哀しみのエスパニョーラ
「降らないうちに行こうよ」と愛娘のベールとリータを運動に誘った‥
走る事が生きている証みたいな彼女達、
絡み合う寒暖の空は乙女の心のように移り変わりやすいもので‥
とか言って、こうした比喩なんて死語同然だい、書きづらくなりましたよ‥
聖女を知っている僕でさえ"乙女"って事すら絶滅危惧かな? なんて思うもの‥
もちろん人間も獣である以上、知性が発動しなければ何より"はしたない動物"
だし崇高な文化の"箍"を捨て去れば"種"の存続意義さえ怪しくなるなんてね、
保護活動に参加したいくらい思っちゃうな‥
保護と言えば‥日本近海の小笠原・大東などの諸島に棲息していた
アホウドリをみっけてね主に羽毛輸出採取の目的で乱獲が行われたそうですよ。
アホウのおかげで"すっとこどっこい"どもは御殿を建てて財閥になるほど
……アメリカインディアンも血の涙の大虐殺が行われたと言う……
撲殺されても仲間を気遣って逃げないし‥そんな姿が唐変木ども
にはアホウに見えた‥んでしょうかね~人でなしですな~
それはないだろーってんで長谷川先生は"沖の太夫"と言う優雅な呼び名を
送りましたんですがね♪
人としての深い謝罪と空を舞うものへの畏敬の念が込められた命名なんだ
と僕は思いました。
あーそうだ今ってあれだね‥
文底とか文奧の表現って疲れちゃうんだねー
遙か昔の文系学生の先輩達がいたと思いねーそんでね
デカンショ節という学生歌の替え歌を作ったと思いねーよ。
かけ声の"デカンショ"はさ、「デカルト」「カント」「ショーペンハウアー」
当時の若者が学んだ代表的・思想哲学者たちの"あたま"文字なんだけど‥
せめてね‥僕は、それ聞いた時には、ずいぶんと感心したり反省もしたけどな。
1950年代には、既に30~40羽が確認されるのみとなり、
長谷川氏は、自らの学問と生涯をかけて、単身・絶海の孤島に乗り込み、
調査したうえで復活に取り組むなど、
多くの"賛同者"と"協賛者"を得て、決して強靱な繁殖力とは言えないアホウドリの
現生息数を、2300羽という驚異的な数値に復活させたんだそうですよ。
一年に一回・一個の産卵ですからね、それはそれは大変だった
と思います。
空を覆うばかりのリョコウバト(1914年乱獲により絶滅)が群れる雄大な飛翔……
下に居たらフンだらけなんて、身も蓋もない想像をしてはいけませんからね。
とにかく‥それらを見ず知らずして何が人生だーって僕だけだ?‥
いったい、どんな奴が非道を行って、誰がそれを押しとどめたのだろうね‥
今も、わざわざ犬猫達を解体したり、人の良いイルカたちを騙し討ちに撲殺
して、よってたかって牛たちを苛め殺して"文化"だって‥
核ミサイルが飛んでこようと隕石が落ちてこようと、その時に加害した者が、
何を以て、誰に対して呪詛の言葉を吐くつもりなのだろうかあー(慟哭)なんてね‥
それにしても‥なんだよ‥今は長谷川博って入力しても
真っ先に出てこないなんて、なぁ~んて恩知らずなんだろな!
この世はなー長谷川博とすっとこどっこいの闘いだ!ー
怒・怒・怒・怒‥
脳内を‥黒い白馬が迫り来る‥曲がりくねった真っ直ぐな道を、
ただひたすらに寄り道しながら……怒・怒・怒・怒‥怒りだ!ー
どうだー誤字も誤用も構文も、開き直れば楽なもんだ!ー
(ま、まぁ落ち着け! 話せばわかる! 相手はロボットだ!)
そんな脈絡があって(全然ないぞ) お嬢さんベールが落としたジャーキーと自分
のジャーキーの二本を口の端から覗かせて、お転婆リータも外へ出た。
「ずるいぞ! おじさん!」
いきなり何だよ! 小学生!
……
「自分だけオートバイに乗って狡いぞ!」
「ほう‥」
動物にも平等権を指摘する少年がいるとは、感心した……だけど
群れのリーダーは全精力を分配しなければならないんだよぉー
「ばかやろお前! 人間の大人はなぁ‥こんな事ばっかりやってる分けじゃねー」
と言いながら、無理々々分かるわけねーそれよりガキの言葉にゃ一理ある。
「おじさん急いでるんだわ‥わかった! 君は正しい! 今度は自転車にするよ!
じゃあな、車に気ぃつけろよ! 未来の大人!」
そう言う事じゃねぇーだろ‥みたいな少年と別れ、運動は続く‥
そうよ六月は五月雨の月‥いつ泣き出すか分からない……なんて可愛さは正直、
今は無いね‥降れば降ったで、ほんと全てに品の無い降り方だ……
それもこれも、人でなし達の所産だが‥ とにかくっ、
まぁ曇りで良かったねーリータや‥って歩きながらガチガチとジャーキー
喰うなよっ! 品がないなー
しかも二本も‥取り上げられると思ったか、ガチガチ、ボリボリ
慌てて咬み砕く、この悪魔め‥
胃袋に納めて(文句ある?)って飲み込んで、見上げた目で語る‥
!!文句はなぁー
……
「ないよ‥」
お転婆リータは運動神経がいい。おまけに癇癪持ちだからベールは何時も
咬まれちゃうけど勿論、本気で咬むわけじゃない。
リータはボール遊びが大好きで、ベールはそれを邪魔するのが好きさ、
それで二・三回は我慢するけれど最後は切れる。
「邪魔しないでって言ってるでしょ! ぎゃーぎゃーぎゃーかぶ!がぶ!がぶっ!」
ってな感じでベールは咬まれる。
でも本気じゃないから血も出ない「てへっ!」ベールは舌を出して照れ笑い。
ほんと二人の性格は正反対だよ。
ベールはオットリ天然で悪い事は絶対しないけど、リータはデコに"悪魔"って
烙印されてて普段は見えない。
やっとの思いで、こさえた夕飯のおかず‥"ピンポーン"あれー来客だよ!
「はい! はい! どーもぉ」お客さん帰ったよーリータの姿がないよ?――ぉ?
おかずもないよ!? 失敗したぁ今日もお茶漬けか?……
――――
そうそう普段お世話になってる人に平飼い鶏卵って買って行こうっと?――
ビニール袋いっぱい高いですぅ!
あと夕飯のおかずスーパーに寄っていきますよ。
でもっ盗難の恐れなんて全~然ありまっせんっ!
何たってこの二人、女子ったって怖いです。
刃物持ってるし顔黒だし「じゃ頼むね!」
‥(なにを?)って顔のふたりです。
――――――――――
「ただいまーおまたせー良い子でお留守番できたねー
御褒美のジャーキー買ったよ‥嫌だけど……あれ? リータは?」
ベールは助手席に座って前を見てます。耳だけこちらで目はチラ見、顔は向け
ません「私は何も見てません!」脅迫された目撃者のような顔してました。
さ~て‥いたな‥リータは椅子の下、悪い事をした時には隠れます……
「やりましたね‥」まるで大物を飲み込んだ大蛇のようになっていました。
蛇も卵は大好物だったよねーお前ったらさー犬だよー
しっかし忘れてたよ‥こいつが盗人だったって事をさ‥
「 きっさまぁー殻ぁあ消化するまで冬眠するかーっ!」
当然、リータの夕飯は抜きでした (注釈)殻が消化しない為で虐待ではないっ
です‥
ほんとうは僕が虐待されていたのだと思います‥はい (証言その一)