141幕間 辰砂とイルの1分クッキング真夏の烏賊さばきスペシャル
「唐突だがここに烏賊がある。今日は烏賊を食べよう」
「烏賊って言うんですかこれ?魔物じゃないの?」
「失礼なことを言うんじゃない、れっきとした魚介類で美味しいんだぞ。ちなみに今日用意したのは剣先烏賊と言う種類です」
「ちなみに選択基準は?」
「誰かさんがこの烏賊を釣るのにハマり込んだから。専用の道具も随分揃ったらしい」
「……。お裾分けがあったから、今回は勘弁してやりましょうか?辰砂」
「そうだな、何も無かったら報復していた所だったが。誰やらは命拾いしたな。さて、まずは烏賊を解体しなければならない」
「頭を掴むんですか!暴れたりは……しないんですね、死んでるのか」
「死んでいると言うか仮死状態と言うか、基本的に釣った烏賊は脳を破壊して鮮度を保つようにするんだな。売ってる烏賊もやってあるかは知らないが。だから死んでるように見えても触ると茶色い斑点が出たり消えたりする。あと頭に見えるけどここは胴体だ」
「え、頭の上にお腹があるんですか?聞けば聞くほど魔物感がありますね。足もひいふう……十本あるじゃないですか。おや?二本だけ長いですね」
「この長いので餌を捕まえるんだ。触腕と言うから、足じゃなくて腕扱いだな。さて、正面に向けた烏賊の頭の付け根から胴体に向けて指を突っ込む。ここで内臓と胴体部分を外すんだ」
「辰砂、ぬるぬるしてやりづらいです」
「頑張れ。これは慣れと場数が物を言う。さて、適当に外したらそっと頭を引き抜く。内臓がついて出てくるので、墨袋を破らぬよう気をつけること。鈍い虹色をしているからすぐわかる」
「わあ、でてきました。えっと虹色、裏側のこれですか?小さいんですね」
「取扱注意だぞ。身は汚れるわ流しは汚れるわ手にこびりつくわでとても面倒臭い。さてと。烏賊の内臓を活用できるほど私には経験値がないので、残念だが内臓は処分しよう。目の上あたりを真横にカットする。この時目を少し足側に押すようにしておくと目まで切ってしまうことがない」
「できました!」
「上手いじゃないか。そうしたら、下から押し上げるだけで目が出てくるからこれも捨てる。それから足の中心部に口があるので、これも下から押し出す。焼いたものを珍味として食べたりするので、これは適当に集めておこう」
「嘴みたいな形してますねえ。海の生き物なのに鳥みたいな口でますます異様です」
「その感想は正しいな。正確には嘴と言う。さて、綺麗になった頭と足だがこれを今度はぬめりを落とすためにさっとしっかり洗う」
「矛盾してませんか?」
「烏賊の身は真水に弱いんだ。ぬめりは臭みの元だから除けたいが、長々と洗っていると劣化する。心がけの話だ」
「難しいですねえ。できるだけ頑張ります」
「うん、よろしく。綺麗に洗えたら、一口大程度に切り分けて、下足の下処理は完了だ。次は胴体部分だが、これは使いたい料理によって処理の方法が違う。烏賊飯なんかで胴体を活かしたいときにはこの形のまま、筒の中を洗浄して軟骨を外すだけでいい」
「もしかしてこの小さい奴らはそういうつもりですか?沢山ありますけど」
「……烏賊飯が好きなんだよ。作る時は2食分作るんだ、いつも。熱いのと冷めたのと二回楽しめてお得なんだ」
「そうなんですか。楽しみになってきました」
「(調理は次回って言ったら怒るかな……)えーと。もう一方の処理方法だが、これは先に銅を切り開いてしまう。中身が洗いやすいのは断然こちらだな。これもしっかりさっと洗って水けを取る。軟骨も外しておいてくれ」
「あ、真っ二つになっちゃった」
「刃を深く入れすぎたんだな。まあ誰でも一回はやることだし、自分で食べるなら気にすることも無い。皮が剥きやすくていいさ、では耳の付け根に指を突っ込んで耳を外そう。つられて皮が剥けるから楽しいぞ」
「わあ思った以上にするっと向けるんですね!なんか快感です」
「そうだろう。耳は食べるので、皮を剥ぎきった後で耳は取っておくこと。歯触りが違って楽しいからね」
「へえ……」
「(目がキラキラしてきた……)えーと、これで厚い方の皮は剥げたんだが、実は見えない薄皮がまだ残っている。これを剥くのは一苦労なので、ちょっともったいないがサラシという布を使う」
「普通の平織の布に見えますね」
「うん、その通り。ホームセンターとかで売ってるし安いから、使い捨てにしている。繊維に絡んだ烏賊の皮なんか二度と取れる気がしない。さてではこれで身を擦ろう。なんか剥けてくるのがわかるか?」
「んー……あ!なんかついて来てます!心なしか身の方も質感が変わったような?」
「流石に目がいいなあ。光り方が少し変わるから、それを目安にするといいよ。天ぷらにするときなんかはこの薄皮の処理を省くと油はねが凄くてとんでもない目にあうから気をつけなさい」
「天ぷらが何かはよく分かりませんが、覚えておきます」
「そう言えばまだ作ったことがなかったかな?そのうちね」
「楽しみにしてますね!さあ辰砂、全部できましたけどこれで何を作るんですか?」
「えーと、そのだな。これらを実際に料理するのは次回なんだ、ああうんわかったから。収録終わったらちょっとだけ作ってやるから……それでは皆様また次回お会いしましょう、ごきげんよう」
「ごきげんよう!」
(エンドロール)




