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No.-

No.50 噺買5

作者: 夜行 千尋

出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第五十弾!

今回のお題は「車」「詐欺」「吐息」


8/10 お題出される

8/14 この日まで脳内プロットで止まってた

8/16 まさかの体調不良

8/17 もはや締切とはいったい…… 申し訳ない orz


ちょっと力を入れてみました

「明日、お前のところに行く。三日は居る予定だ。父より」


 そのメールが来たのが、昨日の夕暮れの話だ。つまり、今この街には、俺の親父が来ている。どこかに居るはずということだ。

 うちの親父が何をやってる人かは分からない。ただ確かなことは……俺が小さい頃に開かれた葬式の最中に、俺を捨てて出て行った事だ。親権や仕送りはしながらも、俺はあの頃から一人で生きてきた。ばあちゃんも居たが、俺は一人で頑張ろうと思った。……「どんな時でもいざって時は独りだ」と、それが親父の教えなんだろうと勝手に思って生きてきた。

 でも、こうして、特に何もない日にふらっと帰って来て、俺の顔を見てまたどこかへ旅立つ……それが、俺の親父だ。いつも何考えてるか全くわからない。何も言わない。何もしない。俺は……親父が嫌いだ。


「おーい? 夢野(ゆめの)くーん? ゆーめーのー、魁人(かいと)くーん? 調子悪いのかな? おーい」


 学校までの通学路、一面に広がる田圃の畦道を通っている最中に、俺は声をかけられた。

 遠方で車がバイクとかち合い、進めずに居るのが見えた。のどかなもんだ。そして平和なもんだ。俺だけが緊急事態のように妙な焦りに駆られていた。


「え? あ、ああ、おはよう、遠野(とおの)さん。いや、大したことじゃないんだ」


 俺は笑って済ませた。

 彼女は遠野 志桜里(とおの しおり)。同級生で美人。俺が密かに思いを寄せている人でもある。ただ、彼女の趣味と俺の特異体質はすごく相性が悪い。


 『噺買』と言われる特異体質。それは、保有者の意思に関係なく、聞いた話を保有者が追体験してしまうというものだ。どんな奇妙奇天烈な話であろうと、どんなにオカルトでファンタジーで現実味のない話であろうと、都市伝説や怪異伝承、作り話に法螺話すら追体験させられるのが『噺買』の特異体質だ。……それが、死に至る話であろうと、こちらの意思などお構いなしに追体験させてくるのが『噺買』のもっとも恐ろしい部分だ。何度死にかけたことか分からない。

 そこで助けてくれているのが、うちの祖母だ。どうやら“その手の事”を専門に扱う巫女……というか魔女らしく、何よりもその特徴として外見がまったく変わらないことにある。御年86歳。だが外見は幼女。合法ロリとかそんな生易しい物じゃない……あれは、魔女だと俺は思う。何かにつけて蹴ってくるし、家事は雑だし、お仕置きが基本的に拷問レベルだし……なにより、俺の特異体質で遊んでいる気がする。ギリギリのラインを見計らって助けに来る点質が悪い。


「ところでさ、こんな話知ってる?」

「ん? あ、ごめん。今、そんな気分じゃないんだ」

「え、あ……そう……珍しいね。夢野くんなら私のオカルト話をナイスリアクションで聞いてくれるから好きなのに」


 好きという言葉にグラつきながら、俺は笑って返した。確かに、普段なら遠野さんとの会話の時間は極力とるようにしていた。

 しかし、今は心にゆとりが無い。こんな状態で噺を買いでもしたら、正直対応できる自信が無い。というのも、親父のことだけではない。昨日出会った存在『バリ小さいおっさん』だっけか? その体長10cmほどのおっさんのした話しが、俺の両肩にどっしりと圧し掛かり、不安で胸の奥に石を抱えている気分になっていた。




 バリ小さいおっさんの噺――


 世に言う『小さいおっさん』の話の分類であり、さながらありがた迷惑な助けを行う、身長10cmほどの、白い燕尾服に白いシルクハット、見事なカイザル髭の小さな英国紳士風のおっさんである。

 主におっさんの任意の相手にしか姿は見えず、話す言葉は聞こえず、認識も出来ない。そのため、端から見ていると奇怪な行動を一人でしているようにしか見えない。

 なお、おっさんの知識や知恵は多岐にわたり、人知を超えているがボケが激しくあまり頼りにならないんだとか……しかしそれは時に、人が知ってはいけないレベルの深淵の知識とか言う物を口にすることが有り、まともにそれを聞くと正気を失いかねないという。その相手が正気を失いかねない事柄を相手に言うのがおっさんの趣味。とかいうかなりの悪趣味である。

 もっとも、おっさんは嘘を決してつかない。その口から出るのは100%真実のみ。


 ちなみに、なぜ『バリ』と付くかは分からない。




 その口にした知識に間違いが無いとされる存在が言った言葉。


「この街は、お主の『噺買』を監視するために存在しておる」

「お前が頼っておる“ばあちゃん”……お主、彼女を何だと思っておるかの? お主が幼いころから外見が変わらない理由を何だと思っておる? 試しに、お主、彼女の、“ばあちゃん”の名前を言うてみよ。……言えんじゃろう?」


 これらが真実なのだとしたら……俺は、どうしたら良いんだろう?

 確かに、俺の『噺買』に誰か第三者が巻き込まれたことは無い。それに……ばあちゃんの名前を思い出せない。あの後、思い切って名前を聞いたはずなのに思い出せない。確かに奇妙だ。でも、もしかしたら“そういう噺をいつの間にか買っていた”のかもしれない。それでも説明は付く。それに、ばあちゃん曰く「そんな出来の悪い噺のした話しなど信憑性に欠ける」とのこと。確かに“ボケが激しい”という事まで性質にある存在なら、その発言の信憑性も薄いと言えるだろう。

 そう、俺は自分に言い聞かせていた。親父も、何もこんなタイミングで帰ってこなくてもいいのにな。


「……んー、じゃあ、聞き流す形で良いよ」

「いや、そういうのもちょっと……」

「まぁまぁ、私が言いたいだけだからさ」


 田圃はうっそうと新緑の色を主張しながら、風になびいて静かな音をたてている。流れるような風の音に合わせて、遠野さんの髪が風になびく。白いうなじにかかったそれを左手で払いながら、彼女は俺の方を見ずに話し始めた。


「この道ね。出るって言われてるのよ。うん、何が、と言われたら困るんだけど……人でない人に害成すものがね。それは……」

「ああ、ごめん、やっぱりその話は聞けないよ」

「えー、やっぱ怖すぎた? ごめんね」


 俺の方に向きなおって彼女が言った。それに対して、俺も答える。

 危害を加えてくる話は、今は買いたくない。


「違うんだ、そうじゃなく……」

「あれ? 怖くなかった? まぁまぁ、こっからが面白いのよ」


 彼女は俺の方を見つめながら言う。

 風が流れる中、微かにすずしくもじんわりと暑さの残る空気の中、彼女が俺をじっと見つめて言う。ほんのわずかなこの挙動に、少なからず俺は自身の鼓動の高鳴りを感じた。


「その害成すものっていうのがね……」


 そんな時だった。水をかき分ける音が彼女の背後の田圃から聞こえた。


「ある特定の人を狙うんだって……それはね、」


 彼女の背後の田圃から、白い……人? のような、うねうねと蠢きながら、身震いを繰り返しながら何かが立ち上がった。くねくねと動くそれは、五体がありながらも目も鼻も指も有るようには見えない。だが、唯一口だけがあり、その口が遠野さんと同じタイミングで同じ言葉を言った。


「「今、噺を聞いている人の元へ現れるんだよ」」


 白い物体がニカリと笑った気がした。

 俺は絶叫した。何がどうしてそうさせるのか分からない。でも心の底から、その目の前の、遠野さん自身も、その背後に立つ白いぐにょぐにょとした存在も怖かった。と同時に、目が離せなかった。目を逸らさないといけないと解っているのに、魂の奥底から“ソレ”を見てはいけないと解っているのに、見てはいけないと解っていても目を逸らせない。


「「それでね、関わった人の心を壊してしまうんだよ。今こうしてね、君の心を壊しにかかっているんだよ……『噺買』」」


 何も考えられなくなって、自分の頭が真っ白になっていく感覚だけがあり、体が自分のものでなくなって、勝手に暴れまわる。自分が自分じゃなくなっていく、そんな感覚……このまま、俺が消えていく、そんな感覚だけを持って、俺は俺を遠巻きに眺めていた。

 が、次の瞬間、遠野さんが突然現れたバイクに撥ねられ、数m吹き飛ばされる。サイドカーのついたバイクの運転手と、サイドカーに乗っている二人ともがライダースーツにフルフェイスヘルメット姿だ。サイドカーに乗っている人物が、尚もガクガクと震えている俺の体を拾い上げ、サイドカーに引き込んだ。と同時に、バイクは走り出した。

 田舎の田圃道をすさまじい速度で走るバイクのサイドカーに、俺は投げ出された人形のように頭から入り込んでいた。それを、サイドカーの人物が頬をはたきながらサイドカーの床に座らせる。かなり狭いが、それがかえって俺の精神を安定させるのには役立った。サイドカーの人物に抱きしめられながら、ただただ、大丈夫だ。もう大丈夫だ。安心しろ。と、言い聞かされた。サイドカーの人物の胸が俺の胸に押し当てられる感覚が有り、鼓動が直接、体を通して聞こえてくる。

 そのくぐもった声に聞き覚えがあり、俺は何とか口を開いて、その心当たりのある人物の名前を呼んだ。


笹谷(ささや)?」


 サイドカーの人物は運転手に目配せし、運転手は頷いた。

 サイドカーの人物がヘルメットの前部分を上げて顔を見せる。そこには、俺が見知った顔が有った。笹谷 霧恵(ささや きりえ)。学校の後輩だ。


「どうも先輩。ピンチのようでしたのでお助けに上がりましたが、気分はいかが?」

「笹谷……俺、今、何がどうなって……?」


 俺は朦朧とする中聞いた。

 笹谷がいつもの冗談めいた口調で言う。


「なんとぉ……まさか先輩が私のハグを受け入れて下さるなんて! この際ですからもうちょっと抱きしめてていいですよね、先輩」

「……え? あ、うん……」

「ちなみに、今日の私はこのライダースーツの下は全裸です」

「……要らん報告だな」

「ってあら? 逃げないし動揺もしないとは……思ったより重症そうですね」


 俺は何も考えられない頭で淡々と事態の把握をしようと努力した。

 今、遠野さんが撥ねられた。いや、それ以前に、俺の『噺買』について知ってた? いやいや、そもそも……『噺買』が他人を巻き込んだのだろうか? いままでそんなことなかったのに。

 バイクを運転している人物が言う。声からして、男のようだ。


「どうやら、緊急事態らしいな。“件の噺”が働かないと言うのは、どういうことだ?」


 笹谷は普通にその男に対応している。


「あー、たぶん、旦那の結界にひっかかったんじゃ?」

「いや、それはない。あの噺は特別だと聞いている。まずそれはないでしょう。そもそも、オレが動けているのだから、彼女もまた動けるはず」

「んー、もしかして、私たちが助けに入るから助けに来なかった、とかは?」

「それもないだろう。現に夢野は被害を受けていた」

「あー、確かに。先輩こんなに小さくなって震えちゃって。可愛いですけど。可愛いですけど」


 俺は正気の戻りつつある頭で言葉を選んで口にした。笹谷は俺の頭を抱えて離さない。そろそろ首が痛い。


「ちょっと待って、何の話しをしているんだ?」

「あー、先輩。落ちつける場所へ行きましょう。まずはそれからです」

「それ以前にもう大丈夫だ。離れろ」

「いやいや、サイドカーは狭くてデスネ」

「そうじゃくて、色々健全的に問題があると言ってるんだよこの密着具合が!」

「そんな! 年頃男子はこういう密着に憧れ焦がれ、あられもなく成長することに喜びを覚えると」

「よせ! 色々ギリギリなんだよ! 複数の意味で危ないから! というかなぜ頭を抱え込んで……あ……」


 笹谷は俺を強く抱きしめて俺の視線が動かないようにしていた。それはきっと、今、俺の視線の外では何かが起きていることを意味しているように思えた。

 俺は笹野に言った。


「ごめん……その……ありがとう」

「……いいえ~ 先輩を守りに来たのが私たちですからね。それに、先輩と密着できるという役得を頂きましたし。私はとても満足です!」

「あ、はい」



 昼、正午を過ぎたころだろうか? 俺の頭は、いつのまにか着いたばあちゃん家の敷地内で解放された。首がさすがに痛い。

 首をひねりながら笹谷から離れた俺に笹谷が両手を出しながら言う。


「寝違えたものには、肉湿布が良いらしいですよ」

「健全な健康的知識で話してくれ」


 と、いつもの御ふざけな会話をした俺たちにバイクの運転手が淡々と言う。


「で、彼女は何処にいる? それから、お前の父親もだ」

「……彼女、ってばあちゃんのことか? 親父は知らない。ばあちゃんなら、だいたいは家の中にいる……なぁ、どういうことなのか、聞かせてほしい。今、俺は何の噺を買ったんだ?」


 二人はお互いになにか目配せをし、そして、笹谷がサイドカーから勢いよく出ながら言った。


「全部ぶっちゃけちゃいますと、今、先輩は狙われてます」

「狙われてる?」

「ええ、先輩の『噺買』の能力を消そうとしている一団が居るんですよ。遠野先輩は、まさにその一派の一人、っちゅうか、一人と数えて良いのか謎ですけど……」


 俺は笹谷に待ったをかけて聞いた。


「待った、待ってくれ。俺の、体質について知ってるのか? 何時から?」


 笹谷は俺に対してゆっくりと、だが俺の理解を待てないかのように話しを推し進めた。


「あなたに『噺買』の体質が現れ、あなたの本当のおばあさんが亡くなり、あなたのお父様、私たちは旦那と呼んでますが、その人が“この街を作ってあなたを閉じ込めてから”ずっとですよ」


 笹谷は続ける。


「でね、今我々は二派に分かれちゃってるんです。先輩の『噺買』は際限なく広がりつつありますから、最終的には人類の脅威になるのではないか、だったら今のうちに“処理”してしまおうと言う派閥と、観察と監視を続けて、制御、あるいは能力を消してしまおうと言う派閥の二派です。あ、我々は後者です。ただ、前者がちょっと過激な行動を起こし始めた、ということです」

「なんで……どうして……最初から……? 俺を監視するための、ばあちゃんが、ばあちゃんが……亡く、な……」

「先輩?」


 俺はばあちゃんの居るであろう家に上がり込み、靴を脱ぐのも忘れて家の中を走り回った。

 居間を覗き、風呂を開けて、台所を探して、寝室を覗いて、そして理解した。理解と同時に、俺は崩れ落ちた。

 俺の背後から、笹野が言う。


「落ち着いてください、先輩。……その、気を確かに」

「ばあちゃんは……なあ、ばあちゃんは……俺が“過去に買った噺”だったのか?」


 バイクの運転手が言う。


「そうだ。彼女は、お前を守るために、本当の祖母が、最後に託した絶対的な守護の噺だ。いかなる障害にも、いかなる苦痛にも、決してお前を独りにしないように作られた噺だ」

「だったら、なんで……だったらなんで今居ないんだよ! どの部屋もどの部屋も、空っぽじゃないか! ここに、確かにばあちゃんが住んでたのに、なんで……何もない、何事もなかったかのように消えてるんだよ!」

「……おそらく、お前に恐怖する連中がまず最初に手を打ったんだろう」


 バイクの運転手はそれだけ言うと、踵を返して玄関へと去って行った。

 空っぽな部屋の片隅には何の痕跡も無く、ここに、いつものあの意地悪な外見だけ幼女である老女が、魔女が居たといくら論じても根拠が全くない状態になっていた。

 笹谷が俺の立ち上がるのを補助しながら言う。


「行きましょう。まずは旦那を、先輩のお父様を探しましょう」



 玄関先に出た時の事だ。また、“ソレ”が居た。田圃のぐにょぐにょじゃない。庭の生垣、3mを超すような位置にある、白い山高帽を被った女性の顔。その口から、甲高い破裂音に似た、ころころとした笑い声が不気味に木霊し、ばあちゃんによく似た声で言う。


「魁人ォ、そコに居ったノカ? だいジょうぶじャ。わしト、かエろう」


 バイクの運転手と笹谷が急かし、また俺は笹谷と一緒にサイドカーへ乗るのかと思ったが、今度は運転手と共にサイドカーに乗ることになった。狭い。


「え? え?」

「アレは男しか狙わん。いざという時はオレが贄になる。その為だ。狭いが諦めろ」

「いや、笹谷、お前バイクの……」


 俺の問いかけを無視して、バイクがけたたましくエンジン音を上げて走り出した。3m越えの女がその長い脚で走って追ってくる。着ている白いワンピースは一切なびかず、物理法則を無視して滑るように移動してくる。


「どコへ行くのじゃ? わしハ、ここに居ルぞ、か、かかかかかか、かい魁人ぉ……魁人ぉぉぉおおお! ああああああ! 何処!? 何処ニ、ぃぃぃいい行くノぉぉおおおおお!?」


 絶叫と共に、笑顔を浮かべて走ってくる。されど服は一切風になびかず、長い髪も動かない。空気の中を通ってきていないのだと直感で感じたそれが、一般的な人間でないのは明白で、バイクと同等かそれ以上の速度で迫るそれは、恐怖を煽るには十分だと思った。


「すごい速度で迫ってくるんだけど!」

「耳を塞げ」

「へ?」


 再度忠告を言うことなく、フルフェイスヘルメットを取ってその内部から拳銃を取り出して、サイドカーの上で立ち上がり仁王立ちしながら追ってくる存在へ向けて発砲した。

 強烈な耳をつんざく破裂音より、目の前の光景の方が、俺には衝撃的だった。男は、首から上が無かった。今千切れたわけではなく、フルフェイスヘルメットを取った時点で、その時から、首から上が、元々無かった。この男もまた、人間じゃない!


「あ、ちょ、ライダーさん、先輩が怯えてます! 止めてくれません? グロイの反対でーす!」

「やかましい。早く避難場所へ行け。八尺が追ってくる」


 八尺と呼ばれた、背後から追ってくる白いワンピースの女性のようなモノは、銃弾を受けてのけぞりながらも、そのまま追ってくる。


「く、首が……」

「そういう噺だ。諦めて慣れろ。それより、どこで八尺の話を聞いた? 『ぽぽぽ』と笑う八尺越えの背丈の女の噺をどこで聞いた?」


 首なしライダーは切断された首の断面の一部を口のようにパクパクさせながら言う。思わず絶句して居たら足で小突かれ、俺は質問に答えた。


「知らない! あんなのの噺を買った覚えはない」

「……そうか。おそらくだが、最悪のケースだろうな、これは。笹谷、飛ばせ」

「はいはーい。頭何かにぶつけないようにお気をつけてーっと!」


 急ハンドルを切って曲がるたびに、サイドカーは宙に浮いたり圧し潰されそうになったりしていたが、その最中でも一切のバランスを崩さずに首なしライダーは背後から迫る存在に発砲を繰り返し、距離をとる。


「見えてきました! 目的地!」


 笹谷がの言葉を聞いて、俺はバイクの進行方向を見た。


「避難場所だろう? なんで俺の下宿先なんだ?」

「下宿先で何か『噺買』の効果に会いました?」

「え? あ、そういば……」


 確かに、下宿先で何か『噺買』が発動したことは今までなかった。


「先輩のお父様が張った結界のおかげです。お父様は、あなたの『噺買』を研究しつつも、あなたに安息の地もちゃんと用意してたんです」

「……知らなかった。そんなの……全然……」


 そういえば、ここに来たのも独りで来た。あの、父が出て行った誰かの葬儀……本当のばあちゃんの葬儀の後、俺は独りでここに来た。そうか、考えてみれば、どうして最初からばあちゃんと一緒に住めばいいのにそうしなかったのか……全部、俺が俺を騙そうと必死だったんだ。俺は、自分をペテンにかけて、孤独を誤魔化していただけだったんだな。俺は……


 下宿先の玄関を突き破り、笹谷はバイクごと下宿に突っ込んだ。その際に、ライダーだけ飛び降りたのを俺は見た。

 バイクは玄関先の段差に躓いて跳ねた。宙を鋼の塊に抱かれながら飛び、世界が逆さまになったかと思った次の瞬間には、笹谷は見事にバイクを着地させて見せた。


「ふぅ……楽しいドライブでしたね」

「し、心臓が止まるかと思った」

「それは困ります。人工呼吸をしなくては」

「まだ止まってない!」

「何よりです」


 俺は妙に静まり返った外を眺めた。

 笹谷が言う。


「旦那の、先輩のお父様の結界のおかげでここには怪異系は入れないんです。首なしライダーさんも然りですね」

「ああ、やっぱ、有名な都市伝説の……」

「ええ……おそらくですが、先輩の『噺買』の能力が高くなってるんだと思います。さもなくば、先輩の『噺買』の能力が他人にも伝播するようになってきたか……」


 それって、第三者が聞いた話も現実化する、ってことか?


「あ、先輩。言っときますが、遠野先輩も怪異ですよ。“そういう怪異”でした。そして、“そういう噺”だったんです。……『噺買』のせいじゃなく、端から彼女という存在は……」

「ああ、そうか……で、ここに来たのは、ただ単純に逃げ込むため、じゃないんだろ?」


 笹谷は微笑みながら言った。


「流石、私の愛する夢野先輩。お察しが良い。……ここで合流する予定なのです。夢野 清明(ゆめの せいめい)さん、我らが旦那、先輩のお父様と」


 笹谷は俺を導く様に二回への階段を上がっていく。下宿先が気のせいか揺れた気がする。


「お父様に聞きたいことがありましたら、直接、お聞きください」



 俺の部屋。俺が十数年育った部屋。『噺買』の体質に怯えて、震えて寝た日々。俺は『噺』と共に生きてきて『噺』に襲われて……『噺』に助けられてきた。それを強いたのは……


「こんばんは、魁人。また背は伸びたようだな」


 低い落ち着きを払った声が、俺の部屋の奥から聞こえてきた。そこにいたのは、スーツ姿でジャケットを脱いだ40ほどの外見の男性。

 俺はその人によそよそしく挨拶した。


「こんばんは。清明さん」


 その人は頭をかいて、牛丼チェーン店の袋を取り出して言った。


「腹減ってないか? 買って来たんだ。安かったしな」

「良いよ。自分で料理だって出来る」

「そうか……」


 うんうんと頷いてそれをひっこめる男性に、俺は言った。


「でも、今造る元気が無い。だから……それ、貰うよ」

「ああ」

「……」


 笹谷に小突かれ、俺は玄関先から室内に上がった。玄関先から動いていなかった事に今気づいた。

 そして、俺はおずおずと言った。


「一緒に……食べる?」

「……ああ。食べよう」


 その人は静かに答えた。下宿先がまた揺れた気がした。



 笹谷が無理やり部屋を出て、俺は親父と二人きりになった。発泡スチロールに乗った御飯と、その上の牛肉と玉葱、糸蒟。それらを啜る様に食べながら、二人で黙々と食べた。

 半分ほど食べた時、俺は切り出した。


「それで? この後はどうするの?」

「……お前の『噺買』を消す方法を探してきた」


 俺は箸が止まった。

 親父は続ける。


「そして見つけた。もう、この街に留まる必要は無い。だが、お前が『噺買』であることを利用しようとする者が居る。……遠野と名乗る同級生に化けた怪異やその仲間たちだな」

「また何のために?」

「姿を見せるだけで相手が戦闘不能になる怪異なら、軍事転用が出来る」

「なるほど……」


 とても、坦々とした会話が続く。


「で、俺が『噺買』じゃなくなったら困るから、強硬手段にでてきたの?」

「そうだ。目的はお前を連れ去り、脳みそだけにして自在に『噺買』の効果を発現させる方法だ」

「御免だね」

「ああ、わたしもまた反対した。だが……そもそも、彼らを引き込んだのはわたしなのだ」

「というと?」

「彼らはスポンサーでな。最初期の頃、手段を選べなかった頃に引き込んだ」

「でもって今危険になってると」

「ああ」


 相変わらず半分残った牛丼を見ている俺に、親父が言う。


「ずっと、お前を救いたかった。そのための方法を探して、お前の祖母の仕事を引き継いだ。それが功を奏して実を結ぶまでにずいぶんと時間をかけてしまった。なにより助かったのは、お前が“ばあちゃん”と慕っていた、お前の本当の祖母が残した“守護の噺”だ。対策と監視だけではうまくお前を守れなかっただろうし、何より、お前の心に寄り添ってくれていた。……わたしが不甲斐無いばかりに……すまなかったな」


 気が付けば、親父は箸を止めて、微かに涙の浮かんだ目で、俺を見ていた。俺は居たたまれなくなって目を逸らして言った。


「……全くだよ。じゃあ、早く終わらせよう。脳みそだけとかには成りたくない」


 俺は残った牛丼をかき込んだ。




 親父は言った。


「主に今迫っている怪異などは個別に対処しなくちゃならん。だが、お前が『噺買』の能力を失えば、連中も追うのを止めるだろう。少なくとも、目的を見失うはずだ。人間相手ならそれで大半は済む」

「人間も追ってきてるの?」

「ああ、だがまぁ、笹谷が居れば問題ないだろう。彼女は割りと武闘派だからな」

「え? そうなの? 確かに運動部だったけど……知らなかった」


 親父がふっと笑ったのにつられて、俺も笑った。


「なに? 何がおかしいの?」

「いや、思えば、こうして息子と話しが出来るのは久々だと思ってね……」

「ああ、うん……でもまぁ、終われば、また話せるでしょ?」

「ああ……」


 一呼吸置き、親父は立ち上がって部屋の隅に放り出されていたジャケットとコートを羽織って言った。


「いいか? まず、この下宿先の結界を解く。次に、お前に儀式を執り行い、『噺買』そのものをお前から追い出す。その後、わたしの術とライダー、笹谷でお前を死守しながらこの街を去る。……街の外まで行けば協力者が居るはずだ」


 そうこう言っている間に、親父は懐から何かを取り出して組み立てる。小さな祭壇に見える。かなり手際よく組み立てられた黄金色のそれは、くぐもった鏡を抱えていた。

 親父の指示で祭壇の前に座る。また下宿が揺れる。


「いかんな……思ったより迫ってきている怪異が強力やもしれん。この建物自体が持たない可能性もあるな」

「え? そんなに!?」

「急ぐぞ」


 そして、親父が何かを口にした次の瞬間に、窓の向うに見慣れた顔が見えた。


「ゆーめーのーくーん? 何をしているのかな?」


 それは、遠野さんだった。だった、存在だと感じた。遠野さんの顔は巨大な三眼の烏の姿をした獣人の目玉の一つだった。額にある目玉の一つが、僕の焦がれた人の顔で喋る。

 親父はそれを無視して何かを口にし続けている。


「驚いた? ねぇ、驚いた? 君のリアクションは何時でも面白いねぇ」

「なんなんだ、遠野さんじゃないのか?」

「嫌だなぁ、遠野 志桜里だよ。ああ、でも、最初は“ちゃんと遠野 志桜里”だったよ。でも、途中でこんな醜い怪物に取り込まれちゃったんだ……」

「そんな……」

「う、うう……ぅ、くっ……」


 下宿先が揺れ、電気が瞬き、パラパラと何かが落ちる。


「くっ、くくっ、くはははははは! そう言った方が良かった? 残念、私はね、最初から『山本五郎左衛門』という名前が、私にはあるんだよ! 怪異の王、魔王としての名前がね! 人間は馬鹿だね。勝手に忘れ去られた魔王の名前すら掘り起こして、勝手に恐怖して、勝手に噺にしちゃうんだからさぁ!」


 と、ここで、俺は何か一種の気持ち悪さを感じた。吐き気のような、なにか流動食を戻すような……

 親父が言う。


「よし、後はじっとしていろ。目の前の鏡のようなモノが割れるまで、祭壇の前を動くな。良いな」


 そう言って、急ぎ足で部屋から出ようとする親父に俺は言った。


「待って、親父はどこへ……」

「あの化け烏天狗を止めてくる。あわよくば退治しようじゃないか。……ありがとう、な」


 親父の後を追おうとして、動いてはいけないと聞いて改めて祭壇に向きなおる。

 外から遠野さんの声で嘲り笑う声が聞こえる。


「馬鹿なのかな? 清明は。退治、退治だって、あはは、出来るわけないのにね! ああ、助けに来ないと、親父さんが死んじゃうよぉぉおお!? ゆーめーのーくーん?」


 そのタイミングで、背後から声がした。笹谷でも遠野でもない、聞き慣れた声。


「夢野、大丈夫か!?」

秋原(あきはら)か!? 来るな! 危険だ!」


 クラスメイトで同じ下宿先に住んでいる秋原 遊之亮(あきはら ゆうのすけ)だ。よく旅行先にも一緒に行く仲で……待てよ、旅行先に一緒に付いてくるのは……いつも秋原だった……


「夢野こそ危険だ! その祭壇はお前の魂を抜き取るための物だ!」

「え?」

「おい、まさかオレを敵だと思ってるのか? 俺はお前の味方だ! そもそも、この街を用意した人間を信じるのか?」


 秋原は部屋に上がり込み、俺の視界に入る様に座って言った。金属バットを持って来たようで、そのバットに血が付いているのを見るに、部屋の廊下にも何かしら居るのだろう。


「俺を信じろ。さ、立て! 逃げるぞ!」


 俺は立たなかった。代わりに秋原に聞いた。


「いや、笹谷が居たはずだ。部屋の外に……どうしたんだ?」

「笹谷? そら、あいつも味方だから」

「いいや違う、笹谷は親父の味方だ。その親父が嘘をついているなら、今ここに笹谷も来てないとおかしいだろ? そのバットについた血は誰のだ! 笹谷をどうしたんだ!」


 秋原はため息と共に立ち上がり言った。


「あー、やっぱオレに頭脳戦は向いてないよな。首から上だけ持ってけばそれでいいって話だし、良いよな。夢野」


 そう言って、秋原はバットを振りかぶって、俺の脇めがけて振り下ろした。腰に金属バットがぶつかり、ゴリゴリと不気味な音を立てて激痛が走る。思わず身をよじってその場から移動したくなる。

 秋原が言う。


「お前を退かせばいいだけだから、何とも楽だよな。ったく。祭壇を壊せれば一番話は早いってのにな……」

「壊せないのか? この祭壇を」

「いや、後でこの祭壇使う予定が有んだよ。その為に、壊すのは最終手段って奴だ。だから……!」


 そう言って、またバットを振り上げて、俺を打った。


「お前が退いてくれれば、それでいいんだよ。あるいは脳みそさえ残ってりゃいいんだから、首をへし折るのも良いかもな!」


 そう秋原が言ってバットを振り上げた時、部屋の窓ガラスを割る様に、親父が部屋に転がり込んできた。


「助けに来た、というわけじゃなさそうだぞ、夢野。ありゃ死にかけだ。はは、無理もないな」

「親父!?」


 力なく床の上でうなだれている親父を覗き込むように、割れた窓ガラスから山本五郎左衛門の嘴が部屋に入ってきて、秋原に言いう。


「おい人間。祭壇も『噺買』も壊すなよ。その祭壇の鏡は私が使うんだからな」

「へいへい。それじゃ、夢野をどかすのを手伝ってくれよ」

「ふん……顎で使うか。覚えていなさい……なに、手足の一二本なら欠けても良かろう」


 巨大な鉤爪が部屋の壁を取っ払い、俺に迫る。

 その瞬間


「おやおや、これはまたまた……悪い噺を買ったのう、魁人」

「ぬ!? なぜここにいる!!」


 害意の籠った爪は俺に当たることなく、まるで飴細工のように溶けた。

 突如現れた彼女は言う。


「何故? そうじゃのう……15年前、約束をしたんじゃ。わしの主と……『わしが死んでも、わしの孫を護っておくれ』と……最後の命令を果たすために、主はこの子の、魁人の『噺買』とわしを掛け合わせ、新たな怪異にした。唯一無二の魁人の為だけの噺にしたのじゃ」




 守護童子の噺――


 陰陽道に置いて、式神や指揮する鬼、鬼神の類と陰陽師の関係は、餌付けされた猛獣と調教師の関係に近い。餌が無くなれば調教師を喰うかもしれない存在を、陰陽師は術で縛りつけて使役する。

 だが、時にその式神と心通わせた場合。その式神との間に友情などを育んだ場合はどうなるか。現実味のない話ではない。猛獣とて、人と心を通わせた存在は居る。ただ、猛獣よりはるかに心通わせにくく、遥かに人の事を鑑みぬ存在である鬼神と心通わせるのは困難だろう。

 だからこそ、心通い主従を越える存在となった式神は、他の式を圧するほどの護法になる。その護法は命を違えず、いかなる場合であろうと遂行するために全力を尽くす。


 それは護法を越える守護の法術。

 彼女は、親友である主との約束を違えない。そのことにすべてを捧げる(存在)である




「ば、ばあちゃ……」

「おう、魁人。あとでまたハンバーグとか造ってくれんかの。ああ、あと、ゲーム機の故障も直してほしいんじゃ」

「え、で、でも……」

「良いから、ハンバーグと、ゲーム機、良いかの?」


 目の前に現れた幼女はいつも通り、老人口調で喋る。


「おい! 私を無視するな! 何処から来た! なぜ居るのだ!?」


 三眼烏天狗が吼える。


「おいおい、わしはこの子のばあちゃんじゃぞ? 孫のピンチに駆けつけるのが、わしの役目じゃ。でのう、あー、三下五郎左衛門、そろそろお引き取り願えんかの? わし、今から孫と息子と遊ぶでな」

「何を……!?」


 一瞬だった。しかも、ほんのワンモーション。

 右腕を突き出して、中指の爪を親指の腹に立てて、丸をつくり、そこに吐息を一息。ただそれだけだった。


「うっ、ぉおあ、くそぉぉぉぉぉおおおおおおおおおがああああああああああああああああ!!」


 悔しそうな咆哮をだけを残し、三眼烏天狗は消えた。

 秋原はいつの間にか居なくなっており、その際、祭壇を持ち去られたようだった。追ってきていた八尺などの怪異も、ばあちゃんにかかれば蝋燭の火を消すようなものだったようで、見ていない間にあっけなく消してこられたらしい。

 親父と笹谷は病院に運ばれ、特に命に別状はないとのことだった。かく言う俺も病院に運ばれ、ベッドに括りつけられる日々を送ることになった。



 ただ、明確に大きく違う事が有ったのは……



「さぁ、先輩。口を開けてください。はい、あ~ん」

「いや、手は使えるんだけど」

「なにをしておる。そこは食べてやるのが男というものじゃぞ」


 腰の骨折で動けないのをいいことに、笹谷は頭に包帯を巻きながら何かと世話を焼きに来ている。そして、そこにばあちゃんも居たりするから面倒くさい。ちなみに、ばあちゃんが家に居なかった理由はとても単純で


「清明から『この街に留まる必要がなくなりそうだ』と聞いたので、新しい住処に引っ越したのじゃよ」

「なんであのタイミングなんだよ! タイミング良すぎでしょ!! てか、数時間でどうやってあんだけの荷物を、家財道具一式移動させ……た……って、あー……」


 そういや、この人(?)魔女だった。


「今、わしを魔女と思ったか?」

「え? ちょ、待って、今怪我してるから! 蹴るのはやめっ、ぎゃあ!」


 痛がる俺の視界の端に、ある人物が立っているのが見えた。病室の入り口で、微笑みながらこちらを見ている。


「……おはよう。親父」

「ああ、おはよう……魁人」


 笹谷はなにやらニマニマしながら病室を後にし、ばあちゃんと親父と俺の三人になった。

 親父が言う。


「その後、どうだ?」

「どうって?」


 ばあちゃんの助け舟が入る。


「新しい噺は買ったのか、ということじゃな」

「ああ……今のところ、何も買ってないね」

「そうか。儀式は間に合ったようだな。良かった」


 そう言って、親父は立ち上がった。

 ばあちゃんは察したように親父に言った。


「もう行くのか?」

「え?」

「ああ、仕事を放りだしてきたからな。母ほど強力な術者じゃないからな。注力しなければどうにも片付かない仕事ばかりだ」

「待って、もう行くの? 待ってよ。待てって……」

「じゃあな」


 動揺する俺の問いかけに答えず、親父は病室を後にしようとした。俺は思わず大声で呼び止めた。


「待てってば!」


 親父が足を止めたのを見て、俺は言った。


「俺、親父の仕事を手伝うよ。それなら、俺は……俺たちは……」


 俺が言葉に詰まっていると、親父は俺の傍まで戻って来て、微笑みながら俺の頭を撫でた。

 そして、そのまま無言で去って行った。


「なんだよ……せっかく……」

「まぁ、そういうな。あやつはあやつなりに、息子を身の危険に晒したくないんじゃろう」

「なら、なおの事協力できれば……」


 と、落ち込み始めていた俺の腰のギプスを叩きながら、ばあちゃんが言う。


「そうじゃな。まずは完治が先かのう。んで、そしたらの……お前の本当の祖母の術を、いくつか身に着けて見んか? ん?」

「それって……!」


 外見だけ幼女の鬼神が笑って言う。


「この世はの、奇妙奇天烈で奇怪な事が溢れておる。そんなことが無いと思うのは人間だけじゃ。されど、そんなことが有るやも、と考えるのもまた人間だけじゃ。なにせ、人間以外は……それらが有るのは周知の事じゃからのぅ……して、お前は『噺』を買えなくなっても、まだ『噺』に首を突っ込む気は有るかのう?」


 俺は、力強く頷いた。




※この作品はワタクシの別作品

No.31 噺買1

http://ncode.syosetu.com/n2926cp/

No.34 噺買2

http://ncode.syosetu.com/n1805cq/

No.36 噺買3

http://ncode.syosetu.com/n7624cq/

No.40 噺買4

http://ncode.syosetu.com/n0109cs/

これらの要素を含んでおります。読まなくても楽しめるとは思いますが、呼んでみた方が楽しめるかもしれません(露骨な誘導)



あ!

首なしライダーさんのその後を入れ忘れた!


と言いますか

首なしライダーさん自体が清明の式神だったりします

ベースになったのは無論首なしライダーの都市伝説

あ、鎌もったりはしませんしボインの姉ちゃんじゃないです(ぉぃ


笹谷や秋原はそういう専用のエージェントであり

ただ派閥が違った、というだけで二人ともアクションスタントマン並みの運動神経してる二人だったりします


噺買の街が主人公を監視するために作られた場所、というのは

噺買1の時から決まっていた設定だけに……

力入れすぎちゃったね☆ ……すみません

でも楽しんで書けました。少々急ぎ足でしたが(もっと早くに取り掛かれば良いものを ←それは言わないお約束!(ぉぃ




噺買の5で長らく続きました一週間チャレンジもNo.50最終番となりました

つきましては、これにて一週間チャレンジは終了となります



ここまでのお付き合い 真に感謝に耐えません

ありがとうございました

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