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勇者の寝言 第30夜 「勇者も眠れない」
俺の名前は、マトン・スクィーバー、騎士だ。
相方の勇者が珍しく、
「マトンの言う通り、別部屋にしてみようか」
その顔には不安で一杯の様子だったが、俺に断る理由などない。
その夜は別部屋で寝ることとなった。
ふと目が覚めると、深夜2時頃だった。
「結局、この時間に目が覚めるのか。
トイレでも行くか」
別にトイレに行きたいわけではなかった。
部屋をでると、勇者の部屋から明かりが漏れているのが見えた。
それが気になり勇者の部屋をのぞいてみると、
勇者はまだ起きていたのだ。
「おい、早く寝ろよ」
「あぁ、ちょっと調べ物があって。
もう少ししたら寝るよ」
俺は、気付いた。
明らかに、一度寝た後があった。
顔も、寝起きのような顔だ。
一度寝たけど、何かがあってそのまま起きて眠れずにいたのだろう。
「明日から元に戻そうな」
俺は、勇者の頭を撫でる。
勇者は少し驚いたようだった。
勇者の過去に何があったか知らない。
その気になる過去が、さらに俺を不眠へと誘うのだった。




