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私のぜんぶ、あなたに伝えていいですか?  作者: 千菅茅絃 (あむゆさ)
足摺りて たな知らぬもの 頬張るも ころもまとうて 食えど飽かぬも
23/25

第三首 ホワイトデー -參の句- 昔々の物語。

「”若紫(わちし)”はお前、”三木みさと”という一人の男に、恋焦がれても、良いのかえ?」


 短くも、わちしの精一杯の問いかけに、みさとは感嘆の声を漏らしただけで、彼の表情は、出逢ったときと同じように固まってしまっている。……返事は、すぐに、此方(こちら)(たもと)へ届けられそうもない。


「……みさとやい、わちしの(はなし)を、聴いてたも?──ただのわちしの、独白故に、構えることはせずともよい。」

 みさとは神妙な面持ちを少しばかり解くと、「わかった。」とだけ返してきた。


「うむ、誠、その心遣いや、ありがたきこと。」

 ……わちしは、これからみさとに、わちし自身のこの胸の内と、昔日の真実とのありのままを伝えることに、少なからず緊張を覚えながらも、しかしその前に、わちしの(はなし)に耳を(かたむ)けてくれるというみさとへの、感謝の言葉だけはしっかりと伝えた。


「それはまだ、あのじじ様が、生きておられた、ときのこと────。」



 ///


 今は昔、わちしは、平安京(へいあんのみやこ)の世にて生まれ育ち、生きていた。

 わちしのことを源氏様は、”若紫(わかむらさき)”とお呼びになり、それはそれは、大層好んでくださった。


 愛して、くださった。


 (かたわ)らにはいつも女子(おなご)がついて回るほどの才色兼備を誇る源氏様であったが、それでも、わちしを好いてくれていた。


 なにものにも代えやう(かえよう)のない"幸せ"がそこにはあった。


 ……しかし、いと(うるわ)しきこの日々は、唐突にその幕を下ろしてしまうのだった────。



 ────第参首 -(よん)の句- ニ續ク。

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