前に食べるのは全然お勧めできない。さて、後は珈琲淹れてもらってアクを取りつつ過ごそうか?」


「いいですよ、ただスタジオが若干ニンニク臭いような……珈琲の香りで消せるかなあ」


〜しばらく後〜


「はい、煮上がりましたね。ちなみに、煮込みの時間は一度に取れない場合は何度かに分けても大丈夫です。大きな鍋で作る場合、火を止めた後もかなり長い時間高温を保っているので、実際にはもっと短い時間で肉が解ける場合もあります。時々肉の様子をチェックして見てくださいね」


「わー、なんていうかワイルドな見た目ですね。骨つきの丸い肉がババーンと浮かんでいます」


「まあ、そのまま出してもいいんだけど。私は食べにくいのが嫌なので、スープを仕上げた時点でテールもバラしてしまいます。この骨がまた不思議な形だからね、気をつけないと歯が当たって悲しいんだ」


「あれ、突起があるんですか!騙されるとこでしたよ。しかし、最初から想像もできないくらいするっと肉が外れますね。柔らかそうです」


「柔らかいですよ。ま、できたスープの量にもよるんだけど、肉がかなり多いと思ったらこの大根と一緒で、取り出して別料理に使用してもいい感じです。おつまみとしても優秀、コチュジャンつけて食べるとまた笑っちゃうくらい美味しい」


「コチュジャンが何かはよくわかりませんが、非常に美味しそうですねえ」


「美味しいよ。しかし今回の主役はこっちのスープなので、肉も入るけどスープメインね。煮るときに塩を結構入れているので、薄めの下味はついています。ここからはもうお好みの調味料で好きなように味をつけて食べればいいだけなんだけど、まあ最初ですから。ごくシンプルに、塩と醤油で味を決めていきます」


「あんまり醤油はたくさん入れないんですね」


「なんか最近、醤油って存在感がさりげない方が美味しく感じられるようになってきてねえ……ま、醤油だけで味つけてもいいけどね。この辺も好みだよ。せっかく黄金色のスープだから、それを生かしたい気持ちもある」


「あ、白い皿に盛ると綺麗ですね。なるほど黄金色、納得ですよ」


「折角だから、今日は大根も一緒に入れとこう。どさっと盛ったら白髪ねぎを乗せて、ゴマを振って、手元にはないけど糸唐辛子なんかも散らしたらおしゃれだろうね。さて、出来上がりました」


「わーいい匂いですよ……しつこくアクを取り続けたかいがあって澄んだスープです」


「ちなみに、煮るときずっと強火で炊くと白濁スープが取れます。食べたことないから、味の違いはわからないけど」


「火加減一つでそんなに仕上がりが変わるんですか。料理って不思議だなあ。では、いただきます。まずはお肉からいってみようかな……ん!んん!」


「うん、十分柔らかいね。煮込みが足りないとゴリゴリするんだよなあ」


「なんなんですかこれ!俺の知ってる肉と違います!肉汁じゃないけど味がちゃんとしてスープがいっぱい出てきて!美味しい……」


「今回も気に入ったみたいで何よりだよ。大根も食べてみればいい。あー、仕上げのついでにスライスした玉ねぎ入れてもよかったかな?」


「あ、これぶり大根の時と一緒ですね。大根が大根のままスープ味になってます……大根ってすごいやつなのかも……ううん、野菜のくせに美味しい」


「ま、少しずつでも野菜の苦手意識がなくなればいいと思ってるよ。美味しく食べられるものは多いほうが楽しいからね。あ、そろそろお時間が来たようです。それではまたいつかお会いしましょう。ごきげんよう」


「ごきげんようー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ