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イルの秘密の資料集  作者: イナンナ
番外編 幕間劇場
24/46

128幕間 カリスマちゃんとウールくん その②

ウールくんは近頃とっても焦っていました。

一生懸命戦ってInt値とMnd値が100を超え、朝昼晩とカリスマちゃんに話しかけていたのですが、カリスマちゃんったらにぶちんなのですぐにおやつをくれるのです。おやつは嬉しいですが、ウールくんがほんとにしたいことはカリスマちゃんとのお喋りなのです。

おまけにカリスマちゃんが探している王子様とか言うやつが見つかるかもしれないと言うじゃあありませんか!カリスマちゃんのお目目がキラキラしてしまっていて、探す気満々なのが見て取れます。実際にカリスマちゃんは町の周りをぐるぐる回っていて、明らかに誰かを探しています、それが誰かなんて火を見るより明らかでした。


『……どうしよ』


ウールくんはうなだれました。心のどこかで、まだまだ先の事だと思っていた王子様と言うやつの出現が目の前に迫ってきて、どうしたらいいのか分からなくなってしまいました。

その時です。


「あら、お姫様から?……あら素敵。ウールちゃん、今からお姫様とイルちゃんと会えるわよ。何日かぶりねえ」


カリスマちゃんが声を上げました。ウールくんははっと顔を持ち上げてカリスマちゃんの方を見ます。イルには聞きたいことが沢山ありました。例えば、どうやって男の人に変身したのか――とか。ウールくんはちゃんと覚えているのです、イルがあの姿になった時に釘づけだったカリスマちゃんの姿を。熱のこもった視線を。それは他の誰でもなくて、ウールくんが独占したいものなのです。


『……絶対、聞きだしてやるんだから……!』


ウールちゃんは偶蹄目ですから、拳を握ることはできませんが力を込めて前足を振り上げました。えいえいおーとやっているウールくんを見てカリスマちゃんは可愛いわねーと微笑んでいましたけれど、ウールくんは気付きませんでした。

さて、あっという間に辰砂とカリスマちゃんは合流しましたので、ウールくんはイルを捕まえようと思ってイルの方を見ました。目が合うとイルはなぜかぎょっとした顔をしました。


「カリスマさん、ちょっとウール借ります」


手短にカリスマちゃんに声をかけて、イルはウールくんを抱え上げるようにして部屋を出ました。ウールくんは驚いて声も出ませんでした、だっていつもイルはウールくんが声を掛けなければ接触してきたりはしなかったからです。


「なんでそんな顔してるんですか、まだ話せてないんです?」


どうやらウールくんは、自分で思っているよりずっと『ひどい』顔をしているようでした。いつもクールなイルが気遣わしげな顔をするくらいには。


『……喋れてない。ねえ、どうやって人の形になったの』


ウールくんは目下一番気になることを聞きました。イルは驚きもせずに、顎に指を当てました。一々仕草が決まっていて、ウールくんは複雑な気持ちになりました。だってウールくんが見てもイルはいやに格好いいのです。そりゃあカリスマちゃんだって見惚れます。幸いだったのは、イルがカリスマちゃんより小さい事だけでした。


「俺の場合は進化の選択肢に最初からあったから、どうとも言えないんですがね……。取得可能スキルリストはこまめに確認していますか?」


なんとも役に立たない回答をくれたイルにウールくんは頬を膨らませました。しかし続けられた助言には目をしばたたかせます。


『……見てないけど。何で?』


一生懸命話しかけていれば、やがて話が通じるようになるはずなのですからスキルなんて見ていません。イルは角の付け根のあたりを揉み解すようにしてから、見てみるように言いました。


何でだろうと思いつつ、ウールくんはスキルリストを表示させました。言われるがままにタブを切り替え、その他を開きます。ここには表示された文字はほとんどなくて、ウールくんにもわかりやすくなっていました。そう、上から3番目の【人語】とか。


『……!人語がある』


望んでやまなかったスキルそのものが、今ウールくんの目の前にくっきり表示されています。イルはウインドウを後ろから覗き込んで一度頷きました。


「スキルを直接発現させるのは結構大変なんですよ。でも、その取得可能スキルに表示させるだけなら割と早い段階で出るんです。その代わりスキルポイント使いますけど」


教えたはずなんだけどおかしいな――と言う、イルのちょっとした疑問は、イルの胸の内にしまわれました。素晴らしい選択です。ウールくんは早速人語を取得しました。スキルポイントは10ほど使いましたけれども全く惜しくありません。


「……ドゥ?しゃ、メェれてる?」


「べがメェになってるのと、全体的にぎこちない感じがあるけど、うん。ちゃんと人語ですよ。後は練習して使いこなす他ないですから、カリスマさんと沢山話せばいいですよ」


ウールくんは感動して少し泣いてしまいました。イルは冷たいようですけれど、ほんとは物凄く良い奴なのです。なんだかんだいつも助けてくれるのですから。こいつならウールくんの親友にしてやってもいいな、とウールくんは上から目線で思いました。


「……ありがト。メェッ対頑張るカら」


「そうですね。頑張ってください……ケインズの為にも……」


イルの返事の後半はウールくんには聞き取れなかったのですが、首を傾げるとイルは首を振って何でもないと言いましたから何でもなかったのでしょう。ウールくんはこれから心機一転頑張らなければならないのでそれどころではないのです。


「……メェいメェイおー!」


頑張れウールくん!明日はきっと明るいぞ!



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