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勇者の寝言 第8夜 「闇鍋」
俺の名前は、マトン・スクィーバー。
自由騎士だ。
騎士養成学校を卒業したものの、仕事がなく、勇者と悪霊・怪物退治をする日々を過ごしている。
勇者は過去を教えてくれないのだが、腕っ節は強く、俺がいなくても1人で悪霊を退治してしまう。
こんな勇者と一緒にいると、俺の経験値は上がっていく一方なのだが、1つだけ悩みがあった。
「マトン、もう食べられないよ」
今日も勇者の寝言は相変わらずだ。
「それも、おいしくないよ、この蟹」
あれっ、今日はまともだな。
でもおいしくないのはどうしてだ。
「蟹と思ったら、草履じゃない」
なんだ、その闇鍋のような話は。
蟹と草履をそもそも間違えるか?
「でも、嚙めば嚙むほど味が、、、ムニュ」
食べたのか?
食べてしまったのか?
お腹は大丈夫か?
朝日は、今日も俺を照らしてくれる。
ありがとう、太陽よ。
「マトン、大丈夫? 目が据わっているよ」
「お前こそ、大丈夫か、腹の調子?」
「絶好調だけど、なんで?」
「いや、何でもない」
今日も、頑張って経験値を稼ぐか。




